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背徳の街のマリヤ

続・背徳の街のマリヤ~悪魔の花嫁~(5)シロツメクサの冠 星野ひかり

2019年8月30日18時57分 コラムニスト : 星野ひかり
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マリヤの心は茫然として、もはや大切なお父さんとの約束も守れないと思いました。・・・「3日で帰ってくる」と約束をして、祈りながら待っているお父さんとお母さん、愛する庭の、友達のような木々や花たちを思い出し、「ごめんね」とつぶやきました。そしてふらふらと、サダ姉の鏡台の上にある切れ味の悪そうなナイフを手に取り、それを喉元に突き立てたときでした。

「馬鹿にするんじゃないよ!」という大きな声とともに、マリヤは突き飛ばされました。「何してるんだい私の部屋で! おまえは誰だい? 私を憐れんでいるのかい? 」。サダ姉はそう叫びながら、倒れたマリヤの上になり、頬を何度もぶちました。

マリヤはとっさに、「ごめんなさい」と謝りました。サダ姉の目からは涙があふれておりました。「私は悪魔の妻なんだ! それをなんだい、お前は私を憐れんだね?」。サダ姉はそう言ってマリヤをぶちました。マリヤは意識が遠のきながらも、謝り続けておりました。

サダ姉は、気絶をしたマリヤの腕を引っ張り、部屋の外の廊下に放り出すと、バタンとドアを閉めました。そしてベッドに行くと、羽枕を引きちぎりました。

白い羽がまるで天使の憐れみのように、部屋中をゆっくり舞っておりました。「私は悪魔の花嫁なんだ!」。そう言って息を切らせました。どうしたことでしょう、サダ姉の心臓は脈打ち、頭に血が上ります。先ほどのマリヤの言葉が頭の中で鳴り響いているようでした。

(花嫁とは、シロツメクサの冠が似合い、純白の衣装に身を包んだ、白木蓮のようなおとめのことと思っていました。)

サダ姉の真っ赤に染まった目からは涙が流れました。

サダ姉は思い出しておりました。幼いころ、野原でシロツメクサを摘んで、それらを編んで腕輪や冠を作っていたことを。「将来の夢はお嫁さんよ」。そう言ってシロツメクサの冠を頭に乗せて、コスモス色のスカートをはためかせてはしゃいでいました。

サダ姉は手のひらに、シロツメクサの幻覚を見ました。それを握りつぶそうと拳を握っても、シロツメクサは壊れることなく、可憐に咲き誇っておりました。「私は花嫁になったじゃないか」。うなされたようにそう言いました。

廊下で意識を取り戻したマリヤは、くすんくすんと泣きながら、サダ姉の部屋のドアに身をもたれておりました。そしてしゃくりをあげながら、聖書の言葉を口に出し、サダ姉のために祈りをささげておりました。

「あなたはわが目に尊く、重んぜられるもの。わたしはあなたを愛する」(イザヤ43:4)。「女がその乳飲み子を忘れて、その腹の子をあわれまないようなことがあろうか。たとい彼らが忘れるようなことがあっても、わたしは、あなたを忘れることはない。見よ、わたしは、たなごころ(手のひら)にあなたを彫り込んだ」(イザヤ49:15、16)

その言葉は、サダ姉の部屋の中にも届いてきました。はらりはらりと舞い散るその羽は、飴色の光を帯びて輝いているようでした。「助けて。私なんだか苦しいの」。サダ姉はそう言って悪魔を呼びました。しかしどうしてでしょう、悪魔はそばには来ませんでした。

「丈夫な人に医者はいらない。いるのは病人である」(マタイ9:12)。その声は、もはやマリヤの声ではありませんでした。だったら誰の声だというのでしょう。天から響く、純白の光をまとったその声色の主は・・・。

「わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。枝がぶどうの木につながっていなければ、自分だけでは実を結ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ、実を結ぶことができない」(ヨハネ15:5)

飴色に輝く羽が次第に、光り輝く白い腕に見えてきます。その手は、サダ姉を迎え入れるように、ゆっくりと伸ばされるようでした。

サダ姉は後ずさりをし、転びそうになりました。「薬が切れたから変な幻覚が見えるんだ」と、鏡台の上をまさぐりました。そして「魔法の粉」を指ですくって吸い込みました。あまりにたくさん吸い込んでしまったため、サダ姉の唇は紫色に染まり、震えて床に倒れました。

記憶の奥に封じ込めていた情景がまぶたの裏に遠く見えます。・・・四つ葉のクローバーを探して、自分が幸せになれることを疑わなかった少女の日。新芽の芽吹くころの甘い風の香り。シロツメクサの冠を編んでお嫁さんごっこ。まるで水色のゼリーの中に世界があるように思っていたころ。

・・・いつから世界を廃墟のように感じるようになったのでしょうか。その廃墟には空を覆い尽くすほどのこうもりたちが住んでいる気がして、世界の終わりを感じさせました。廃墟の暗がりから、こうもりたちを従える「悪魔」の声がし、サダ姉を誘いました。サダ姉は、「悪魔」のもとに行けばこの世界の破滅の予感から、逃れられるような気がしたのです。

サダ姉の目から涙が伝います。ドアの向こうから聞こえてくる言葉があります。それはマリヤの祈りなのか、それとも自分自身の祈りなのか、よく分からなくなりました。

「ひとみのようにわたしを守り、みつばさの陰にわたしを隠し、わたしをしえたげる悪しき者から、わたしを囲む恐ろしい敵から、のがれさせてください」(詩編17:8)

サダ姉の感じていた「世界の破滅の予感」、それは絵空事ではありませんでした。人間の歴史が始まったときから、「世界の終わり」の預言は絶えることがありませんでした。それは人間の命に組み込まれた、データのようなものでした。アダムとイブの時代、人は神様を「父」と慕い、神様と共に楽園に住んでいたといいます。しかし、人間は悪魔の誘うがままに罪を犯しはじめました。そして、楽園を追われて永遠だった命に「死」が与えられ、人間の世界も、やがて終焉を迎えることが定められたというのです。

人は、物心ついたときから、己の死と、この世の終わる恐怖に晒されて生きてゆきます。罪の結果とはいえ、それは悲しいさだめであり、負いきれぬほどの重荷でした。しかし神様は、私たちにもはや忘れられようと、私たちを忘れたりはしませんでした。いつまでも私たちを子として愛し、ご自身のもとへ戻ってくることを待ち続けていたのです。

それは悲しいほどの愛でした。神様は人間の罪の重さをよく知っておられるからです。いつの時代も、人間は自分よりも弱き者を虐げて、心も体も血みどろにして生きてきました。今日も弱き者の血を頬張って、口元を赤く染めている私たち「人間」を神様は、まだ「私の子」と呼び、まぶたが瞳を守るように、愛し続けていると言うのです。

その日、悪魔は龍のように空を上り、炎のように吠えたけりました。その炎のあおりを受けてその日「背徳の街」では何人も人が死にました。

マリヤは女主人に呼びつけられ、「サダ姉の具合が悪いから、代わりに子どもたちを見るように。夜にはたくさん仕事があるから、風呂を沸かして入れておやり」と言いつけられました。マリヤは大浴場をブラシで磨き、新しい水を沸かしました。サダ姉が心配で、胸に手を当てて祈りました。また少年少女たちをどうやって助けたらいいのか、神様に問うておりました。

すると、「主があなたがたのために戦われるから、あなたがたは黙していなさい」(出14:14)とささやかれたような気がしました。今のマリヤには風呂桶や風呂椅子をきれいに磨いてやることしかできないけれど、神様自身がきっと道を開いてくれることを信じました。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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