聖書をメガネに 『ファクトチェックとは何か』への応答―ファクトチェック記事とクリスチャントゥデイ

2018年7月21日21時52分 執筆者 : 宮村武夫 印刷
関連タグ:宮村武夫
+聖書をメガネに 『ファクトチェックとは何か』への応答―ファクトチェック記事とクリスチャントゥデイ
立岩陽一郎、楊井人文著『ファクトチェックとは何か』(岩波書店、2018年4月)

小さな本です。しかし、今まで知らなかった事柄を教えられ、今後のクリスチャントゥデイの記事の在り方の一面について示唆を与えられています。

最も基本的なこととして、「ファクトチェック」とは何か。そこに基づくファクトチェック記事とは何か、その特徴はいかなる点にあるかなど、初歩的ですが最も基礎となることを確認しました。このささやかな学びの応答として、今後クリスチャントゥデイとしてどのような対応をなすべきか、その一歩を踏み出す機会となりました。

確かに、今までファクトチェックやファクトチェック記事について直接知識を持っていませんでした。しかし同時に、聖書を読み、解釈する営みを継続する中で、特に聖書解釈を教え続けてきた経験の中で学んできたことが、今直面している課題と深く根底的な関わりを持つ事実を確認しています。

そうです、聖書解釈学を教え続ける中で、理系の視点の方法論的活用を一冊の新書版を通し紹介し続けてきました。木下是雄著『理科系の作文技術』(中公新書624)です。事実と意見の明確な区別と関係を、木下教授は一貫して強調します。特に、第7章「事実と意見」(101~117ページ)。

聖書を解釈する営みにおいても、さらにそこから聖書のメッセージを宣教する説教においても、事実と意見の明確な区別。それは有効な自覚を与え、実践へと導いてくれます。この聖書解釈と説教の営みにおける目に見えるしるしは、「・・・思います」との表現を極力省く、それなりに徹底した戦いです。

聖書テキストに見る事実とそれをめぐる仮説との峻別、その上で事実を言葉化する営み。この営みのために受けてきた訓練と教育の経験が、今直面している課題、ファクトチェックとファクトチェック記事を理解する助けとなり、鍵の役割を果たしてくれています。

ファクトチェック記事とは何か。報道される情報が事実に基づいているかどうか、記事の正確性を検証する(第1章「ファクトチェックとは」)。あえていえば、ニュース性より事実に着目するのです(9ページ)。

本書では、ファクトチェックは誰にでもできる「あまり難しい作業ではない」と励ましつつ(19、20ページ)、第2章で基本ルールの紹介をなしています。確かに、そこに提示されているのは、特別な技能というより非党派性や公正性を重んじ、「言説の真偽について読者が自ら判断できるよう、必要十分な根拠情報(エビデンス)を提供」する姿勢と営みの必要性です。

第3章では、ファクトチェックをめぐる国際的な潮流の報告がなされています。それとの対比で、第4章では日本での実情が提示され、ファクトチェック記事への勧めがなされます。その際、「ファクトチェックは、情報量に制約がないデジタル版でこそ本領を発揮できる」と私たちに力強い励ましを与えてくれています。

ファクトチェックやファクトチェック記事の根底にあるのは、「事実は大事だ」(66ページ)との確信です。クリスチャントゥデイも、小なりとはいえファクトチェックへの参加、そうです、ファクトチェック記事の掲載を通して、事実を大切にする社会実現へ参与したいのです。

一般記事とは異なるファクトチェック記事掲載への備えを、クリスチャントゥデイなりに進めていけるようにお祈りいただければ感謝です。

■ 立岩陽一郎、楊井人文著『ファクトチェックとは何か』(岩波書店、2018年4月)

<<前回へ     次回へ>>

宮村武夫

宮村武夫(みやむら・たけお)

1939年東京深川生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部(組織神学)修了。宇都宮キリスト集会牧師、沖縄名護チャペル協力宣教師。クリスチャントゥデイ編集長兼論説主幹。

関連タグ:宮村武夫

関連記事

クリスチャントゥデイからのお願い

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。記事の一つ一つは、記者や翻訳者、さらに編集者の手などを経て配信されているものです。また、多くのコラムニストや寄稿者から原稿をいただくことで、毎日欠かすことなくニュースやコラムを発信できています。

この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、読者の皆様にはぜひ、祈りと共に、毎月定期的にサポートする「サポーター」として(1,000円/月〜)、また単発の「サポート」(3,000円〜)によって応援していただきたく、ご協力をお願い申し上げます。支払いはクレジット決済で可能です。申し込みいただいた方には、毎週のニュースやコラムをまとめた申込者限定の週刊メールマガジンを送らせていただきます。サポーターやサポートの詳細、またクレジットカードをお持ちでない方はこちらをご覧ください。

書籍の最新記事 書籍の記事一覧ページ

神学書を読む(47)「知的ゲーム」としての宗教論、キリスト教に未来はあるか? 『西洋人の「無神論」日本人の「無宗教」』

【書評】『パウロの弁護人』 世界的な新約学者が描く初代教会をめぐる思想小説 臼田宣弘

励ましの一言がプレッシャーに? 現代日本人を読み解く『「承認欲求」の呪縛』という視点

「キリスト教書店大賞2019」 ノミネート10作品発表

神学書を読む(46)『神とは何か 哲学としてのキリスト教』

神学書を読む(45)神学的世界観の脱構築と再構築のために 『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史』(上下巻)

神学書を読む(44)大貫隆著『終末論の系譜―初期ユダヤ教からグノーシスまで』

あの名作映画の原作を読む ルー・ウォーレス著『ベン・ハー』

聖書をメガネに 『封印された殉教』への応答・その4 宮村武夫

神学書を読む(43)『はじめてのアメリカ音楽史』に見る、米国音楽の底流に流れるキリスト教

主要ニュース

コラム

人気記事ランキング