聖書をメガネに 『東大教授が挑む AIに「善悪の判断」を教える方法』への応答・その2 宮村武夫

2018年7月6日12時56分 コラムニスト : 宮村武夫 印刷
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+聖書をメガネに 『東大教授が挑む AIに「善悪の判断」を教える方法』への応答・その1 宮村武夫
鄭雄一著『東大教授が挑む AIに「善悪の判断」を教える方法』(扶桑社、2018年5月)
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焦点は、人間・私

興味深い著書への応答の第2回として、第3回講義と第4回講義を特に注意したいのです。

第3回講義:そもそも「人を殺してはいけない」の「人」って誰だろう?
第4回講義:道徳をモデル化してみよう

実は、第3回講義のタイトルを見て、思わず声を出して応答したいほどでした。高校生以来、60年余り聖書を読み続けている中で、聖書の主題は「人間・私」との思いを最近ますます強くしているからです。

鄭先生が、AIに「善悪の判断」を教えるという、私にとっては一見縁遠い専門的な課題に取り組む中で、人間とは何か、人間・私とは何か、この課題をめぐって第3回の講義を展開している事実に直面。縁遠い専門的な課題どころか、私の聖書の読み方の中心課題と重なり合う事実を認めてうれしくなりました。

第3回講義においても、前回に見た「粗視(そし)化」の方法を用いて、その結果、従来の道徳思想を「社会中心の考え方」と「個人中心の考え方」に大きく二分することができるのです。時代順や地域別ではなく、思想の特徴に基づいたすっきりした分類です(82ページ)。

さらに粗視化を重ねることにより、「人に危害を加えてはいけない」から「仲間に危害を加えてはいけない」と絞り込んでいきます(91、92ページ)。しかも、仲間には家族や親友など「リアルな仲間」とともに、カテゴリーで「仲間」意識を持つ「バーチャルな仲間」の両面があることを確認します。そして、バーチャルな仲間を可能にする、時空を超えた伝達を可能にする「ことば」、さらに「文化」へと思索が深められます(109、110ページ)。

第4回講義では、「共通の掟」と「個別の掟」の両者に注意が払われ、「共通の掟」では仲間に危害を加えてはいけない、同時に「個別の掟」では同じである必要はない二重性が明らかにされます。

以上に見るように、ロボットを作り出すために直面する、表面的に対立する2つの課題を粗視化することにより、人間・私の実態がより明らかにされていきます。興味深いことです。

ロボットを考えることが、実は人間について考えることに他ならない。そして、人間について考えることなくして、ロボットは作れない。

このロボットと人間の関係は、「人間を考えることなくして、神を知ることはできない。神を考えることなくして、人間を知ることはできない」――神学の先達たちのテーゼへと新たな興味を引きます。次回は、この点を中心に第5、第6講義に即して応答したいのです。

■ 鄭雄一著『東大教授が挑む AIに「善悪の判断」を教える方法』(扶桑社、2018年5月)

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宮村武夫

宮村武夫(みやむら・たけお)

1939年東京深川生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部(組織神学)修了。宇都宮キリスト集会牧師、沖縄名護チャペル協力宣教師。クリスチャントゥデイ編集長兼論説主幹。

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