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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(5)はじめに言葉があった

2018年6月7日17時30分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

この年の11月。ヘボン夫妻にとってうれしい知らせが入った。シンガポールで出会って以来、生涯の良き友となったブラウンが宣教師として日本にやってくることになったのである。

あらかじめ手紙をもらったヘボンは、成仏寺の庫裡(くり)を修理し、そこにブラウンを迎え入れることにした。11月5日。ブラウンはマリアルイズ号でやってきた。

「あなたが来られるのを心待ちにしていました」。ヘボンはなつかしい友の手を握りしめた。彼らは夜がふけるのも忘れて語り合った。そして、2人の共通の夢は、聖書の日本語訳を完成し、それを日本人に贈ることであった。

彼らは家賃を折半して8ドルずつ払い、ヘボン夫妻が本堂、ブラウンが庫裡に住むことになった。そのうち、ブラウンの妻エリザベスと子どもたちが来たのでにぎやかになった。

ヘボンとブラウンは、食堂でも庭でも、日本語訳聖書のことばかり話し合った。ブラウンはすでに船の中でメドハーストの『語彙(ごい)集』(単語帳との意)をテキストにして日本語の勉強をしてきたが、日本語は難解でお手上げ状態だった。そのために、2人にとってまず必要なのは日本語の勉強であった。

彼らは毎日使用人や役人に一語ずつ質問をしてノートをとった。例えば、皿を指して「サラ」という単語の発音と文字を確かめると、中国で覚えた漢字を当てはめ、意味を通じることができた。

ヘボンたちが成仏寺に住居を定めた翌年1860(万延元)年。凄惨な事件が起きた。英公使オルコックの通訳である伝吉が刺殺され、仏領事館も放火された。横浜の英字新聞「サタディ・レビュー」はこの事件を「血しぶきの1週間」と報道した。

「どうして、これという理由がないのに日本人は外国人を殺すのでしょう?」。ブラウンが首をかしげると、少しは日本国内の事情が分かってきたヘボンは答えた。

「幕府は『外国人打払令』という法律を作って私たち外国の者を遠ざけようとしました。それで、これに同意する武士のあるグループは、外国人を殺したり傷つけたりするのですよ」

ところで、こんな暗い時代であるが、明るいニュースも入ってきた。幕府の計画で「遣米使節団」が派遣されることになったのである。神奈川奉行の新見豊前守、村垣淡路守らは1860(万延元)年、77人の武士から成る一団を編成して咸臨丸(かんりんまる)で出航した。これは米国西海岸行きの航路を利用した太平洋横断の旅であった。

日米両国の親善を強く願っていたヘボンは、このニュースを新聞で読むと喜びが込み上げてくるのを覚えた。この時、彼は言葉が通じ合えば、互いの考えや意見を知ることができ、もっと両国の間の誤解や摩擦を避けることができるのではないかと思った。

(そうだ。欧米人と日本人が互いの言葉を理解するためには何かの媒体が必要だ。その媒体とは?)

この時、彼の胸に、いつの日にか和英辞典を作ろうという考えが生まれたのだった。

5月に入ったある日のことである。1人のみすぼらしい服装の男が成仏寺を訪ねてきた。「ヘボン先生でいらっしゃいますか?私は医者をしておりまして、少しは蘭学(オランダ語を通して西洋の文化を研究する学問)を身につけておりますが、これからは英語が分からないと世界の事情が分かりません。どうか私に英語を教えてください」

彼は礼儀正しく、きちんと手をついて頭を下げた。この男はヤゴロウと名乗った。

ヘボンは彼と話をするうちに、この男がまたとない日本語の教師となり得ることを知った。そこで月給1分(約8ドル)、1と6のつく日を休みという条件で彼を雇い入れた。

翌日から、ヘボンとヤゴロウは寺の奥まった部屋で机をはさみ、1日の大部分を言葉の研究に費やした。ブラウンの方も日本語教師を探していたが、米公使ハリスが江戸で幕府と交渉して鍼医矢野隆山を探してくれたのだった。

そんなある日のこと。ヘボンは机の上に開いてあった漢文聖書をヤゴロウが読んでいるのを見た。これは、中国伝道をしているカルバートソンとブリッジマンが共同で中国語――すなわち漢文に訳した旧約聖書だった。

「オモシロイデスカ?」と尋ねると、ヤゴロウは深くうなずいた。「はい。これは素晴らしい教訓の書です」。その時ヘボンは、字の読める人間なら聖書が読めるのだという実感を強く持った。そして、完全に日本語を修得したら「和英辞典」と「日本語訳聖書」を完成させようと決意したのだった。

*

<あとがき>

行く先を知らずに見知らぬ土地へと旅に出たアブラハムのように、ヘボンも日本宣教のために、妻と共に言葉も、文化も、政治体制も分からない未知の国へとやってきました。しかし、そんな彼に神様はS・R・ブラウンという同労者と日本語教師ヤゴロウという助け手を用意され、彼に「日本語の勉強」という最初の道を示されました。

成仏寺に居を定めた翌年には、英公使オルコックの通訳が刺殺され、仏領事館が放火されるという事件があり、相変わらず不穏な情勢でしたが、ヘボンたちは守られ、診療と日本語の勉強を進めていました。そして、この年に幕府の計画で「遣米使節団」が派遣されるという喜ばしいニュースが入ってきました。

77人の武士の一団が咸臨丸で米国に出航するのを見て、ヘボンは「言葉が通じ合えば、互いの考えや意見を知ることができ、もっと両国間の誤解や摩擦を避けられる」ということに気付きます。そして、これが日本人のために「和英辞典」を作るビジョンにつながったのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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