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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(4)ヘボン先生、こんにちわ!

2018年5月16日07時33分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

成仏寺に外国人が来たといううわさはすぐに広がった。日課としている朝の散歩に出れば、通りがかりの家で犬がワンワン吠えつき、子どもたちは珍しいものでも見るように騒ぎ立てた。

「バカ!」「トウジン!」(外国人を卑しんで呼ぶ言葉)。彼らは後について歩き、中には石をぶつける子もいた。ヘボンの目がふっと潤んだ。ニューヨークで3人の子どもを亡くし、一人息子を置いてきた彼は、子どもたちの姿を見ているうちにいとしさがこみ上げてきたのである。

「コンニチワ コッチヘ イラッシャイ」。思わず彼は手招きすると、常にポケットに入れているキャンディをつかみ出して子どもに与えた。野良着を着た女性が駆け寄ると、その手からキャンディをもぎ取って足で踏みにじった。

「外国人から菓子などもらってはいけないといつも言ってるだろ。毒でも入っていたらどうする!」

(かわいそうな子どもたち)。ヘボンはつぶやいた。(彼らは多くの不安を抱えて生きなくてはならない親たちから、不信感を植えつけられて育っていくのだ)。それにつけても、早くこの国にキリストの愛と許しのメッセージを届けなければ――と彼は思うのだった。

こんなことがあっても、ヘボンは毎朝の散歩の折に必ず田畑で働く人に声をかけた。「オハヨウゴザイマス」「イイテンキデスネ」。人々は、うさんくさそうにじろりと見るだけであったが、やがてその中からあいさつを返してくれる人が出てきた。このように毎日人々とあいさつし合ったことから、ヘボンは日本語のあいさつが少しはできるようになったのである。

そんなある日のことである。いつものようにヘボンが畑のあぜ道を散歩していると、どこかで子どもの泣く声がした。行ってみると、農家の老人が血まみれになった足を抑えて呻いている。その傍らで10歳くらいの男の子が泣き叫んでいた。

「ジイジが足にけがしたよう!」。どうやら、この老人は畑を耕しているうちに、誤って鍬で足を切ってしまったのだろう。「ダイジョウブデスヨ。ワタシ、医者デス」。ヘボンは片言でそう言うと、老人を背負って成仏寺に連れて行った。男の子は泣きながらあとについて来た。

ニューヨークの診療所でそうしたように、クララが看護師として助手を務めた。ヘボンは老人の傷口を消毒して、ニューヨークから携えてきた薬を塗ると、しっかりと包帯を巻いた。それから、痛み止めの錠剤を渡して言った。「マダ痛ムヨウデシタラ コレヲ飲ンデクダサイ」

老人は孫と一緒にペコペコ頭を下げて帰ろうとした。「ありがとうございます。あの、何というお名前のお医者様でしょう?」。「ワタシハ ヘプバーン。ミンナハ ヘボントヨンデイマス」。また彼らはペコペコ頭を下げた。

「ア、チョット待ッテクダサイ」。ヘボンは部屋に引き返すと、まだ開いていない荷物を開け、中から一脚の松葉杖を出した。「コレヲ アゲマスヨ。スコシハ ラクニナルデショウ」。老人は、もらった松葉杖をついて、孫と一緒に帰って行った。

このことがあってから、そのあたりの農家の人々はヘボン夫妻に心を開き、いつでも向こうから声をかけてくるようになった。「ヘボン先生、お早うございます。どこへいらっしゃいます?」。「サンポデス。キモチガイイデスネ」

成仏寺の前には、相変わらず花売りの老婆が座っていた。彼女は、それまではヘボンが声をかけてもうさんくさそうな顔でじろりと見るきりだったが、けがをした農家の老人をみてやってからは、向こうから声をかけるようになった。

「あんた、いい人だからこれをあげるよ」。ある日、彼女はそう言って黄色い小さな花束を差し出した。「ワタシニ?アリガトウゴザイマス」。ヘボンは花束を胸に抱きしめた。

「コレハ 何デスカ?」。「菊の花だよ」。そのゆかしい香りが彼の胸にしみ込んだ。

*

<あとがき>

ヘボンが「医療伝道者」という肩書をもらって日本にやってきたことには大きな意味があると思わずにいられません。言葉や生活習慣がまったく違う日本に初めて来たとき、彼は立ちはだかる異文化に戸惑うことも多くあったでしょう。そんな彼が、日本人とコミュニケーションをとるきっかけとなったのは、病気やけがで苦しむ人に対する医療だったのです。

最初は外国人の彼を罵倒したり、石を投げつけたりした人々も、彼が優しい心を持った医者であることを知って次第に心を開いてゆくのです。

今や日本でヘボン博士の名前を知らない人はいないでしょう。彼があらゆる階層の日本人に愛され、親しまれるようになったのは、やはり医療を通して人々に奉仕したことであり、この手段によって信頼関係を築いた後は、辞書編纂、聖書翻訳という大事業に向かって第二、第三の扉が開いていくのです。

実に神様は、隣人とコミュニケートするために多くのきっかけと媒体を与えてくださるものです。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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