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新日本語訳聖書記念連載

ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(6)見えるようになりたいのです

2018年6月20日14時11分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン

ある日のこと。ヘボンが散歩をして洲干弁天という神社の所まで来たとき、そこで一心不乱に祈っている男を見た。

「どうかお願いでございます。目を治してください。痛みだけでもなくなりますように」。そして、彼はさい銭箱に銅貨をチャリンと入れ、こちらに歩いてきた。どうやら目が見えないらしく、杖にすがって怪しげな足取りで歩いてくる。ヘボンが立っていることに気付かず、ぶつかりそうになった。

「アブナイデスヨ」。ヘボンはその体を抱き止めて言った。「何ヲ イノッテイマシタカ?」。男は汚らしい着物の袖でひっきりなしに流れる涙を拭きながら話をした。彼は戸部浦に住む漁師で、名を仁介と言った。眼病が治らないので洲干弁天に願をかけにきたのだという。

「目ガワルイノデスカ?」。「はい。以前からずっと眼病を患っておりましたが、いいお医者様がいなくて治りません」

ヘボンは、この男を成仏寺の住居に連れていった。そして、目を診察してみると、彼は梅毒性網膜炎であることが分かった。それから、洗面器に水を汲んできて、その中にホウ酸を溶かし込んで目を洗った後、目薬をさした。

すると、たちまち痛みが和らいだとみえ、彼は大声で言った。「あ、痛みがなくなりました。もう痛くありません」。それから、ピタリとヘボンの前に両手をついてペコペコ頭を下げた。

「ありがとうございます。人助けでございました」。「痛クナッタラ マタキテクダサイ」。ヘボンは彼を送り出した。

この漁師は、仲間にこの話をしたらしく、名医が来たといううわさがたちまち広まった。「なにしろ、仁介さんがあんなに痛がっていたのに、一滴薬をさしただけで痛みがとれ、目も見えるようになったって言うじゃないか」。「でもあの医者は外人さんだよ。命を狙われなきゃいいが」

それから1週間ほどたったある日。すっかり眼病の治った仁介が仲間を連れてやってきた。「先生。こいつの眼も治してやってください。かわいそうなやつでして・・・」

茂吉と名乗るその男も漁師だった。眼病を患ったがどこの医者からも見放され、絶望の中にあった。

診察してみると、老人性白内障にかかっていることが分かった。眼球を摘出するしかない。ヘボンは手術を決意した。

「ダイジョウブデスヨ。シュジュツヲスレバナオリマス」。すると、彼は涙を流して言った。「見えるようになりたいんです、先生。あっしが漁に出ないと、家族を養っていけないんですよ」

ヘボンは彼を3日ほど入院させることにして、すぐにニューヨークから取り寄せた医療器具を使って手術を開始した。そして、わずかな時間で眼球摘出の手術を終え、代わりに義眼をはめ込んだ。

「ホラ、モウ痛クナイデショウ?コノ目ハ見エナクテモ モウヒトツノ目デ見エマスカラネ」

3日後にこの漁師は帰っていった。それからヘボンのうわさはさらに広がり、漁師だけでなく、農家の人も、町中の人も彼の姿を見かければ先にあいさつするようになった。浜へ行けば「今晩のおかずにしてください」と言って魚をくれる漁師もいた。

彼が名医であるという評判が広がると、奉行所の役人も家族の治療を頼みに来るようになった。また、うわさを聞いて遠方からはるばるやってくる者もいた。

ある時、江戸からやってきた学者が言った。「江戸では今コロリ(コレラのこと)がはやっていて大変ですわ。もとはといえば黒船が来たのが原因です。黒船が捨てる泡が魚の腹に入り、それを食べた人が感染するんです」

ヘボンは、それが石けんであることに気付いた。「そうではありません。外国人は白い泡で手を洗うからこそ伝染病にかからないのです」。こう言って、自宅に備えてある石けんを彼にあげてしまった。

その後、ヘボンはニューヨークにいたとき、自分で石けんを作ったことを思い出し、その製造法を人々に教えてあげたのだった。栗原という医師は、ヘボンから製造法を教わった後、江戸に帰り、製造業を始めた。こうして石けんは各地に出回り、伝染病も減ったのである。

*

<あとがき>

私たちが日常生活の中で何気なく使っている石けん。それを初めて日本にもたらしたのがヘボン博士であることを知っている人が、どれだけいるでしょうか?彼は優れた医師として、病気やけがに苦しむ多くの日本人を救いましたが、それだけでなく彼らの日常生活にも細やかな目を向け、皆が清潔な環境の中で心地よく生活できるように手助けをしたのです。

今日のお話に出てくる茂吉の眼病治療に対しても、私たちはヘボンが単に薬の力でもって痛みを一時的に抑えるとか、病状を緩和させる方法をとるのでなしに、その病気を根本的に癒やし、彼に新しい人生を歩ませようとしたことを教えられます。

他の例を見ても、ヘボンが日本人に対して行った医療行為の裏には、必ず古い人生から新しい人生へと方向転換させる全人的な癒やしがあるのです。これは、かつてイエス・キリストが病人に対してなされた癒やしのみわざとどこか似ているような気がしませんか?

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:ジェームス・カーティス・ヘボン
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