【童話】星のかけら(15)アドベンチャーに出発・その1 和泉糸子

2016年12月6日20時00分 コラムニスト : 和泉糸子 印刷
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夏休みになりました。3人組はアドベンチャーに出発しました。

カンサイさんの教会で、ツリーハウスで一泊(ぱく)子どもキャンプが開かれるのに参加するため、都留(つる)を目指して特急かいじに無事乗車しました。大森牧師の1人娘の奈緒美(なおみ)さんは大学の寮(りょう)に入っているけれど、夏休みに帰って来たので、シュンスケとケンタを新宿まで連れて行ってくれることになりました。船橋(ふなばし)駅でユキトと落ちあって、特急に乗るところまで付きそうと言うので、3人組だけで大丈夫だと思ったけれど、お願いしました。

ナオミ姉さんがついて来なくても、ぼくたちだけでやれたよねとユキトは口をとがらせましたが、乗りかえが何回もあり、かなり大変だったので、ついて来てもらってよかったとシュンスケは思いました。最初にまごつくとこまるなあとケンタも思っていたから、特急が走り出すと、ずいぶん気が楽になりました。

特急の車内で3人組は早速「アルムのお父さん救出作戦」の作戦会議を始めました。大月(おおつき)駅でおりると、カンサイさんが迎(むか)えに来てくれる手はずでした。

最初親たちは、子どもキャンプだけならまだしも、キャンピングカーでの旅まではみとめてくれませんでしたが、大森牧師が頼んでくれて、那智(なち)牧師夫妻が付きそうこと、自由研究もちゃんとやるということで、ようやくゆるしてもらえたようなわけでしたから、自由研究のテーマを3人はそれぞれに考えていました。

和歌山(わかやま)県の伝説というのがユキトの考えたテーマでした。インターネットで調べたら、小人の伝説はなかったけれど、巨人(きょじん)の伝説を見つけました。それはどうだろうという意見でした。シュンスケが考えたのは、林業や、みかんや茶のさいばい、漁業などの産業についてでした。ケンタは千葉(ちば)県と和歌山県の関係というテーマを考えていました。白浜(しらはま)とか、勝浦(かつうら)とか似たような地名があることから、なにかあるのではと思ったそうです。

みんなが同じテーマにしなくてもいいけれど、共同でやれる部分があったらいいねと3人は話し合いました。

そうこうしているうちに大月駅につき、迎えに来てくれたカンサイさんの車に乗って、ましみず教会に向かいました。子どもキャンプは次の日の朝に始まります。3人組は一足先について、その夜は牧師館に泊めてもらいました。

ツリーハウスは4本の大きな木の間に建てられたしっかりした手作りの家でした。1階部分にも部屋があり、内階段で上の階に上れるようになっていたけれど、外からはしごで上ることもできるようになっていましたので、3人組ははしごを上って2階にあがりました。木の枝(えだ)や葉っぱがかぶさっているようなツリーハウスの中でキャンプをするのは楽しみだなあと思いました。

キャンプが終わると、10人ほどの子どもたちは帰って行きました。

その晩、カンサイさんはビタエさんに連絡をしました。アルムとブランとグリーの小人の3人組を連れてビタエさんが現(あらわ)れ、みんなに小さな笛をわたしました。

「これは小人にしか聞こえない言葉を伝える笛です。アルムのお父さんが隠(かく)れていそうな場所にきたら、手分けしてこの笛を吹(ふ)いてください。

こういう声が込(こ)められた笛です。

『アルムがあなたを探しています
なつかしいお父さん
ここにいるのはぼくの友だち
大丈夫です 出てきてください
アルムがあなたを探しています』

こういう声が小人には聞こえるのです。ユキトくん、吹いてみてください」

ユキトが笛を吹くと、普通(ふつう)の笛の音がしました。アルムは感動してビタエさんを見つめていました。

「ビタエ様、ありがとうございます。お父さんに聞こえればいいのに」

和歌山への旅は、翌朝早く始まりました。高速道路を乗りついで、休みなしでも7時間かかるということでした。キャンピングカーにはカンサイさんと奥さんの那美(なみ)さん、そして人間と小人の3人組、計8人が乗りました。途中で何回か休憩し、食事も取ったので、ついたのは夕方になりました。

伊勢(いせ)自動車道を降りると、急に山道になりました。くねくね曲がった国道42号で矢(や)の川(こ)トンネルをぬけてしばらくすると、「このあたり来たことがある」とアルムが言いました。「ここは三重県だけど、かなり広いはん囲をさがさなければだめかもしれないね」とカンサイさんが言いました。

カンサイさんの親せきがやっている民宿があるので、そこに泊まることになりました。「あまりはやっていないから、お客はぼくたちだけ。広くないけどお風呂は温泉(おんせん)だから、つかれが取れると思うよ」とカンサイさんが言いました。

部屋に食事を運んでもらい、あとは自分たちでやりますと言って、様子を見てから小人の3人組を出してあげて、いっしょに食事をしました。カンサイさんが先にお風呂場を見に行き、3人組と小人たちを連れていっしょに温泉に入りました。

アルムとブランとグリーにとって、温泉初体験でした。大たんなカンサイさんは、アルムたちにもいろいろなことをチャレンジさせてくれます。3人組もずいぶん前向きになってきました。(つづく)

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和泉糸子

和泉糸子(いずみ・いとこ)

1944年生まれ、福岡市出身。1965年、福岡バプテスト教会で受洗、のちに日本基督教団の教会に転入し、Cコースで補教師試験に合格。1996年より我孫子教会担任教師、2005年より主任担任教師となり、20年間在職。現在日本基督教団隠退教師。

九州大学文学部卒業。東京都庁に勤務後、1978年より2002年まで、船橋市で夫と共にモンテッソリー教育を取り入れた幼児教育や、小中学生対象の教えない教育という、やや風変わりな私塾(レインボースクール)を運営。

童話「星のかけら」は、小学生の孫のために書いたものですが、教会学校の子どもたちが少なくなっている今、お話を通して教会や神様に少しでも出会える場が与えられればうれしいです。

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