Skip to main content
2025年7月12日10時33分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
星のかけら

【童話】星のかけら(9)月山さんのプレゼント・その2 和泉糸子

2016年10月25日16時43分 コラムニスト : 和泉糸子
  • ツイート
印刷
関連タグ:和泉糸子

3人はあきらめて、元の場所にもどり、机の上のノートを開きました。

「このノートに書かれていることは本当のことだと思う人には本当のことです。でも、ただのお話だと思う人には、ただのお話になるかもしれません」と、1ページ目に書かれていました。

「私(わたし)が小人の家族と出会ったのは、まだ私が画学生だった頃(ころ)、今から50年も前のことであった。小人の家族は3人。お父さんとお母さんと男の子。ある雨の激(はげ)しい夜のこと、私は紫陽花(あじさい)の木の下に濡(ぬ)れながら立っているこの一家に出会った。私は夢見がちな若者(わかもの)だったから、彼(かれ)らに出会ったことがたいそううれしかった。天からのプレゼントのように感じて、彼らをすぐにアトリエの中に招(まね)き入れた。彼らも私をひと目で気に入ってくれたらしく、それから私たちは毎日楽しく過(す)ごすようになった。

私の住まいは2階に粗末(そまつ)なベッドのある寝室(しんしつ)があるだけで、台所と風呂や便所は1階のアトリエの奥にある、なんとも殺風景な場所であったけれど、小人の一家が来たあとからは、とても楽しい住まいに変わってしまった。

小人のために私は作業をした。小さなベッドやテーブルや椅子(いす)を作った。それは私にとって楽しい時間だった。布(きれ)や綿(わた)を用意したら、小人のお母さんが布団(ふとん)やクッション、自分たちの着る服を作った。皮を用意したらお父さんが靴(くつ)を作った。小人たちは昔から大変器用な職人(しょくにん)だったが、この家族もまた、祖先(そせん)たちに負けず立派(りっぱ)な職人だった。私のために錫(すず)で蝋燭(ろうそく)立てを作ってくれた。きれいな音の出る小さな鐘(かね)も作ってくれた。

そうそう、小人たちの名前を記しておこう。お父さんはテラ、お母さんはルー、そして男の子はビタエ。彼らには名字は無い。

そのうちに戦争が始まり、この田舎(いなか)にも疎開(そかい)する人たちが増(ふ)えてきたので、万一のために私は小人たちを地下室に移(うつ)し、人の目に触(ふ)れないようにかくまうことにした。私は結核(けっかく)を患(わずら)ってようやく治ったばかりであったので、戦争に行くことも無く、山の中で絵を描(か)いて過ごすことができた。

病気になったときには、なんと自分は不幸であろうかと思ったものだが、空気の良い山の中にアトリエを建て、いざという時には地下室を防空壕(ぼうくうごう)として使うこともできたのだから、感謝(かんしゃ)しなければならない。私は早くに両親に死に別れ、たった1人の弟は戦争に行き、消息不明であったから、小人の家族は私にとって新しい家族のように思われたのだ。

彼らは実に気持ちのいい人たちであった。小人は歴史のはじめの頃に神様が造(つく)られた人たちであったらしい。その頃は巨人(きょじん)もいたという。しかし、地上では、そういう古い人たちの子孫はだんだん絶(た)えていき、伝説として聞くしかない時代になってきたのだが、運のいいことに私は彼らにめぐり合い、小人の家族と私とは、まことに麗(うるわ)しい交わりをもった、幸せな生活をすることができた。戦争という悲惨(ひさん)で悲しい中であってもであった。

そのうちに戦争が終わり、平和が戻(もど)ってきた。弟はアメリカの捕虜収容所(ほりょしゅうようじょ)に入れられていたのだが、無事に帰還(きかん)してきた。彼はその地でキリスト教の信仰(しんこう)を与えられて、別人のようになって帰ってきた。奥さんと10歳(さい)になっていた1人息子の常雄が、疎開(そかい)先から引きあげて来て、私と同じ県内に住むようになると、甥(おい)の常雄が、わたしのアトリエをたびたび訪(たず)ねてくるようになった。彼は絵が好きで、わたしに絵の手ほどきをしてほしいと頼んだ。

画家としてやっていくのは大変であるけれど、趣味で描く分にはよかろうと思い、私は彼と一緒(いつしょ)に絵筆を取った。

そんなある日に、常雄はたまたま小人の家族に出会ってしまった。常雄は子どものビタエにとって初めての友達になった。彼らはまたとなく気があって、人間と小人という境(さかい)を越(こ)えた友情(ゆうじょう)をもち、そのうちにどうした次第なのかはっきりしないが、テレパシーのようなもので互(たが)いに離(はな)れていても通信できるようにさえなった。

わたしはもともと風景画や、抽象(ちゅうしょう)画を描く絵描きだったが、小人の家族の姿をどうしてもカンバスに留(とど)めておきたいという願いが強くなり、しかも、それとわからないままに世間にその姿を示したいという欲(よく)も出て来て、展覧(てんらん)会に出したところ、高い評価(ひょうか)を与えられた。それ以来私はメルヘンの画家、小人の世界を描く画家として知られるようになっていった。

そうこうしているうちに、小人の父テラが亡くなった。しばらくして後を追うように母ルーも亡くなった。残されたのはビタエ1人になった。

わたしはビタエが哀(あわ)れだった。何とかして生き残った仲間がいるのなら探(さが)し出して一緒に暮(く)らせるようにしてやりたいと思った。その頃、常雄は大学を卒業し、技師として勤(つと)め始めていた。

ある秋のこと、常雄が山の中を歩いて測量(そくりょう)をしていたとき、不思議な石を見つけたのだ。赤や青や緑の透(す)き通った丸い石であった。きれいなものだから、久しぶりに私のところに来て、ビタエにお土産(みやげ)に渡(わた)したところ、ビタエの顔色が変わった。

この石のあったところに連れていって欲(ほ)しいとビタエはせがんだ。これまで隠(かく)れて生活していたのに、どうしても行きたいという。私たちはビタエを籠(かご)の中に隠して、車でそこまで出かけた。山奥の人気(ひとけ)も無い場所であったが、私は籠をかかえて、常雄の後について行った。

石のあった場所の奥は洞穴(ほらあな)になっていた。そして、そこには別の小人たちが住んでいた。ビタエはそうやって仲間を見つけ、彼らと行動を共にすることになった。赤や青や緑の石は小人同士の通信装置(そうち)であることが分かった。私たちはいざという時のために石で通信するやり方を習った。ビタエと常雄の間にはテレパシーのような通信方法も残されていたが、私はそのやり方は生涯(しょうがい)できなかった。

そうやってアトリエの地下室は、主人公の小人たちを失ったメモリアルの場所になった。私たちは初めて小人に出会った紫陽花の木の下にモニュメントを建て、テラとルーのなきがらを、木の棺(ひつぎ)に納(おさ)めて葬(ほうむ)った。両親の墓地(ぼち)と地下室の住まい、この2箇(か)所がある限り、ここはビタエにとって大切な場所であり、他の誰(だれ)もが踏(ふ)み入れることのできない聖域(せいいき)なのだ。

だから私はこの敷地(しきち)とアトリエを常雄に贈与(ぞうよ)することにした。彼なら私の気持ちが十分(じゅうぶん)に理解(りかい)できるだろうから。しかし、もし、もっと時がたって、常雄も天に召(め)されるようなときに、この場所に来て、このノートを読む人がいたら、私の手記をメルヘンの1つと思ってくれてもいい。本当にあったことだと思ってくれてもいい。どちらであっても、この場所を大切に思ってくれるのなら、どんなにうれしいことだろう。

そろそろ私の人生も終わりに近づいてきたようだ。私は孤独(こどく)ではなく楽しい生涯(しょうがい)を過ごすことができたことを、神に感謝したい。

月山(つきやま) 満(みつる) 記す」

3人組はこのノートをログハウスに持ち帰り、本だなから辞書を出して来て、一所けん命に読みました。(つづく)

<<前回へ     次回へ>>

◇

和泉糸子

和泉糸子

(いずみ・いとこ)

1944年生まれ、福岡市出身。65年、福岡バプテスト教会で受洗、後に日本基督教団の教会に転入し、Cコースで補教師試験に合格。96年より我孫子教会担任教師、2005年より主任担任教師となり、20年間在職。現在日本基督教団隠退教師。九州大学文学部卒業。東京都庁に勤務後、1978年より2002年まで、船橋市で夫と共にモンテッソリー教育を取り入れた幼児教育や、小中学生対象の教えない教育という、やや風変わりな私塾(レインボースクール)を運営。(2017年7月17日死去、プロフィールは執筆当時のものです)

【執筆者からのコメント:童話「星のかけら」は、小学生の孫のために書いたものですが、教会学校の子どもたちが少なくなっている今、お話を通して教会や神様に少しでも出会える場が与えられればうれしいです】

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:和泉糸子
  • ツイート

関連記事

  • 【童話】星のかけら(8)月山さんのプレゼント・その1 和泉糸子

  • 【童話】星のかけら(7)クリスマス・その3 和泉糸子

  • 【童話】星のかけら(6)クリスマス・その2 和泉糸子

  • 【童話】星のかけら(5)クリスマス・その1 和泉糸子

  • 【童話】星のかけら(4)冒険のはじまり・その4 和泉糸子

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 見捨てない神 穂森幸一

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 第一のことを第一にする人生の祝福 菅野直基

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(7)共同体の重視 臼田宣弘

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.