【童話】星のかけら(4)冒険のはじまり・その4 和泉糸子

2016年9月20日17時55分 コラムニスト : 和泉糸子 印刷
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「あっ、イースターの卵だよ。教会のお庭にかくして卵さがしをやったのに、1つも見つからなかったんだ」「こんなところにあったなんて」。シュンスケとケンタは口ぐちに言いました。イースターは4月でしたから、もう4カ月もたっているはずですのに、イースターの卵はいやなにおいもせず、きれいなままでした。おまけに持ってみると重いのです。

「これ、ゆで卵じゃない。焼き物みたいだ」
「だけど、ぼくたちが作ったのとそっくりだよ」
「変だねえ」

口ぐちに言っていますと、だれかが近づいて来ました。

なんと、それは子どもの小人、3人の男の子たちでした。

「ごめんなさい。ぼくたち、いたずらをして、卵をかくしたの」
「持って帰るのとても重かったけど、おし車にのせて運んだんだよ」
「でも、途中(とちゅう)で落としちゃったの」
「ビタエ様が、石に変えてくださったの。くさるとばいきんが広がって病気になるかもしれないでしょ」
「でも、水の底にしずんで取り出せなくなってしまったの」
「外に出ちゃいけないってビタエ様に言われたんだけど、気になって見に来ちゃった。でも、もう行かなくちゃ、見つかったらしかられるから」
「ありがとう、ええっと」
「ぼくはユキト」「ぼくシュンスケ」「ケンタだよ」
「君たちは?」
「アルム」「ブラン」「グリー」
「また会えるかな」
「きっといつか」

あく手した手の中に、小さな貝がらのようなかけらが入っていたのを見つけて、3人の子どもたちはポケットの中にそっとしまいました。

そして、もとの仕事にもどり、バケツの中に卵を入れ終わると、池はすっかり消えてしまいました。「終わったね」。子どもたちが一息ついていますと、いつの間にかビタエがそばに立っていました。

「ありがとう。本当に助かりました。今日のことはどうぞ秘密(ひみつ)にしてください。お礼に差し上げたいものがあります。受け取ってください。ユキトさまには赤いかけらを、シュンスケさまには青いかけらを、ケンタさまには緑のかけらを差し上げます。これを大切にして、わたしたちのことを時々思い出してください。でも、だれにも話さないでください、指きりげんまんですよ」

3人がそれぞれのプレゼントを受け取ると、また鐘の音が聞こえ始め、気がつくと3人は塔の部屋にもどっていました。夢ではないしょうこに、3人はそれぞれにきれいな色の星のかけらのような石を手ににぎりしめていました。

それからどうしたでしょうか。3人はもと来た道を通って礼拝堂にもどり、いすにすわってお祈(いの)りをしました。

「神様、ぼくを正しく、勇気のある子にしてください」
「月山のおじいさんを元気にしてください」
「また小人の国に行けますように」

こんなお祈りをして、最後に「イエス様のお名前によって、お祈りします。アーメン」といっしょに声を合わせて言いました。教会学校でお祈りを習っても、今まではなかなかお祈りしなかったのに、どういうわけだか、真夜中の礼拝堂で子どもたちはお祈りをして、そっと電気を消して、牧師館の廊下に来ると、ドアをしめてかぎもかけて、廊下の電気とほかの部屋の電気も消して、おふとんの中にもぐりこみました。お部屋の電気はみんなの顔が見えるていどに、豆球だけは灯したのですけどね。

翌(よく)朝、目が覚めると、月山のおじいさんはかなり良くなったよと、おじさんが言いました。3人でよくお留守番してくれましたねと、おばさんもにこにこしました。

「不思議なことがあったのよ。あんなにいいお天気だったのに、急に雨がふってきて、しばらくしたら、月山さんがねごとを言われたの。イースターの卵を運んでくれって。そして、のどにつまりかけていたたんが取れて、大きく息をされたのね。それから急に良くなってこられたので、安心して帰ってきたのよ」

小人のビタエとの約束です。正しく勇気のある子どもになりたい3人は、秘密を守りました。

ぼくたちのしたことは、小人を助け、また月山さんを助けるお手伝いだったのだろうか。ふってきた雨は、ぼくらのかき出した池の水だったのだろうか。

ビタエというのは魔法使いなんだろうか。

あのアルム、ブラン、グリーという小人の子どもたちにまた会えるだろうか。もっと話ができたらよかったなあ。

あの塔のてっぺんの部屋には、小人の国への入り口があるのだろうか。

3人は、こんなことを夏の間中、会うたびに何度も話し合いました。

分からないことだらけです。でも分かったことは、神様があの晩(ばん)のお祈りを聞いてくださったことと、世の中には不思議なことがあるという2つのことでした。

そして、小人のくれた赤いかけらは、もしかしたら、勇気をなくしそうになるときに、大丈夫だよと声をかけ、はげましてくれる星のかけらにちがいないと、ユキトは思ったのでした。(つづく)

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和泉糸子

和泉糸子(いずみ・いとこ)

1944年生まれ、福岡市出身。1965年、福岡バプテスト教会で受洗、のちに日本基督教団の教会に転入し、Cコースで補教師試験に合格。1996年より我孫子教会担任教師、2005年より主任担任教師となり、20年間在職。現在日本基督教団隠退教師。

九州大学文学部卒業。東京都庁に勤務後、1978年より2002年まで、船橋市で夫と共にモンテッソリー教育を取り入れた幼児教育や、小中学生対象の教えない教育という、やや風変わりな私塾(レインボースクール)を運営。

童話「星のかけら」は、小学生の孫のために書いたものですが、教会学校の子どもたちが少なくなっている今、お話を通して教会や神様に少しでも出会える場が与えられればうれしいです。

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