競技かるたに青春を燃やす広瀬すずに日本の教会が学ぶべき姿を見た!? 映画「ちはやふる」

2016年6月21日18時51分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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+競技かるたに青春を燃やす広瀬すずに日本の教会が学ぶべき姿を見た!? 映画「ちはやふる 上の句」
「ちはやふる -下の句-」© 2016映画「ちはやふる」製作委員会 © 末次由紀/講談社

少女マンガ原作の大ヒット映画。続編製作も決定している。主演は広瀬すず。昨年の「海街diary」で、フレッシュな感動を運んでくれた、今一番の売れっ子女優である。

広瀬すず目当てで見に行く方も多かろうが、そうでなくとも、彼女の魅力にとりつかれてしまう可能性は高い。かく言う私も、たまたま試写会に当たったので鑑賞したのだが、それ以降、彼女の出ているCMを見るたびに映画の感動がよみがえってくる(笑)。

一見、青春物語で、今はやりのマンガ原作のドラマ。それをご丁寧に二部作にしているのだから、ちょっと「進撃の〇〇」みたいな不安が襲ってきたが、それは全くの杞憂(きゆう)だった。

見ていて感じたのは、キリスト教会と百人一首は同じだな、ということ。

およそ百人一首なんて、中学校でイヤイヤ暗記させられた(でも全部できなかった)めんどくさいもの、という意識しか私にはない。しかし、この映画(もしくはマンガ原作、というべきか?)は、これを「競技かるた」というセミスポーツに落とし込むことで、進行する高校生の日常を通して、和歌の本質を観客にきちんと提示してくれている。

冒頭で在原業平の一首「ちはやふる・・・」が出てくるのだが、主人公の女の子(広瀬すず)は「ちは・・・しか聞いていない」という。「競技かるた」では、この最初の子音だけを聞いて、瞬時に反応しないといけないからだそうだ。

「だったら、別に百人一首でなくてもいいんじゃない?」と思わされてしまう。しかし、これが後半、とても大きなミスリードにつながっていき、見事に「百人一首」の世界と10代の高校生の世界がリンクしていくのである。不覚にも私は、「机くん」で泣かされた(分かる人には分かりますね!)。

映画は、あの小難しくて、それを全部覚えるなんてオタクっぽいと思われがちな「百人一首」の在り方を、「競技かるた」という形態で提示することで、カッコいい、クールなイメージに作り変えている。さらに、その競技で勝つためには、実は百人一首の和歌解釈をきちんとする必要がある、という高次の段階へと登場人物を導いていく。

競技かるたに青春を燃やす広瀬すずに日本の教会が学ぶべき姿を見た!? 映画「ちはやふる 上の句」
「ちはやふる -下の句-」© 2016映画「ちはやふる」製作委員会 © 末次由紀/講談社

和歌の奥深いリアリティーに触れることで、主人公とその仲間は心の成長を遂げ、同時に「競技かるた」の世界でも腕を上げていく。この過程は同時に、彼らの物語を通して観客を百人一首の世界観に導くことにもなっている。全く異質な百人一首の世界が、映画を見ることで身近に感じられるようになっていく・・・。

この変化構造は、キリスト教会にも適用できると私は思う。

キリスト教世界も「百人一首」同様、世間からはなんか小難しく、オタクっぽい(ましてや宗教ですから!)扱いしか受けていない。しかし、このようなハンデに負けじとばかり、米国やオーストラリアから入ってきたコンテンポラリーな教会スタイルを積極的に受け入れようとする日本のキリスト教会もある。こういう教会では、コンサート的な礼拝やエンターテインメント満載のプログラムに関心を持ってやってくる若者を迎え入れようと必死である。

もちろん、こういった流れに反対する声が、従来のキリスト教会から上がっている。総じていうと、「若者に媚(こ)びるような、エンターテインメント主体のキリスト教会では、その本質(福音)を伝えられない」ということ。「ちはやふる・・・」の意味を理解することこそ本質なのに、「ちは・・・」しか聞いていなくて、本当にいいのか?という疑問に通じる苦言である。

しかし、この映画を見て、エンタメを求めることは決して福音の本質をぼかすことにはならない、と確信した。キリスト教会は今まで「福音の本質は、まさに福音によってのみ伝えられる」とばかり、フォーマルスタイルを固持してきたように思う。

例えば、賛美歌、聖歌、スーツ姿の牧師、丁寧な語り口、ウィットに富んだ例話・・・。確かにこういったものを好む人々もいただろう。しかし、それはちょうど、「百人一首」の本質を「詠み手の心を理解すること」と限定し、中学校の国語の教科書に登場させてきた従来の大人たちのやり方と同じである。

しかし、次世代にとって「競技かるた」という形態が最も効果的に「詠み手の心を理解」させる方法だったとしたら、ここにこそキリスト教会は学ぶべきことがある。

高年齢化が進み、若者が教会に来なくなっている現代日本のキリスト教会。これは学校のお勉強として教えられる「百人一首」である。しかし、人々が熱狂や興奮を覚えながらキリストを求める世界は、音楽やエンタメなど、人々にとって魅力あるツールを用いてこそ拓(ひら)かれてくるのではないか。キリスト教会にとっての「競技かるた」が、今必要とされているのだ。

伝えたい「福音」は十分に信頼できる。そして変幻自在に形態を変容させても、その本質は変わらない。そう信じて、あなたの教会、私たちの教団にとっての「競技かるた」とは何か、を探求していくべきではないか。私たちの教会には周りの方から憧れられるトピックスがあるか? ないとしたら、どうしたらそれを生み出すことができるのか? そう問うことを始めなければならない。百人一首にできたことは、きっとキリスト教会にも可能であると信じたい。

そういう意味で、キリスト教会はこの映画から学ぶところが大いにある。声を大にして言いたい。教会の牧師、信徒であればこそ、この映画を見るべきである! もちろん、広瀬すずのファンであればなおさら・・・(笑)。

■ 映画「ちはやふる 上の句・下の句」予告編

映画「ちはやふる」公式サイト

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)、現在は大阪城東福音教会(ペンテコステ派)牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。

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