沖縄における植民者としての日本人と私(3)琉球・沖縄の自己決定権と日本人の立場 川越弘

2014年8月31日09時53分 コラムニスト : 川越弘 印刷
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琉球・沖縄の自己決定権と日本人の立場―キリストに仕える者として

1879年、政府は処分官(捨てるための処分)松田道之を琉球に派遣させた。彼の率いる武装警官180人余と兵士約400人は首里城を囲み、尚泰王に「沖縄県設置」を通達し、強制的に合意を迫った。武力をもって沖縄の主権を侵したのである。この「琉球処分」の後、沖縄は皇民化・同化政策が推し進められ、その帰結として沖縄戦の悲劇があった。

そして日本の敗戦後、沖縄は米国統治下で人権が侵された。さらに「25年から50年以上をアメリカが咀嚼(そしゃく)することが望ましい」という天皇メッセージによって、反対する住民の前で銃とブルドーザーで山畑はつぶされ、軍事基地にされた。このメッセージを基に日米両政府は、サンフランシスコ講和条約と日米安保条約を締結させ、その日米地位協定によって半永久的に沖縄に基地を置いた。沖縄が日本に復帰しても基地はかえって拡大し、民衆は米軍犯罪に悩み、危険視し反対している中でのオスプレイの訓練と辺野古新基地建設など、今もその重圧に苦しみ続けている。この沖縄の植民地の現状を考えたとき、その源流として「琉球処分」に突き当たるのである。

今や「沖縄は自立しなければならない。日本に埋没しない独自の歴史的主体として自己主張をする。沖縄は沖縄として自己決定権を拡大していかねばならない」という声が沖縄全体に広がっている。

1854年、琉球王国はアメリカ合衆国と琉米修好条約を締結した。その後、フランスと条約を締結し、1859年にはオランダと条約を締結した。沖縄が主権国家であった証しである。日本政府はこの3条約を没収し、現在、外務省が保持している。外務省は、この3条約の「経緯が明らかでない」との理由で、返還の回答を避けている。日本の政府見解は、「琉球王国が外国と結んだ条約に有効性があるのかどうかについての解釈は困難」として、無効とも有効とも答えずに態度を保留しているが、政府が保持し続ける理由はない。すぐにでも沖縄に返すべきである。

1869年、「ウイーン条約法条約」を国際連合が採択した。その51条に、「国の代表者への脅迫や強制行為の結果、結ばれた条約(合意)は無効と規定する」とある。この条約は1980年発行し、日本は81年に加盟した。

「琉球処分」の実相に当てはめると、ウイーン条約法条約51条の禁じた「国の代表者への脅迫や強制行為で結ばれた条約(合意)は無効」となる。この規定は、すでに当時存在していた「国際慣習法」と重なり、現代からさかのぼって適用されるものである。それに対して外務省は「確定的なことを述べるのは困難」と回答しつつも、不当性を否定してはいない。

2007年9月13日、国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択された。「先住民族」の定義を「後からやってきた入植者の侵略を受け、同意のないままに(入植者がつくった)国家の支配下に組み込まれながらも、民族としての心のよりどころを失わず、先祖伝来の言葉や伝統・文化を受け継ごうとしている人々」とした。すなわち、近代国家が「国民形成」の名のもとで、「野蛮・未開」と見なしてその民族と土地を一方的に奪って併合し、民族の存在や文化を無視軽視し否定することで、さまざまな形の「同化主義」を手段としてその集団を植民地支配した結果、生じた人々のことであるとした。

国連の人種差別撤廃委員会は、2010年3月、「人種差別撤廃条約」に基づいて、沖縄への過重な米軍基地の集中を「現代的形式の差別」として「人種差別撤廃条約の適用対象」と明記し、日本政府に勧告を出した。

それに対して外務省は、「沖縄県居住者、出身者は日本民族であり、一般に他府県出身者と同様、社会通念上(差別の対象となるような)生物学的または文化的諸特徴を共有している人々の集団とは考えられておらず、本条約の対象にならない」とする同省の見解を出した。ここに「沖縄県居住者」(他府県出身者)が最初でその次に沖縄「出身者」(沖縄生まれ)と、順序をつけて書いている言い回しに注意する必要がある。この言葉に「日本人を優先し、沖縄の人々はそれに準ずる」という内容が含まれていると捉える。「沖縄人は低劣な土人」とあるブログに書かれていた言葉に、どこか根底でつながっているのだ。政府の「言語、宗教、慣習、文化などが日本本土との関係で異なっているという認識が必ずしも一般にあるとは認識していない」という説明は、日本と異なる歴史と高い文化を所有している沖縄を、日本の歴史と文化が包含しているという表現であって、それは侮辱としか言いようがない。

そんな中で、沖縄の自立や独立を建てるために日本人の立場はどうあるべきか。沖縄人と日本人、異なる歴史を背負って生きる者同士が協力して一つのものを建て上げるにはどうすべきか。特に教会は何をすべきか。日本人が沖縄でキリストに仕えることとどう関連するのか、ということを考えるのである。

キリストの体なる教会と結び合っている私たちは、沖縄の兄弟姉妹と共に礼拝を行い、共に国籍が天にあると認識している。教会はキリストが私たち信仰者の頭となっていることを基盤にして、ここから沖縄人(ウチナンチュウ)と日本人(ヤマトンチュウ)の在り方を考える。「キリストに在って一つである」ということは、地上では異なっていることを認めて生かし合うことにつながるからだ。沖縄の人々と日本人は、それぞれ異なった歴史と文化を背負って生きている。混ぜ合わせたり同化したりするのではない。混ぜることや同化することは、相手の心の中に入って行ってやがて日本の側に入れ込む。これが植民地支配者の意識である。私たちが三位一体の神認識に立つとき、それぞれが異なって生きる生き方を認め合うことへと推し進められる。沖縄の立場があり日本の立場があるという認識が与えられるのである。日本の立場とは、植民地的支配ではなく沖縄の人々以上に沖縄の傷みを傷む立場のことである。沖縄の立場とは、差別され虐げられている自らの存在を日本に訴えることであろう。そこから、異なる者同士が一つのものを建て上げることにつながると認識する。

私たちには、沖縄の問題を正しく日本に伝えるという責任がある。沖縄の問題を沖縄の人々が語り伝えることは大事である。しかしそれ以上に、日本人が沖縄の人々の声を、沖縄の問題とその傷みを、沖縄の人々以上の傷みをもって日本に向けて語って行くことはもっと大事ではないか。そのことを沖縄の人々が本心に求めているからだ。私自身、これまで虐げて踏みにじってきた日本の歴史の中に埋没していたために、自分にとってはとても困難な作業である。しかしそんなことを言っておられない。

■ 沖縄における植民者としての日本人と私:(1)(2)(3)(4)(5)

川越弘(かわごし・ひろし)

1945年石川県生まれ。日本キリスト教会沖縄伝道所牧師。日本キリスト教会靖国神社問題特別委員。

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