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エゼキエル書講解説教(1−1) 渡辺信夫牧師

2014年6月27日09時50分 コラムニスト : 渡辺信夫
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渡辺信夫牧師+
渡辺信夫牧師

1章1節~2章7節によって

預言者は神の召しを受けてその務めを始める。預言者に限らず、全て神に仕えて生きる信仰者は、召しによって務めを始める。その召しの典型を預言者に見出すことができる。我々はエゼキエルの召命の記録によって、我々自身の召命を考えさせられ、それに留まらず己れの召しを確かめるのである。

「第30年」と先ず書かれている。30年とはエゼキエルの生涯の第30年のことであろう。彼は30歳になっていた。30歳ということで先ず思い起こすのは、我々の主イエスが30歳で宣教活動にお入りになったことであろう。30歳というのは公的生活に入る適齢であろうか。必ずしもそうではない。

エレミヤが預言者の召命を受けた時、「私はまだ若いから、人に語ることはできない」と言って召しを辞退しようとした。エレミヤは30歳よりずっと若かったらしい。エゼキエルの場合はそのような辞退はしなかったようである。30歳という年齢は若いと言えないから辞退しなかったのか。それとは無関係であろう。エレミヤの場合、若かろうと、歳を重ねていようと、何事につけ尻込みする内気な人柄であったのであろう。それと比べると預言者イザヤの場合は、神が「私は誰を遣わそうか」と呼ばわっておられた時、進み出て「私がここにおります。私を遣わして下さい」と答えた。これはイザヤが己れに自信を持っている目立ちたがり屋の人間であったことを意味するのではないが、エレミヤの尻込み型とは別である。とにかく、いろいろなタイプの人間がいて、神はそれぞれをそれぞれに用いたもうということを知れば良いであろう。それでも人生の一定の時に召しが起こる。

この30年というのを、次の第2節には、エホヤキン王の捕え移された第5年と書いている。ここで歴史的状況がかなりハッキリ見えてくる。これは列王記下24章に詳しく書かれている。バビロン軍がエルサレムを攻め囲み、ユダの王エホヤキンは降伏し、人質として引かれて行った。バビロン軍は彼を捕え移し、その後にエホヤキンの叔父に当たるゼデキヤを王として立てた。また、バビロン王ネブカデネザルはこの時、エルサレムの市民一万人を捕え移した。エゼキエルは25歳でこの捕囚の群れに入れられた。紀元前597年のことである。したがって、エゼキエルが預言者として召命を受けたのは、紀元前593年であった。人生の一定の時と言ったが、歴史の一定の時でもある。

この時エゼキエルはケバル川のほとりに、捕囚の人々のうちにいた。つまり、捕囚はケバル川のほとりに移住させられていた。これがユダから来た捕囚の居住地であった。川のほとりにいたとは、そこで何かの行事をしようとして集まったことを意味するのではないかと思われる。とすれば、それは礼拝であったのではないか。

思い起こすのはパウロがピリピに行った時、ある安息日に、町の門を出て、祈り場があると思って川のほとりに行った。予想通りそこに町に住むユダヤ人が集まって来たので、説教をした。ここでルデヤという婦人が信仰に入る。使徒行伝16章13節に書かれていることである。川のほとりは何か宗教的意味を持っていたのだ。

エゼキエルは祭司であった。捕囚のユダヤ人の中では指導的な役割を持っていた。川のほとりで礼拝をしていたとすれば、エゼキエルが司会をし、聖書を朗読し、勧めあるいは説教をし、祈りをしたのではないか。また、それは安息日ではなかったかということまで想像される。この想像は全く確かとは言えないから余り深入りしないでおこう。

川のほとりに礼拝に集まる習慣についてはパウロも知っていたが、川のほとりに集まる理由はわからない。ただ、バビロンの川のほとりという言葉から直ちに思い起こすのは、詩篇137篇1節である。「われらはバビロンの川のほとりにすわり、シオンを思い出して涙を流した。われらはその中のやなぎにわれらの琴をかけた。われらをとりこにした者が、われらに歌を求めたからである。われらを苦しめる者が楽しみにしようと、『われらにシオンの歌を一つうたえ』と言った。われらは外国にあって、どうして主の歌をうたえようか」。国を失い、その宗教が物笑いにされている捕らわれ人が、川のほとりに行く切々たる思いは、時代と民族の違いを越えて、今も多くの人々の胸を打つのである。召しを受けた時のエゼキエルの内的状態は、今引いた詩篇の言葉で十分わかるのではないだろうか。

ケバル川がどこにあったかは確認できない。というのは、この名で呼ばれる川がカルデヤのあちこちにあったからである。言葉の意味は大きい川である。大川という名が我々の国にもあちこちにあることを考えるなら、事情が飲み込める。なお、川というのはユフラテとか、チグリスとかいう自然の流れを呼ぶだけでなく、人工の川、すなわち運河を呼ぶ名でもあった。バビロン地方では灌漑用の運河が掘られていたのである。(続く)

■ エゼキエル書講解説教(1):(1)(2)(3)

◇

渡辺信夫(わたなべ・のぶお)

1923年大阪府生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。文学博士(京都大学)。1943年、学徒出陣で敗戦まで海軍服役。1949年、伝道者となる。1958年、東京都世田谷区で開拓伝道を開始。日本キリスト教会東京告白教会を建設。2011年5月まで日本キリスト教会東京告白教会牧師。以後、日本キリスト教会牧師として諸教会に奉仕。

著書に『教会論入門』『教会が教会であるために』(新教出版社)、『カルヴァンの教会論』(カルヴァン研究所)、『アジア伝道史』(いのちのことば社)他。訳書にカルヴァン『キリスト教綱要』『ローマ書註解』『創世記註解』、ニーゼル『教会の改革と形成』『カルヴァンの神学』(新教出版社)、レオナール『プロテスタントの歴史』(白水社)他。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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