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エゼキエル書講解説教(1−3) 渡辺信夫牧師

2014年6月27日10時05分 コラムニスト : 渡辺信夫
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渡辺信夫牧師+
渡辺信夫牧師

神の姿が大事なのではなく、その言葉が大切である。2章でその言葉を聞く。神はエゼキエルに人の子よと呼びかけたもう。人の子という呼び方には特別な意味はない。主イエスが御自身のことを人の子と呼ばれた時、これはメシヤ的な呼び方であり、ダニエル書の表現を受けたものであるが、エゼキエルの場合はただの人という意味のようである。

神は人の子を立ち上がらせて命令を与えたもう。立ち上がれと言われたのは、ひれ伏していたからである。ひれ伏したままで命令を与えても良いのであるが、神はエゼキエルを高くして命令を授けられた。皇帝の命令は顔を挙げずに聞くが神の言葉は立って聞く。

「人の子よ、わたしはあなたをイスラエルの民、すなわちわたしにそむいた反逆の民につかわす。彼らもその先祖も、わたしにそむいて今日に及んでいる」。ここにエゼキエルの召命の基本線がある。反逆の民に遣わす、と言われるが、反逆の故に今捕らわれになっている者を慰めるため、というのではない。神に打たれて故郷に住むことを許されなくなった悲劇の民でありながら、反逆を今も続けているのである。

打たれたならば、神に立ち返るのではないか。実際、イスラエルはバビロン捕囚の経験によって新しい心を持った民族になったと見られている。大まかに見ればそう言うことはできるが、事実を見ていくと、とてもそうは言えない。エレミヤ書で見たように、エルサレムは少しも悔い改めていない。バビロンに行った人たちも同じである。では、先ほど引いた詩篇137篇の詩人はどうなのか。深刻な経験を経て立ち返り、この災いによって高められ深められた人もいたにはいた。また、エゼキエルのような預言者による訓戒が続いた。だから、イスラエルは持ち直したのである。

神は預言者を通じて警告しておられた。それでも聞かなかったから、エルサレムはバビロン軍に取り囲まれて降伏し、捕囚がバビロンに連れ去られた。それでも悔い改めないので、再度囲まれついに滅亡する。それで人々は悔い改めたか。否である。それなら、神の処置は無駄であったか。そうではない。確かに、人はどんなに苛酷な悲劇に遭ってもまず悔い改めない。悔い改めがあったなら、奇跡だと言って良いほどである。

我々の住む国を考えて見れば良い。戦争の大災害、敗戦の苦悩、引き上げの苦労、屈辱と飢餓を思い起こす。だが、あの打撃だけで目を開かれた人はいない。目を開かれた人は御言葉の宣教があったからである。そのように、神はイスラエルを打つだけでなく、これに御言葉を与えたもうた。悲劇が御言葉の代わりになると考えてはならない。

「彼らは聞いても、拒んでも、彼らの中に預言者がいたことを知るだろう」(2章5節)。多くの人が拒むということはわかっている。では、そういう人々に預言者を遣わすことは無駄ではないのか。無駄ではない。聞いて悟り、悔い改める少数の者には預言者が遣わされた意味がある。拒む多数者にとっては、預言者が遣わされたにもかかわらず悔い改めなかったということが明らかになる。悟らなくても聞かせなければならない。

「あなたは彼らに『主なる神はこう言われる』と言いなさい」。預言者はいわば神の口となって、神の語らせたもう言葉を告げるのである。神の言葉が語られたという歴史が作られる。それは神の支配と救いの業である。

「彼らを恐れてはならない」。これが預言者の守るべき注意事項である。神の言葉を聞きたくない人は、これを語る預言者に危害を加える。主イエスが「世の初めから流されてきたすべての預言者の血」とルカ11章50節で言われたが、神の救いの御業に仕える僕たちは迫害に遭う。が、恐れてはならない。彼らの顔をはばかってはならない。彼らを恐れるな、これが今我々にも命じられる。

(1997年9月28日、日本キリスト教会東京告白教会にて)

■ エゼキエル書講解説教(1):(1)(2)(3)

◇

渡辺信夫(わたなべ・のぶお)

1923年大阪府生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。文学博士(京都大学)。1943年、学徒出陣で敗戦まで海軍服役。1949年、伝道者となる。1958年、東京都世田谷区で開拓伝道を開始。日本キリスト教会東京告白教会を建設。2011年5月まで日本キリスト教会東京告白教会牧師。以後、日本キリスト教会牧師として諸教会に奉仕。

著書に『教会論入門』『教会が教会であるために』(新教出版社)、『カルヴァンの教会論』(カルヴァン研究所)、『アジア伝道史』(いのちのことば社)他。訳書にカルヴァン『キリスト教綱要』『ローマ書註解』『創世記註解』、ニーゼル『教会の改革と形成』『カルヴァンの神学』(新教出版社)、レオナール『プロテスタントの歴史』(白水社)他。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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