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不条理なる死を不可知の光で中和せよ

平和を実現する人々は幸いである マタイ福音書5章9節

2026年4月1日23時57分 コラムニスト : 藤崎裕之
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関連タグ:マタイによる福音書藤崎裕之
不条理なる死を不可知の光で中和せよ─キリスト教スピリチュアルケアとして─(93)+

不条理なる死を不可知の光で中和せよ─キリスト教スピリチュアルケアとして─(93)

聖書の中のほんの短い字句を切り取って何かを語ることに、私は感心しない。聖書の言語は少なくとも2つ、ヘブライ語とギリシャ語が主であるが、言語学的な分類によれば、この2つの言語は語族が全く違う。今回のテーマである「平和」という言葉についても、ヘブライ語とギリシャ語でかなり概念が違っていたとしても不思議ではない。だから短い字句ではなくて、もっと大局的に言葉を吟味するべきである。

さて、戦争を望む人はほとんどいない、というのは本当のことだろうと思う。逆にほとんどの人が平和を望んでいるというのも、間違いなく本当のことである。私が若い頃は、「平和は望んでいるだけではダメだ。実現されなければならない。実行しなければならない」と盛んに言われた。それも多分に本当のことであろう。

キリスト教は「平和の宗教」であると主張されるが、現実は平和ではなかったと思う。それは世界史を俯瞰(ふかん)すれば、大体の人は同意すると思うが、では、21世紀においてキリスト教は平和の宗教だろうか。そう問われるならば、私は躊躇(ちゅうちょ)なく、「平和を望む宗教であろうとしている」と答える。まあ、微妙な表現になって申し訳ない。

キリスト教は相当に多くの信者を要する。が、キリスト教自体平和とはいえない。この2026年現在においても、キリスト教そのものは争い続けている。平和を望む宗教ではあるが、内部には争いが絶えない。これは事実であるので何の言い訳もできない。

この2週間、辺野古の事故が私の心をかき乱している。井手北斗編集長がいち早く論評を出されていたので、ぜひ読んでいただきたい。正直なところ、最初に目にしたときは相当に戸惑った。井手編集長は辺野古の事故を、私たちの罪の結果であると書いておられたと思うが、最初はなかなかその内容を受け止められなかった。

辺野古の基地反対運動、実行者たち、同志社国際高校のいずれも、私には関係があって、驚きとともに知らなかった点が明らかにされて困惑している。

平和は実現されなければならない、と教えられ続け、また今もその信念は変わらないが、私自身は全く平和を実現していない。イエス・キリストの言葉を借りるとしたら、「私は全く幸いではない」。恐らく、これから先の人生も平和実現には向かわないだろう。

私のような「人間こそ」が身勝手なアンポンタンなのであって、聖書の言葉をかけらも「実現できない」情けない人間ではある。全くもって罪深い。

で、本論に戻るが、平和とは何であろうか。平和の実現とはどういうことだろうか。平和を実現する者は、どのような意味で幸いなのだろうか。頭で考えて、文字で表現しようとするから分からなくなるのだろうか。恐らく違う。本当は平和に触れることすら、私は嫌悪しているのではないだろうか。

私は井手編集長のような紳士でない。俯瞰も達観もできない。結論をいえば、私は井手編集長の意見に賛同する。平和の実現に向き合い、真剣に行動しても、どんな正義があっても、人間には落ち度がある。悲劇を生み出すことはたくさんある。平和実現の行動において、人の命が失われているならば、やはりその時、人間の罪は重いのだ。

それでも平和に向き合う人は立派である。だから、私はあえて言いたい。聖書を切り取ってはならない。聖書の言葉で自己主張をしてはならない。なぜなら、その言葉を受け止める側には混乱しかないからだ。イエス・キリストは多くを語っている。平和についても語っているに過ぎない。

平和に向き合う人には、「平和」がふさわしいのであって、「平和」について争ってはならないだろうと思う。幸いを求める人には幸いがふさわしい。たとえ実現されない平和に直面しようとも、幸いを求める人々を忘れてならない。自分とは全く違う地平に立つ人々にも、幸いなる人生は必要なのだ。主よ、平和を実現できないわれらを憐(あわ)れめよ。(終わり)

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◇

藤崎裕之

藤崎裕之

(ふじさき・ひろゆき)

1962年高知市生まれ。明治から続くクリスチャン家庭に育つ。88年同志社大学大学院神学研究科卒業。旧約聖書神学専攻。同年、日本基督教団の教師となる。現在、日本基督教団隠退教師、函館ハリストス正教会信徒。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:マタイによる福音書藤崎裕之
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