Skip to main content
2025年10月20日23時39分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの生涯

鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの生涯(6)戦火の中の救出作業

2020年4月22日16時57分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷

1861年。平和な町はたちまち大混乱に陥った。南北戦争が始まったのである。青年たちは次々と駆り出されて戦場に出て行った。射撃は絶え間なく繰り返され、人々は逃げ惑い、学校、病院、公民館、その他多くの建物が爆破された。戦場には傷ついた兵士たちが横たわり、苦痛の呻きは野原にこだました。

アンドリューはこの時、陸軍次官に任命されたスコット氏の補佐官として呼ばれ、ワシントンに行った。そこで軍用鉄道と政府の電信通信の全責任を任せられ、鉄道部隊を組織して率いなくてはならなかった。

そうしているうちに早くも緊急指令が入ってきた。北軍の最初の部隊がボルティモアを通過する時襲撃され、ボルティモアとアナポリス間の鉄道が寸断されてしまったためにワシントンとの連絡が途絶えてしまったのである。アンドリューたちは直ちに部下を率いて現場に向かった。

線路は無残に破壊されていた。まずやるべきことは線路を修復し、部隊がここを通ってワシントンに進めるようにすることだった。数日かかって修復を終え、自分たちが直した線路を通ってワシントンに向かった。

もう少しでワシントンに入るという時であった。電線が木の棒で地面に止めてあることに気が付いたアンドリューは、機関車を止めて飛び降りた。そして走ってゆき、力任せに棒を引き抜いた。その瞬間、それが跳ね返って激しく彼の頰を打ったので転がり、傷口から血がほとばしり出た。部下たちは心配して直ちに応急処置をしてくれた。早速運転は部下が代わり、そのままワシントンに入った。

ワシントンの人々は温かく一行を迎え、労をねぎらってくれた。「アンドリュー・カーネギーさんに敬礼!」一人が彼のけがを見て言うのだった。「彼はアメリカのために血を流した」。そして、彼らはワイワイ騒ぎながら、アンドリューを抱きかかえるようにして知人の家に行った。そこで一同大いに歓待を受けたのだった。

そのうち、戦争はますます激しくなった。陸軍本部はバージニア州アレキサンドリア町に移った。ここにはブル・ランの戦場があり、激しい爆撃を受け、死者や負傷者が野山を埋め尽くすほど横たわっていた。そこへ、緊急指令が出て、一番近いバーク駅まで負傷兵を運ぶことになった。

直ちにアンドリューたちはバーク駅に向かい、負傷兵を片っ端から入ってくる列車に乗せた。そのうちに爆撃の回数が増し、駅の近くにも砲弾がバラバラ落ちてくるほどになった。これ以上留まることができなくなったので、ひとまずバーク駅を立ち退き、アレキサンドリアまで引き返すことにした。

鉄道従業員の中には職場を放棄して逃げ出してしまった者も数多くいた。しかし、アンドリューの部隊には一人の脱落者もなかった。本部からは、「いよいよ危険が迫ったら引き上げてよい」という指令が出た。この時、アンドリューはふとつぶやくのだった。(ブルース国王よ、ウォーレス将軍よ、私もあなたがたのように雄々しい心を持って、危険にさらされようとも断じて自分の持ち場を守ります)

彼は再び部下を励まし、滞っていた負傷者の救出活動に乗り出した。彼らは最後まで危険なブル・ランの戦場に留まり、自分たちの持ち場を守ったのであった。

ついに最後の負傷兵の一人を列車に乗せ終え、点呼を取ると、彼らは最終列車で引き上げることにした。勇敢なメンバーのうちの誰一人として負傷した者はいなかった。

アンドリューの部隊はワシントンに帰り、スコット大佐と共に陸軍省の中に本部を置くことになる。この時、リンカーン大統領がしばしば事務所にやってきては隊員のメンバーに気さくに言葉を掛け、激励するのだった。

そんなある日。アンドリューは忘れられない光景を目にした。事務所を出た所で、一人の黒人少年がやってきて、リンカーン大統領の足元にひれ伏し、両手でその足をかき抱いたのである。大統領は優しく微笑し、「マイ・サン(私の子よ)」と言った。

しかし、その大統領の顔は悲しげで深い憂いの影に包まれていたので、彼は胸を突かれた。大統領は苦しんでいたのだ。奴隷解放の代償として流されたおびただしい血。何千何万という若者が命を散らしていることへの責任に打ちのめされていたに違いない。アンドリューは心から彼をいたわってあげたい思いになるのだった。

それから間もなく戦争は終わった。この時、彼は戦争で受けた精神的、肉体的疲労が原因で病気になってしまったので、やむなく休暇を取り、静養のために故郷スコットランドに帰ることになった。故郷は彼の病み衰えた心身を温かく覆ってくれるかのようであった。

*

<あとがき>

南北戦争はアメリカに癒やしがたい傷を残しました。それは、ようやく実業界において成功の足場を登りかけたアンドリューの生活にも打撃を与えるものでした。彼は陸軍次官に任命されたスコット氏に付き従ってワシントンに行き、戦火のために寸断された軍用鉄道の修復工事に従事します。

やがて戦火が激しくなってくると、彼は部下を率いてブル・ランの戦場に赴き、負傷兵の救出活動を行ったのでした。この時も、アンドリューはビジネスに対してそうしたように、少しでも人のために役立ちたいという思いを胸に、誠意を込めて働きました。

彼の心の中には今も英雄たちの雄々しい心と姿が焼き付いていたのでしょう。決して持ち場を離れることなく、負傷兵の最後の一人を列車に乗せ終えるまで引き上げようとしなかったのでした。彼にとってはビジネスも救出活動も同じことで、一つの信念に貫かれていました。それは、「自分を愛するように隣人を愛しなさい」という聖書の教えでした。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。12年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • 太平洋の橋―新渡戸稲造の生涯(1)稲穂のように

  • ヘボンと日本語訳聖書誕生の物語(1)プロローグ―漂流する聖書

  • 戦国に光を掲げて―フランシスコ・ザヴィエルの生涯(1)叫び求める声

  • 混血児の母となって―澤田美喜の生涯(1)男まさりの子

  • 生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(1)動物の苦しみ

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 冷めた心に注意しよう! 万代栄嗣

  • 中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

  • ヨハネの黙示録(8)テアテラ教会の御使いへ 岡田昌弘

  • イスラエルとハマスが和平合意、生存人質20人全員解放 キリスト教界から歓迎の声

  • 「アジア太平洋伝道会議」2027年に開催決定 50カ国・地域から2500人が参加へ

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(233)宣教は主の備えから始まる 広田信也

  • 栄光への脱出の道 穂森幸一

  • 焦りは禁物 菅野直基

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • 中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

  • 【インタビュー】ブトロス・マンスール世界福音同盟新総主事 「平和をつくる者、それが私の使命」

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(233)宣教は主の備えから始まる 広田信也

  • 冷めた心に注意しよう! 万代栄嗣

  • 焦りは禁物 菅野直基

  • イスラエルとハマスが和平合意、生存人質20人全員解放 キリスト教界から歓迎の声

  • チャーリー・カーク氏の妻、殺害者を赦す 「キリストはそうしたし、夫もそうする」

  • 「アジア太平洋伝道会議」2027年に開催決定 50カ国・地域から2500人が参加へ

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • チャーリー・カーク氏の妻、殺害者を赦す 「キリストはそうしたし、夫もそうする」

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 米メガチャーチ牧師、当時12歳の少女に性的虐待 罪認め6カ月収監へ

  • 「ジーザス・ムーブメント」指導者チャック・スミス氏のディボーションブック邦訳出版

  • 日本キリスト教病院協会第5回総会 人材確保や人材育成などを討議

  • 「ザ・チョーズン」がギネス記録、イエス・キリストの生涯描いた長編連続ドラマ

  • 英国国教会トップのカンタベリー大主教に初の女性、ムラリー主教の任命を国王が承認

  • イラク人難民のキリスト教徒、フランスでライブ配信中に殺害される

  • 中国東部で教会活動に対する大規模取り締まり、キリスト教徒70人以上拘束

編集部のおすすめ

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 教団・教派超えて神の平和求める 戦後80年で「日本国際朝餐祈祷会」初開催

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.