スーパーチューズデーの結果を米福音派はどう受け止めるか(1)「特別な火曜日」が持つ意味

2020年3月5日13時25分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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米大統領選の民主党予備選で代表候補指名を競い合っているバニー・サンダース氏(左、写真:Jackson Lanier)とジョー・バイデン氏(写真:Michael Stokes)

2020年は、米国にとって忘れられない1年になるだろう。4年に一度のオリンピックイヤーであるとともに、「大統領選挙」の年でもある。特に後者は、今後の米国の行く末を大きく左右することになる。4年前のサプライズが再び訪れるのか。それともこの4年間で、かつて「サプライズ」であったものが「当たり前」となるのか。興味は尽きない。

そんな中、火曜日の現地時間3日に、いわゆる「スーパーチューズデー(特別な火曜日)」が行われた。米国の大統領選は単純な直接選挙ではない。事前に各党が代表候補を選出する必要がある。そのためには、州ごとに推薦すべき候補者を決め、大統領選よろしく「勝者総取り方式」で代議員を獲得し、最も多く獲得した者が党の代表候補となれる。そのため、大統領になりたい候補者はまず、自身を推薦してくれる党内の代議員獲得で競い合うことになる。

簡単に例えるならば、一騎打ちの全国大会(大統領選)に出場する代表権をかけて、敗者脱落方式で地方(政党)ごとに行われる予選大会(予備選)を勝ち上がるようなもの(?)である。

4年前は共和党の予備選が大きな話題となった。それは「ドナルド・トランプ」という異端児が、かつてない選挙戦を挑んだからである。しかし今回、人々の耳目を集めているのは民主党の予備選である。共和党はすでに現職大統領のトランプ氏支持で結束しているため、(4年前からは考えられないが)ほぼ無風状態の中、トランプ氏が堂々とした「王道」を歩んでいる。

一方、民主党は大混乱であった。一時は15人を超える候補者が乱立することもあり、大統領本選を8カ月後に控えながらも、10人近い候補者が生き残る事態となっていた。だがさすがに3月に入り、候補者が絞られてきた。それもそのはず、スーパーチューズデーでは、一気に14の州で誰を支持するかが判明するからである。

民主党代議員の総数は4750人。そのうち3979人が各州に割り当てられた数となる。そしてその半数以上となる1991人を獲得した候補者が、民主党の代表候補として指名獲得を確実にすることになるのである。

スーパーチューズデー前には、4州で予備選が行われた。そこで決まった代議員は155人。全体からするとわずか数パーセントということになる。これに対してスーパーチューズデーでは、1357人の代議員の配分先が確定するのである。

そして今までの流れから、このスーパーチューズデーを制した候補者がそのまま、党の代表候補として指名を獲得することが多い。だから重要視されるのだ。

今回、この代表候補選びに参戦し、スーパーチューズデー当日の3日時点で残っていたのは実質3人である。1人は4年前にヒラリー・クリントン氏と熱戦を演じたバーニー・サンダース氏。今回も前回同様にブレない公約(富裕層への増税、公立学校の無償化など)を掲げ、マスコミからは急進左派のレッテルを貼られながらも一躍支持層を拡大している。

もう1人が、バラク・オバマ前大統領時代に副大統領を務めたジョー・バイデン氏。オバマ路線を引き継ぎつつも、「中道路線」を標榜し、幅広い支持を取り付けている。スーパー・チューズデー前日までに、彼らと争っていた2人(ピート・ブダジェッジ氏、エイミー・クロブシャー氏)がバイデン氏支持を表明し、「中道派連合」の流れを作ることに成功している。

3人目は、今回のダークホース的位置で立候補を表明したマイケル・ブルームバーグ氏。マスコミは彼を「大富豪」と称しているが、ニューヨーク市長を3期12年務めたという実績は、「単なるお金持ち」ではないシャープな一面を醸し出している。

結果はどうか。日本時間5日朝の時点では、バイデン氏が10州、サンダース氏が3州で勝利を確実なものとしている。獲得した代議員数は、バイデン氏433人、サンダース388人である(NHKスーパーチューズデー開票速報)。

このことから、バイデン氏が一歩リードしているといえよう。サンダース氏にとって惜しかったのは、大票田であるテキサス州をバイデン氏に奪われたことである。ここを押さえることができたら、おそらく流れはサンダース一色となっていただろう。

一方、今回のスーパーチューズデーから鳴り物入りで参加を表明していたブルームバーグ氏はまったく振るわず、スーパーチューズデー翌日に撤退を表明した。

つまり、4日時点で民主党の代表候補になる可能性のある人物は、2人に絞られたことになる。後は7月の民主党全国大会で正式に指名権を獲得した者が、共和党の代表にして現職大統領のトランプ氏に挑む、という構図になるだろう。

では、このような流れは、米国の福音派にどんな影響を与えると推察できるのだろうか。筆者は、米南東部テネシー州の州都ナッシュビルを中心に、多くの福音派信者・牧師たちと懇意にしている。ナッシュビルは音楽の都市としても有名だが、いわゆる「バイブルベルト」と呼ばれる保守的なキリスト教信仰が根付く米南部において重要な都市である。彼ら全員に聞き取り調査を行うことはできないが、その主だった人たちから今回のスーパーチューズデーについて、事前に感想を聞くことができた。

次は、スーパーチューズデーの結果と彼らからの聞き取り、および米国の福音派の底流に流れている文化的宗教性から、3つのポイントに絞って彼らの動向を考察してみたい。(続く)

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青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。グレース宣教会研修牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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