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孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯

孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯(1)父なし子

2019年2月20日13時56分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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1746年1月12日。スイスのチューリッヒ湖畔の小さな借家に男の子が生まれた。外科医のヨハン・バプテスト・ペスタロッチは医師の資格を持ってはいたものの、あまり成功せず、家族を抱えて生活が苦しかったので輸入ワインを売る仕事にも手を出していた。

この家の次男として生まれた子どもは、ハインリッヒと名づけられた。食事はパンとじゃがいものスープしか食べられなかったにもかかわらず、この家庭はいつも温かく、笑い声が絶えなかった。

ハインリッヒが5歳になったとき、突然悲劇がこの家を襲った。ヨハン・バプテスト・ペスタロッチが重病にかかり、もう助かる見込みがないと医者に言われたのである。母のスザンナはこの時、ハインリッヒの下の妹を出産中で父の世話ができず、若い家政婦を雇うしかなかった。

父は自分の命があとわずかであることを悟ると、この家政婦バーバラ・シュミット(愛称バベリー)を枕元に呼んで言った。「バベリーよ、どうかこの家を去らないでおくれ。私が死んだ後、妻はどんなに苦労をするだろうか。この3人の子どもも誰かの世話になり、そのためにどんなに悲しい目にあうか分からない。おまえの助けがなければ妻はとても子どもたちを教育していくことなどできないだろう。お願いだから私たちを助けておくれ」

すると、バベリーはベッドの横にひざまずき、彼の手を握って言った。「だんな様、どうかご安心ください。このバベリーは100歳になっても奥様のもとを離れはいたしません。命ある限り、ご奉公させていただきます」

臨終の床にあるヨハン・バプテスト・ペスタロッチは、安心したようににっこり笑うと、間もなく息を引き取った。

母スザンナは、夫の死後3人の子どもを抱えて内職をしながら、家計の切りもりをしていた。彼女は生活苦の中にあっても、一言も愚痴や不満を言ったことがなく、いつもほがらかで、強い信仰を持っていた。

彼女は、この宇宙にはみんなの父親である神様がいらっしゃって造られたものすべてを愛してくださること、そして、人間はその子どもであるからお互いにいたわり合い、助け合って生きていかなくてはならないことを子どもたちに教えたのだった。ハインリッヒはこの母の影響を受けて育った。

それからまた、家政婦のバベリーもハインリッヒに強い影響を与えた。「いちばん偉い人というのはね、自分のためではなくて、神様と人のためにすべてをささげられる人なんですよ」。彼女は口ぐせのようにこう言っていた。

事実、彼女はこのペスタロッチ家の残された家族のために生涯をささげたのであった。後になってハインリッヒが「自分のことを何ひとつせずに、他人のために尽くした人」と評されたのは、このバベリーの影響が大きいといわれている。

こうして母や家政婦に守られ、兄弟仲よく育ったハインリッヒは、外に出ることを嫌って、母や家政婦にくっついてばかりいた。そしてこの頃から、あまりにも内向的な性格から奇妙な癖が表れるようになってきた。

陽気でひょうきんな真似をしては皆を笑わせていたが、何をしても失敗ばかりして、ひとつとしてまともなことができないのである。後に彼は手記の中でこう書いている。「すべて男らしい力、男らしい経験、男らしい考え方、男らしい修業をする手段が自分には欠けていた」

やがて彼は小学校に入学したが、不器用でへまばかりしているので、友達からばかにされるのだった。皆彼のことを「ばかでまぬけのハイリ」と呼んでいた。やっとできた1人の友達も、次の日には仲間と一緒になってはやし立てるのだった。

「どうしてぼくのことをいじめるの?」。彼は友達の腕をつかんで尋ねた。すると、彼はこう答えた。「それは、おまえが父なし子だからさ。父さんがいないから、女の子みたいにめめしくて、何をやってもへまばかりするんだ」

彼は泣きながら家に帰り、母スザンナの腕の中に飛び込んだ。「お母さん、みんながぼくのことを父なし子だっていじめるんだ」。彼は訴えた。すると、母は彼を抱きしめて言うのだった。

「あなたには天のお父様がいるでしょう。私たちはみんな神様の子どもなの。だから、お友達に言っておあげなさい。ぼくには天のお父様がいるよって」

ハインリッヒは、それを聞いて安心した。

*

<あとがき>

ペスタロッチは、偉大な教育者、社会改良家としてその名を知られていますが、大変に文才もあり、民衆を教化するために優れた著書を数多く残しました。しかしながら、彼が真に偉大なのは、子どもの教育に必要なのは信仰と愛だと生涯かけて語り続けたことです。

彼は次のように述べています。「信仰と愛こそは教育にとって始めであり、終わりであります」と。ペスタロッチのこの信仰は、母親のスザンナから受け継がれたものでした。彼女は夫亡きあと、貧困の中にあってもその細腕で子どもたちを育て、その心に信仰と愛を植えつけたのです。

彼女は子どもたちに2つのことしか教えませんでした。1つは、天には父なる神様がおられ、どんな時にも人間を守ってくださるということ。2つ目は、人間はこの神様の子どもで互いに兄弟同士なのだから、互いに助け合わなくてはならない――ということでした。

この信念は、ペスタロッチを生涯支え、その教育思想の土台となったのです。

次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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