「本物はすべての壁を超える」 ソウルマティックス代表・池末信さん

2019年1月22日18時01分 印刷
+「本物はすべての壁を超える」 ソウルマティックス代表・池末信さん
「ソウルマティックス」代表の池末信さん

これまで東洋人には出ないと思われていた黒人のような力強い歌声で、ブロードウェイミュージカル「レント」の日本公演出演をはじめ、マライア・キャリーや DREAMS COME TRUE、三代目 J Soul Brothers など、ジャンルを問わず国内外のトップアーティストらと共演するゴスペルグループ「ソウルマティックス」。音楽業界の第一線で活躍する傍ら、全国の中学校や高校で開く芸術鑑賞会をライフワークとし、生徒たちに「歌うことの喜びと感謝」を伝えている。日本を代表するゴスペルディレクターで、音楽専門学校の教師として20年以上にわたり後進の育成にも力を注いできた代表の池末信さんは、教会に通う熱心なクリスチャンだ。「本物はすべての壁を超える。キーワードは愛と技術だと思う。ゴスペルのメッセージは『あなたは愛されている。失敗してもいい。生きているだけで素晴らしい』という神様の本物の愛。でも、愛だけで技術がなければ、壁を超えることはできない」と語る。

3歳で両親が離婚。母子家庭で育ち、幼少期からいつも心に寂しさを感じていたという池末さん。中高生時代は勉強する目的が見えず、学校の成績はいつも悪かった。バンド活動をし、音楽に興味はあったものの、音楽大学に行くような技術や学力はなく、それでも漠然と将来は音楽を仕事にしたいという夢を抱いていた。

そんな池末青年に大きな影響を与えたのが、1985年に世界の名だたるトップアーティストたちがジャンルを超えて結集し、アフリカの飢餓救済のために歌った「ウィ・アー・ザ・ワールド」だった。プロデューサーとなったクインシー・ジョーンズの存在を知り、作曲家や編曲家という存在に憧れを持つようになる。

ジョーンズの母校、バークリー音楽大学で学びたい。貧しいながらも、週に4日間レストランで夜遅くまで働いて何とか授業料を捻出し、ボストン大学での1年間の語学留学を経て1987年、名門バークリー音楽大学に入学。苦学して映画音楽科を好成績で卒業した。

留学中、まだ漠然とした思いで勉強していた池末さんは、あるノーベル賞受賞者の言葉と出合う。「たくさん勉強し知性や教養を高める努力をして、社会や誰かのために貢献することは素晴らしい」。自分のためではなく、誰かの役に立つために勉強する。新しい発想に目が開かれた。

さらに、ドイツの詩人リルケの詩に出合い、人生の目的がより明確になった。「歌をうたって誰かを眠らせてやりたい。誰かのそばに座っていたい。うたいながらあなたを揺すってそっと眠らせてあげたい」。偶然にも、日本のゴスペルブームの火付け役となった映画「天使にラブソングを2」で、「歌なんて仕事にならない」と母親に言われた高校生役のローリン・ヒルに、先生役のウーピー・ゴールドバーグが励ますために伝えたのも、リルケが若き詩人に送った言葉だった。

「映画音楽なのでクラシックの指揮を学ぶけれど、ピアノも上手ではないし、耳もそれほどよくない。技術はないけれど、だからこそ僕にできることがあるのではないかと思った。聞く人に希望を与えるような音楽を作りたい。それから勉強が楽しくなった」

この原体験が、何よりも教育に情熱を注ぐ池末さんの根底にある。「見えている景色がすべてではなく、人は変われる。利益を優先したら、人を多く集めることはいくらでもできる。でもそうじゃなくて、長期的にしっかりと人を育てていく。そうすると、彼らが人を救える。そこには人生を懸ける価値がある」

「本物はすべての壁を超える」 ソウルマティックス代表・池末信さん
「ソウルマティックス」のメンバーたち

ある一人の高校生が、芸術鑑賞会の後でメッセージを残した。

僕は今日見に行くつもりはなかったけど、たまたま見に行って、みなさんが楽しそうに歌っているのを見て、久しぶりに心から楽しいと思える時間を過ごしました。実は、僕は自分に生きる価値がないと思っていて自殺を決めていたのですが、皆さんの歌を聞いて今日は久しぶりに楽しいと思えたので、人生の先にまだこんな楽しい時間が待っているかもしれないと思えたので、死ぬのをやめます。

訪問する学校は、北は北海道から南は沖縄まで、年間50校を超える。今は有料だが、無償で訪問できるシステムを準備しているという。教会の枠を超えて福音のメッセージを発信しながら、池末さんは日本の教会のリバイバルを夢見ている。

「今から考えると、家庭環境に恵まれず寂しい思いをして、わざと勉強ができないように神様が僕を導いてくれたと思う。人は変われる。信仰を持たない人にも通じる技術をもって、本物の愛と希望を感じてもらえる働きをこれからも続けていきたい」

ソウルマティックスは、甲状腺がんから奇跡の復活を果たした韓国人テノール歌手、ベー・チェチョルさんとも共演している。昨年7月にリリースされた、ベーさんの日本メジャー2枚目となるCD「THE SINGER II」には、編曲とレコーディングで参加した。

一昨年7月に105歳で亡くなった日野原重明・聖路加国際病院名誉院長が作詞・作曲を手掛けた「愛のうた」のミュージックビデオにも、ベーさんと共に出演している。

■ 「愛のうた」ミュージックビデオ

関連記事

クリスチャントゥデイからのお願い

いつもご愛読いただき、ありがとうございます。皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。記事の一つ一つは、記者や翻訳者、さらに編集者の手などを経て配信されているものです。また、多くのコラムニストや寄稿者から原稿をいただくことで、毎日欠かすことなくニュースやコラムを発信できています。

この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、読者の皆様にはぜひ、祈りと共に、毎月定期的にサポートする「サポーター」として(1,000円/月〜)、また単発の「サポート」(3,000円〜)によって応援していただきたく、ご協力をお願い申し上げます。支払いはクレジット決済で可能です。申し込みいただいた方には、毎週のニュースやコラムをまとめた申込者限定の週刊メールマガジンを送らせていただきます。サポーターやサポートの詳細、またクレジットカードをお持ちでない方はこちらをご覧ください。

文化の最新記事 文化の記事一覧ページ

反キリスト的だが、キリスト者として避けられない問題を突き付ける劇薬映画「ジョーカー」

ローレン・デイグル、ビルボードのキリスト教チャートで62週連続1位 ヒルソング超え歴代最長に

映画「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」に見るこの世の不条理とその先にある希望の行方

「記憶にございません!」 人生はやり直せるのか?シニア世代にこそ響く福音の語り口を示唆する秀作コメディー!

映画「ロケットマン」が描き出すLGBTの未来、そして教会との整合可能性

「祈りのちから」のケンドリック兄弟最新作「オーバーカマー」が初週3位 2週で興収20億円超

日本初の女医、荻野吟子の半生描く「一粒の麦」完成 苦境にも神の言葉胸に生きた生涯

「パリに見出されたピアニスト」に見る自己肯定感の大切さ

ヒルソングが日本語CD「なんて麗しい名」を初リリース 日本の次世代賛美の牽引役となるか? 実際に聴いてみた!

「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」に見るSNS世代の複雑さと素直さ

人気記事ランキング

おすすめのコンテンツ【PR】

コラム

主要ニュース