「オレンジゴスペル」を知ってください!(1)自殺願望から私を救ってくれた「オレンジリボン運動」

2018年9月24日19時41分 執筆者 : 打木希瑶子 印刷
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オレンジゴスペルの新ウェブサイト。ウェブデザイン学校に通う安富絢子さんが制作。サイト内の動画はクラスメイトの渡慶次法子さんが制作してくれました。お二人ともオレンジゴスペルの趣旨に強く共感し、制作後は感動すらしてしまったそうです。(画像:オレンジゴスペル)
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日本を離れて14年になります。40歳で米国に移住後、さまざまな試練に遭いました。まさか自分がうつ病にかかり、自殺願望に悩まされる毎日が続くとは夢にも思っていませんでした。人生というものは本当に何が起きるか分からない。しかし、そのお陰で私の信仰は確かなものになりました。神様は私の信仰を試したかったのかもしれません。

私は20代前半に洗礼を受けました。当時の私は西洋文化かぶれした若者で、クリスチャンになったのもその影響からでした。日曜日だけクリスチャンであることを自覚する程度の「なんちゃってクリスチャン」でした。米国で暮らすようになり、小手先の聖書理解では米国人と対等に話ができないと気付かされ、まじめに勉強するようになりました。聖書とは不思議な読み物で、理解ができてくるとさらに深く読みたくなります。また、考え方が確実に変わります。自分の人生に起きたネガティブなことも、米国人のようにポジティブに考えられるようになります。まさに神の知恵が詰まった「人間の生き方マニュアル」だと思います。

さて、前置きはこのぐらいにして、今回は長い間のうつ病生活から私を救ってくれた日本の社会運動を紹介させてください。それは、子ども虐待の防止を呼び掛ける「オレンジリボン運動」というものです。私がそもそもうつ病になったのは、ニューヨークに移住して起きた家庭内暴力(DV)がきっかけでした。私はゴスペルシンガーAとの結婚が理由で、当時11歳だった息子とニューヨークに移り住みました。息子の学校の手続きなどもあるので、結婚式よりも半年早くニューヨークに引っ越し、いろいろと準備を進めていました。Aは、慣れない海外での子育てからホームシックにかかっていた私にとても優しく接してくれました。Aの通っていた教会の牧師さんもとても親切で、私はAとの新しい生活を楽しんでいました。

しかし、その状況が一変したのは結婚式が終わった翌日からでした。Aは何かと私といる時間を避けるようになりました。私は息子の送り迎えがあり、毎朝5時起き。Aは寝ています。息子を迎えに行って仕事場に戻り、食事を済ませて家に帰ると、今度は息子の宿題を見なくてはなりませんでした。Aは夜遅くまで帰ってきません。私は先に寝てしまいます。そんな状態で会話をする時間もありませんでした。ですが、私も慣れない海外生活でいっぱいいっぱい。あまり気にしていませんでした。

「郵便物は僕が毎日チェックするから郵便受けを開けないように」とAから言われていたのですが、ある日私は大事な書類を急ぎで待っていて、郵便受けを開けて郵便物を取り出しました。すると光熱費の督促状が来ていました。「支払いを忘れているのかしら」と思い、Aに「何か督促状が来てたよ~」と伝えました。すると烈火のごとく怒りだし「なぜ、開けるなといった郵便受けを開けたんだ!」と怒鳴りました。

その日を境に、私はAとの生活にさまざまなところで違和感を感じるようになりました。Aはおかしなルールを作っていました。

「家の電話に出ないように。変な電話がニューヨークは良くかかってくるから」
「君の携帯電話は僕が契約する。君は外国人だから電話会社は契約してくれないから」
「近所の人と交流しないように。このマンションの住民は変な人が多いから」

でも、100パーセントAを信じていたので、その時は気付きませんでした。しかし、Aは私と息子のビザの書類をそろえてくれないし、家の中の物も勝手に触ると怒鳴るようになりました。休みの日も、洗濯は別々、食事も別々。掃除をしようとすると、「自分がやるから」と彼のものはまったく触らせませんでした。私のお金の管理に口を出すようになり、誰とどこに行ったのかを私に良く聞きました。Aが仕事以外で誰と会い、どこに行っていたのかを聞くと、「いちいち聞くな」と怒鳴りました。日曜日だけは一緒に教会に行くのですが、やはり礼拝が終わるとどこかに行ってなかなか帰ってきませんでした。

私の毎日の違和感は、どんどんと膨らみました。ある日、ビザの書類を用意してくれないAのことを担当弁護士に伝えました。すると弁護士は「今度、怒鳴られたら警察に通報するように」と言いました。当時の私には「何でここで警察?」と意味が分かりませんでした。しかし、弁護士は私の話からDVがあることに気付いていました。

ここまでお読みになった皆さんは「このぐらいのことでDV?」と思われたのではないでしょうか。実は日本人の多くはDVに鈍感なようです。ですので、ここで一旦、DVとは何なのかをご説明しておきます。

男女間でのDVは主に4種類に分けられるそうです。1)肉体的暴力、2)精神的暴力、3)性的暴力、4)経済的暴力です。1)は、皆さんお分かりになるでしょう。しかし、2)~4)はなかなか気付かないものです。

例えば、2)は気に入らないと大声で怒鳴ったり、「お前なんか何にもできないくせに」などと罵倒したり、「別れたら死んでやる」などと脅迫したりすることです。3)は無理に性交渉を求めたり、避妊をしなかったり、あるいはその逆で夫婦間の場合ではまったく性交渉をしないということも含まれます。4)はお金を要求したり、一方的に片方だけに働かせて自分は働かなかったり、相談もなく借金を作って背負わせたりすることなどがあります。

私の場合、1)が始まる兆しのあった日に警察に保護されたので事なきを得ましたが、そういうケースは珍しいそうです。大概は1)が起きてから、あるいは1)が何度か続き、病院に行く羽目にならないと被害者も気付かないようです。なぜなら、1)~4)は毎日あるわけではなく、普段は加害者が優しいこともあるからです。被害者は「たまたま加害者の機嫌が悪かった」、あるいは「私がバカだから怒らせてしまったんだ」と、加害者をかばうような言い訳を考えてしまい、自分を納得させてしまうからです。

私のうつ病はDVから来たと思われがちですが、実はそうではありませんでした。Aがゴスペルシンガーであり、クリスチャンであったことが真の原因です。クリスチャン同士の結婚で安心していたのにDVが起こり、もう何を信じて良いのか分からなくなったのです。教会にも怖くて行けなくなりましたし、ゴスペル音楽も聞きたくありませんでした。神様も信じられなくなりました。祈ることもできなくなりました。誰にも会いたくなくなり、ゴスペル音楽プロデューサーとしての仕事も手につかなくなってしまいました。そして2006年のコンサートツアーを最後に、プロデューサー業を休止してしまいました。

毎朝起きて「さて、どうやって死のうか」と考え、夜、息子の寝顔を見ながら涙を流し、「あと1日だけ、この子のために我慢しなくては」と思いました。そんな毎日が1年ほど続きました。

「オレンジゴスペル」を知ってください!(1)自殺願望から私を救ってくれた「オレンジリボン運動」
オレンジゴスペルの公式ロゴ。同じく安富さんのクラスメート、築地海露穂さんがデザインしてくれました。「孤独な子育て」を変える活動を心から応援したいという思いでデザインしたそうです。(画像:同上)

そんな時に見つけたのが日本の「オレンジリボン運動」でした。DVのカウンセラーから言われた一言、「虐待者も元被害者であることが多い」がきっかけで見つけたウェブサイトでした。そして、私は虐待者がなぜ存在するのかを調べるようになりました。ちょうどオレンジリボン運動が始まった2005年は、私が警察に保護された年でした。そこに神様の導きを感じました。「私のような被害者をつくらないためには、加害者をつくらなければ良いのだ」という熱い思いが込み上げてきました。何か行動を起こしたいと思いました。「神様は、私にDV問題に取り組んでほしくて自分を被害者にしたのだ!」と思ったら、私のうつ病はどこかに飛んでいきました。その後は私のプロデューサーとしての本領発揮です。気が付けば、オレンジリボン運動の総合窓口であるNPO法人児童虐待防止全国ネットワークに自己紹介のメールを送っていました。

そして、理事のお一人である高祖常子さんとのやりとりから、オレンジリボン運動が一般的に認知されていないことを知りました。「それが本当だったら大変!」と、確か千社近い企業や団体にオレンジリボン運動のことを尋ねるメールをしたのですが、99パーセントが「知らない」と答えました。これではいけないと思い、どうしたらオレンジリボン運動を知ってもらえるだろうと考えました。そして、ゴスペル音楽とオレンジリボン運動をコラボレーションした子ども虐待防止運動のPR活動「オレンジゴスペル」の企画が生まれました。「災い転じて福となす!」 神様が私たちに与える試練には、必ず理由がありますね!

「オレンジゴスペル」を知ってください!(1)自殺願望から私を救ってくれた「オレンジリボン運動」
オレンジゴスペルのメッセージを伝えるために行われる「オレンジトーク」。左から高祖常子さん(NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事)、中村華子さん(現オレンジゴスペル事務局長)、打木希瑶子(オレンジゴスペル・プロデューサー、筆者)(写真:同上)

今年も各地でオレンジゴスペルの公式イベント(コンサート&トークショー)や支援イベントが開催されます。トークショーには、国会議員や県議会議員、お寺のご住職、企業代表者、子育て支援団体の関係者など、バラエティーに富んだゲストが登場します。来日ゲストは、アンドレア・マクラーキン・メリニさん。世界的に有名なゴスペルアーティストであるドニー・マクラーキンの実妹で、彼女自身も世界中を飛び回っているゴスペルアーティストです。ソロとしての来日は初。牧師の妻として、3人の子育てをしている母親として、キャリアウーマンとして、またDV被害者として、彼女の来日は多くのクリスチャン、音楽ファン、DV被害者、子育て従事者に希望を与えるのではないでしょうか。

「オレンジゴスペル」を知ってください!(1)自殺願望から私を救ってくれた「オレンジリボン運動」
今年の来日ゲスト、アンドレア・マクラーキン・メリニ。オレンジゴスペルの目玉は、毎年米国からレコード会社と契約のあるプロのレコーディングアーティストが来日すること。彼らの歌を日本全国で聴くことができるのは貴重な機会です。(写真:同上)

共催は、NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク、後援は育児情報誌『miku』、クリスチャントゥデイ、各都道府県や自治体・医師会・弁護士会・教育委員会など多数。

以下は、9月24日現在で決まっているスケジュールです。

<オレンジゴスペル2018公式イベント>
※ イベント詳細・チケットの購入は会場名をクリックしてください。

10月25日(木)長岡市(新潟)@アオーレ長岡交流ホールA
10月26日(金)港区(東京)@赤坂教会
10月27日(土)名古屋市(愛知)@東建ホール
10月28日(日)伊豆市(静岡)@修善寺総合会館大ホール
11月3日(土)高槻(大阪)@高槻市生涯学習センター
11月4日(日)秋田(秋田)@土崎グローリアチャペル
11月7日(水)福岡(福岡)@九州キリスト教会館
11月11日(日)神戸(兵庫)@神戸芸術センター

以下は、オレンジゴスペルを応援するイベントで、講演会や交流会、音楽ワークショップなどが行われます。「オレンジゴスペルに興味がある」「オレンジゴスペルを知りたい」「オレンジゴスペルを応援したい」とお考えの教会や団体、市民グループ、企業などがありましたら、ご連絡ください。まだ開催地を募集しています。問い合わせは、メール(info@nyhcllc.com)で。

<オレンジゴスペル支援イベント>

10月30日(火)吉祥寺(東京) アンドレア・マクラーキン交流会@吉祥寺南町コミニュティーセンター
10月31日(水)福島(福島) ニューヨーク発信のオレンジゴスペルを福島でも応援します!@北信カルバリーチャペル

(続く)

オレンジゴスペル公式サイト

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打木希瑶子

打木希瑶子(うちき・きょうこ)

米ニューヨーク在住のゴスペル音楽プロデューサー。米国のスピリチャル音楽レーベル「Pure Soul Music」の代表も務め、アジア人として初めて全米最大級のゴスペルコンテストの審査員に選ばれる。日本の「オレンジゴスペル」の企画者でもあり、ゴスペル音楽を使って「子ども虐待防止 オレンジリボン運動」の啓発にも協力している。米ニューヨーク・ハーレムのベテル・ゴスペル・アセンブリー教会で、日本人訪問者のためのバイブルクラスを担当。毎年、100人近い日本人が教会を訪問している。2016年秋からは、毎週水曜日午後10時(日本時間)にオンラインでのバイブルクラス「国際人としての常識“聖書”を学ぼう」を開催している。詳細・問い合わせは「Gospel Now」まで。

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