Skip to main content
2025年7月12日10時33分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
  3. 映画

今年の映画界最大のサプライズ 「カメラを止めるな!」の魅力と特色を神学的に考察する!(2)

2018年9月2日23時51分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
今年の映画界最大のサプライズ 「カメラを止めるな!」の魅力と特色を神学的に考察する!(2)+
映画「カメラを止めるな!」大ヒット公開中。(製作:ENBUゼミナール、配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール)©ENBUゼミナール

前回取り上げたように、映画「カメラを止めるな!」は多くの観客を魅了し、現在も快進撃を続けている。並み居る夏休み大作を押しのけ、観客動員ランキングは8月26日現在6位である。一方、この作品にケチが付けられる事態も発生した。劇団を主宰していた和田亮一氏からの「オリジナルは私だ」という訴えである。

どうしてこの映画がヒットしたのか。加えて「パクリ疑惑」のような騒動をどう捉えるか。これを筆者は神学的観点から真面目に考察していきたい。取り上げるのは「聖書批評学」という概念である。

聖書批評学には「下層批評」と「高層(高等)批評」という区分が存在する。まず「下層批評」から見ていくことにする。これが「カメラを止めるな!」をめぐる「パクリ疑惑」騒動を解説する上で有用だと思われるからである。

筆者が神学校時代に出会った名著『現代キリスト教神学入門』(W・E・ホーダーン著)の定義に従うなら、「下層批評」は次のようにまとめることができる。

「下層批評はテキスト(本文)の問題をとり扱い、これまで発見された多くの資料を吟味して、どれがもっとも聖書の原典に近いものであるかを見いだしていく作業である」(72ページ)

19世紀という時代が聖書を他の書物同様に扱うことを許容し、そのルーツをたどらせることとなった。聖書は16世紀に印刷技術が生まれて以来、書物化されたが、それ以前は写本であった。つまり写本の原本をたどることで、よりオリジナルに近い「聖典としての聖書」に出会えるのでは?と人々は考えたのである。

これは前述したように、人が興味をそそられ、共感できる芸術などに出会ったとき、その源泉を求めたくなる欲求と軌を一にしている。

聖書は下層批評によって、次々とオリジナルにより近い写本が追究され、系統図が形成されていった。もちろんこれが単線であるはずがない。さらに、多くの仮説が学者たちによって生み出されたため、皆が納得できる写本系統図が完成するはずもなかった。だがこの探究の旅は「聖書学」という部門に組み込まれ、神学において不動の地位を得ることになる。

今年の映画界最大のサプライズ 「カメラを止めるな!」の魅力と特色を神学的に考察する!(2)
©ENBUゼミナール

「パクリ疑惑」は、映画「カメラを止めるな!」にとって「下層批評の営み」であるといえるだろう。私たちは映画を観て、これをおもしろいと感じた。そしてこれがどうやって生み出されたのか、当初考えられる最もオリジナルに近い存在(上田慎一郎監督)に出会う。これが最初に見いだされた写本に相当する。

しかし全国公開が決定して以降、さらに上田監督からオリジナルへさかのぼることができることを知らされた。それは、劇団で演出を担当していた和田氏からのクレームで明らかになった。「オリジナルは別のところにある」という観点で上田監督のインタビューを読み返してみると、確かに自身で「ある劇団の舞台からインスパイアされた」と言っていることに出くわす。するとどうも和田氏の方がよりオリジナルでありそうだ、という推察が成り立つ。つまり、手元にある写本よりもさらにオリジナルに近い写本が「発掘(本人が名乗り出たのだが)」されたということになっていく。

オリジナルを求めて、どちらの写本がより原典に近いかを探る営みを「下層批評」ということは上述した通りである。その観点から見るなら、まさに今起こっていることは、「カメラを止めるな!」における下層批評学的な騒動といえないだろうか。

最大のキモである「あの仕掛け」を、誰がどうやって見いだしたのかを精査する「パクリ疑惑」は、原案か原作かというお金や法律が絡む問題だけでなく、むしろアイデア重視の芸術作品全般に関わる本質的な問いを私たちに提供してくれるといえる。

キリスト業界の端くれとしてこの映画に対して私が思うことは、もし和田氏の舞台から上田監督がインスパイアされたのであれば、和田氏がどんなきっかけであのような仕掛けを思いついたのかをむしろ知りたい、ということである。

19世紀以降、同じような動機で聖書が研究された。聖書はその誕生以来、19世紀になってもなお、人々にとって魅了される書物であった。大胆に言い換えるなら、私たちが映画や小説を読んで「感動した!」と公言するのと同じくらい興味をそそられる「重要な作品」として、西洋社会に君臨し続けてきたのである。

やがて近代に入り、理性と科学の時代を迎えた。しかし聖書を科学や理性で捉えきることが難しくなる中、これを「古めかしいおとぎ話」として立ち消えさてしまうにはあまりに惜しいと思う者たちが現れ始める。

そして彼らは、むしろ聖書の本質やその成り立ちを理性と科学で証明し、その価値と意義を守ろうと考えた。だから聖書を他の文学作品などで用いる「批評学的手法」を用いて研究し始めたのである。そう、彼ら聖書学者は当時も今も、人一倍聖書に魅了されていたのである。

だがその結果、聖書の写本系統図は諸説入り乱れることとなり、結果としてオリジナルに迫る探究は仮説の域でとどまらざるを得なくなった。同時に、不明瞭な結果しか提示できなかった聖書に対し、疑いや反感を抱く者を生み出してしまったのである。

今年の映画界最大のサプライズ 「カメラを止めるな!」の魅力と特色を神学的に考察する!(2)
©ENBUゼミナール

「カメラを止めるな!」においても同じことが起こっている。どうして「パクリ疑惑」が発生したのか。それは本作が90万人もの多くの人々を一気に魅了したからである。剽窃(ひょうせつ)かどうかをめぐる問題であると同時に、多くの人々が作品に魅了されたため、主題やメッセージの本質をより身近に感じたいという欲求が、思わぬ探究の扉を開いてしまった。どうやら今のところは騒動が作品に与える影響は少なくて済んでいるようである。しかし今後、配給会社側と和田氏側の対立が深刻化するなら、裁判にも発展しかねないだろう。

そう考えると、現在起こっている騒動は、単なる剽窃事件ではなく、かつて世界規模で引き起こされた大論争(聖書を聖典として認めるかどうか)の現代(縮小)版とも言い得るのではないだろうか。

確かに「世界三大宗教の一角を占める聖典たる聖書」と本作を同次元で語るのは、あまりにかけ離れていると思う。しかし、19世紀であっても21世紀であっても、人が興味関心を抱いた対象のオリジナルを求めたくなる気持ちには変化がない。

ワイドショーや新聞で、この騒動に対して法律の専門家が出てきてあれこれコメントしているのを見ると、本当に知りたいのはそこじゃないんだよな、と思ってしまう。もし仮に法廷にこの騒動が持ち込まれるなら、「法的には」解決できるだろう。しかしそれでこの映画のおもしろさのソースが解明されるわけではない。本当にここまでにヒットを飛ばせるということは、自分がオリジナルだと主張している本人同士が気付かない「世界観」がその背後に存在しているのではなかろうか。

そのことを端的に言い表しているのが、この作品のキモである「あの仕掛け」である。次回はいよいよネタバレ全開で、作品を「高層(高等)批評」的観点からひもといてみたい。(続く)

<<前回へ     次回へ>>

■ 映画「カメラを止めるな!」公式サイト

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

  • ツイート

関連記事

  • 今年の映画界最大のサプライズ 「カメラを止めるな!」の魅力と特色を神学的に考察する!(1)

  • 映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?

  • 映画「ビューティフリー・ブロークン」 マイケル・W・スミスが牧師役で出演、臨死体験やノイローゼの経験明かす

  • やり手ジャーナリストが人生の疑問を神に聞く 映画「神様にインタビュー」

  • クリスチャンが教会で信仰を育むためのヒントが! 映画「未来のミライ」

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 見捨てない神 穂森幸一

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 第一のことを第一にする人生の祝福 菅野直基

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(7)共同体の重視 臼田宣弘

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 聖書から事実を引き出す学び「IBS」を分かりやすく説明する講座 7月12日から

  • 紛争地の宗教者らが参加、第3回東京平和円卓会議 赦しの重要性、即時停戦など呼びかけ

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.