Skip to main content
2025年6月16日19時18分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
  3. 映画

映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?

2018年8月21日22時11分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
関連タグ:パレスチナレバノンイスラム教ドナルド・トランプ
映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?+
©TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL

今年3月に行われた第90回米アカデミー賞にレバノンから史上初めてノミネートされ、第74回ベネチア国際映画祭ではコンペティション部門に出品された作品が本作である。英題は「The Insult(侮辱)」。

不法建築の補修工事を請け負っていた現場監督のパレスチナ人男性(ヤーセル)と、その建築物の住人で自動車修理工場を経営するレバノン人男性(トニー)との間に生じた些細な諍(いさか)い。やがて口論の中でヤーセルがトニーに対して発した「クズ野郎」という一言が引き金となり、2人の争いは単なる「ご近所のもめ事」を超え、レバノン国内が内包する人種、宗教、社会階層の相違を浮き彫りにしていく。そして争いの舞台が法廷に持ち込まれる中で、ついにはレバノン国内を二分する一大論争へと拡大していくのだった。

本作は、見事な法廷ドラマであると同時に、負のスパイラルに絡め取られてしまった市井の人々をアイロニカルに描くブラックコメディーの要素も含まれている。しかしその底流にある根源的な火種は、個人に帰されるものではない。

争う両者は、ヤーセルがイスラム教徒のパレスチナ難民、トニーがキリスト教徒のレバノン人であった。宗教の違いと共に、政治的・社会的弱者と強者という立場の違いもこれに微妙な影を落とす。さらに、彼らの弁護士たちも腹に一物を抱えており、ヤーセルとトニーの個人的感情の対立に加え、「法律」という油を注いで争いを激化させてしまう。

しかし法廷で両者が自らの義を主張し合う中で見えてきたのは、それぞれが抱える「民族的負の歴史」であった。

映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?
©TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL

パレスチナ難民であるヤーセルは、イスラエルによって国を追われ、難民となってレバノンで仮住まいをせざるを得ない。しかもレバノン政府は表向きパレスチナ寄りだが、マロン派(東方典礼カトリック)と呼ばれるキリスト教政権が実権を握っているため、イスラエルとの融和政策路線を崩す気配はない。そのため、難民に対する現政権の扱いは決して満足なものではない。こういった根無し草のような生き方を強いられ続けたパレスチナ難民は、常に内に怒りを抱えつつ半世紀以上耐え続けている。内に秘めた不安や恐れを隠し、「パレスチナ人」としてのアイデンティティーを必死で守っているのである。

一方、レバノン人であるトニーは、レバノン政府がパレスチナ難民を受け入れ続け、彼らの居住を認めていることを決して快く思っていない。だがそれを表立って非難することもできない。なぜなら同じパレスチナ系として、人道的にも彼らを受け入れることが「正しいこと」だからである。パレスチナ難民を非難することは、今で言うところのPC(ポリティカル・コレクトネス=政治的正しさ)に抵触してしまう。相手を厄介者だと思いながらも、厄介者扱いできず、表面的に「同胞」として接しなければならない矛盾。これが彼らの怒りの源泉であった。

だがトニーの場合、これに加えてもう一つ大きな傷を負っていることが裁判の過程で露わになる。それは、パレスチナ難民が単なる「弱者」ではなく、時として暴力を振るう側に立つ「強者」であった歴史を人々に思い起こさせることにもなった。

映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?
©TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL

そしていつしかヤーセルとトニーは、パレスチナ難民側とレバノン人側の怒りを代弁する存在へと祭り上げられていく。両者はそのうねりの高まりに戸惑いながらも、この出口のない争いに向き合わざるを得なくなっていくのであった。

彼らに勝利はあるのか。それはヤーセル(パレスチナ難民)かトニー(レバノン人)か。またそれは、「最終的な解決=希望」を見いだすことになるのだろうか。

観終わって一つの聖句が思い浮かんだ。

見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。(詩編133:1)

これは2017年1月に米国のドナルド・トランプ大統領が就任演説で引用した聖書の言葉である。さまざまな人種、民族が入り乱れる「アメリカ」という国をまとめ上げるために用いられたが、結果として米国に大きな亀裂を生み出してしまった。その流れはいまだに変わっていない。それどころか、今年5月には米国の在イスラエル大使館をエルサレムに移転させることで、中東問題の解決をさらに遠のかせ、中東世界に対しても大きな亀裂(米国・イスラエル陣営に付くか、パレスチナ側に付くか)を生じさせてしまった。イスラム勢力が各国内で安定的でないため、米国がその間隙をぬって新たな世界ルールを構築したという見方もできるが、火種をばらまいたという結果は変わらないだろう。

この聖句がヘブライ語聖書(キリスト教から見れば「旧約聖書」)にあることは重要である。なぜなら、ヤーセルもトニーもこの言葉を「聖典(経典)」として受け入れる宗教的立場にあるからである。しかしそれを成し得ない。個々人で付き合うのなら簡単だが、彼らを規定する民族、宗教、そして国民性がこれに影響を与えるとき、彼らは素直に手を握り合うことができない。これが人間の現状である。人は知らず知らずに過去に積み上げたもの(時としてそれは個人では抗〔あらが〕えない民族的な傷跡)を背負って生きるよう仕向けられているのだ。もし人が生まれながらにして罪人であるというなら、それはこのような民族、宗教としての歴史、過去、そして傷を背負ってしまうことかもしれない。

だから新約時代、イエスは弟子たちからの問い掛けに対し、次のように語ったのだろう。

弟子たちがイエスに尋ねた。「ラビ、この人が生まれつき目が見えないのは、だれが罪を犯したからですか。本人ですか。それとも、両親ですか。」 イエスはお答えになった。「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない。神の業がこの人に現れるためである。」(ヨハネ9:2〜3)

この場合、このイエスの教えと、その後のキリスト教とは切り離して考えるべきだ。弟子たちの問い掛けは「人はどうしても過去から逃れることはできないのか」という根源的な「罪性」に関するものと捉えることができる。しかしイエスは丁寧に「本人が罪を犯したからでも、両親が罪を犯したからでもない」と断りを入れ、過去の縛りを断ち切る力が神にはあることを示す。

ここに歴史的に手あかの付いた「キリスト教」という宗教ではなく、「イエスの教え」の斬新さがある。それなくしては、人は前に進めなくなってしまう。特に本作の2人のように、お互いに相手の急所を知っており、それを怒りに任せて言い放つ(侮辱する)ことで互いを傷つけ合うような場合は特に、である。

映画「判決、ふたつの希望」 中東レバノン産の傑作、愚かしくも愛おしい「人間」ドラマの行方は?
©TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL

劇中、係争中の2人が裁判所の外で遭遇する場面がある。ヤーセルの車が故障し、エンジンがかからない。その時、前を通り過ぎたトニーは車を引き返し、黙ってヤーセルの車を修理してやる。2人の間に会話はない。しかしお互いの顔に変化が訪れたことは、観ている私たちには明らかだ。

この場面で私は思わず涙してしまった。ここに、一瞬だけ過去を忘れて寄り添おうとする人間のリアルな姿がある。今の今まで法廷でののりし合っていたのに、次の場面で、分かり合うチャンスを手にした2人の男たち・・・。これこそイエスが語る「神の業がこの人に現れる」瞬間ではないか。

そう考えると、これはレバノンというどこか遠い国の話ではなく、私たちにも起こり得る些細で身近な人間模様ということもできるだろう。

中東問題、宗教間対立、人間の業・・・さまざまなことを考えさせてくれる今年一番の傑作であった。ぜひ劇場でご覧いただきたい。そして、語り合いたいものだ。

8月31日(金)TOHOシネマズ シェンテほか、全国順次公開。

■ 映画「判決、ふたつの希望」予告編

■ 映画「判決、ふたつの希望」公式サイト

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

関連タグ:パレスチナレバノンイスラム教ドナルド・トランプ
  • ツイート

関連記事

  • やり手ジャーナリストが人生の疑問を神に聞く 映画「神様にインタビュー」

  • クリスチャンが教会で信仰を育むためのヒントが! 映画「未来のミライ」

  • 60代で世界に見いだされた奇跡のピアニスト 映画「フジコ・ヘミングの時間」を観て

  • 映画「パウロ 愛と赦しの物語」ポスターと予告編解禁

  • 「ジュラシック・ワールド/炎の王国」は原作者のメッセージを忠実に受け止めた近未来版「バベルの塔物語」だ!

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 自分の考えを大切に生きよう 菅野直基

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.