「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」は原作者のメッセージを忠実に受け止めた近未来版「バベルの塔物語」だ!

2018年7月18日22時14分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」(全国大ヒット上映中、配給:東宝東和)©Universal Pictures
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2018年の夏休み映画興業が始まっている。今年のハリウッド映画はご多分に漏れず、どっぷりシリーズ物に依拠したラインナップとなっている。具体的には、「ハン・ソロ / スター・ウォーズ・ストーリー」「インクレディブル・ファミリー」「ミッション:インポッシブル / フォールアウト」、そして本作「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」である。

これに比べて日本映画はマンガ原作物が多い半面、シリーズ物はさほど多くない。やはりアニメ作家の矜持がオリジナリティーを希求しているのだろうか。

いずれにせよ、本作が公開されたことで、いよいよ映画界も「夏本番」となった。そして本作に対して多くの観客が期待しているのは、「何も考えずにハラハラドキドキさせられる2時間」ではないだろうか。確かにそういった類の映画であることは間違いない。いわゆる最先端の「ポップコーンムービー」である。だがそれは物語終盤15分で一気にひっくり返される。特にシリーズ物として、前作まで4回も同じラインで収束していた物語だけに、このどんでん返しは面食らった。ぜひこの衝撃は劇場で体験してもらいたい。

本作のサブタイトルは「Fallen Kingdom(崩れ落ちた王国)」である。これを邦題で「炎の王国」と意訳している。これが観客をミスリードする最大の要因となる。

物語は、前作から3年後。あのジュラシック・ワールドが存在していた島の火山活動が活発になり、それに伴って恐竜たちに危険が迫っていることが明らかになる。このまま島と共に恐竜たちも死に絶えるべきなのか、それとも彼らを救出すべきなのか。ここで世論が二分することになる。そもそもこの恐竜たちは、人間の科学技術の進歩の結晶であり、そういった意味で「人為的に製造された命」なのである。これを果たして他の動植物と一緒に捉えてよいのか。それともこれはあくまでも「製造物」であって、その範疇(はんちゅう)にはないのか。

「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」は原作者のメッセージを忠実に受け止めた近未来版「バベルの塔物語」だ!
©Universal Pictures

しかし、そんな高尚なテーマを真剣に追究しないのがこのシリーズの良さであり、また人気の秘密でもあった。結局のところ、登場人物も観客も恐竜が縦横無尽に暴れまわる姿をずっと見ていたいのである。

本シリーズの生みの親といえば、数年前に他界した作家のマイケル・クライトンである。彼が原作小説『ジュラシック・パーク』で訴えたかったのは、「命とは何か。科学技術の進歩によって開かれた世界は、良きにつけ悪しきにつけ、もう後戻りできない」という生命倫理に関わる社会的なメッセージであったという。しかしこの「重たい部分」を見事に欠落させたのが、第1作監督にしてその後の製作総指揮であるスティーブン・スピルバーグであった。彼の興味はあくまでも「現代によみがえった恐竜」であり、ティラノサウルス・レックス(T・レックス)を現代の町並みで動かしたい、という子どもじみた欲求であった。だから2作目に当たる「ロスト・ワールド / ジュラシック・パーク」をきっかけに、監督と原作者は仲たがいしてしまったとも伝えられている。その結果、第3作は上映時間90分という、前作までのスケール感をまったく感じさせない小粒な仕上がりになってしまった。

そして再び恐竜たちは帰ってきた。2015年に公開された第4作「ジュラシック・ワールド」は、全世界で大ヒットし、これが3部作の第1作であることも後から明らかにされた。しかしすでに4回も「管理の悪い動物園」とでも言えばいいようなストーリーを繰り返してきたのである。いくら新しい恐竜を登場させ、今まで見たこともないようなアクションをCGで生み出したとしても、そろそろ観客も食傷気味となるはずである。

そのところ見越してであろう。終盤15分からの展開は、今までの「お約束」に収まるかと見せかけて、実はそれを一気に裏切る展開となっている。ここで賛否が分かれることを、製作者側は百も承知であるようだ。つまり「あえて」そうしたのだろう。

5作目のどんでん返しも踏まえて本シリーズを見返すとき、「恐竜物」として名高い本シリーズだが、実はすべての作品で一貫して描かれてきたのは、人間の欲求の計り知れなさであることに気付かされる。どんなに危険な状況になろうとも、人のエゴや欲望は飽くことなき熱量を持って、平気で一線を越えていくということが描かれ続けてきたのである。

「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」は原作者のメッセージを忠実に受け止めた近未来版「バベルの塔物語」だ!
©Universal Pictures

5作目で今までとは異なるイレギュラーな展開を見せてくれたからこそ、逆に原作者のメッセージが確かに底流に存在していたことが確認できたともいえよう。

そう、これは近未来の「バベルの塔物語」である。旧約聖書の時代から現代、そして未来に至るまで、人は「天にも届く塔を建てよう」とし続けてきたのである。それに対する神の反応はご存じのように、彼らの傲慢(ごうまん)さをへし折る災い(互いに言葉が通じないこと)を降りかからせ、人間の目論見を根本から否定してしまうのである。その一例が本作のラストだといってもいいだろう。正直私は観終わって「こんなことになっちゃって、これからどうするの?」と思わざるを得なかった。同時に、これこそ真の「ジュラシック世界(ワールド)」だということに気付かされたのである。

本作の原題サブタイトル「崩れ落ちた王国」とは、決して恐竜たちのいた島のことではない。むしろ「自分たちはこんなこともできるんだぞ」と科学を過信した人間たちが建て上げた高い塔が崩れ落ちたのである。

今まで見たこともないスペクタクルと、ラストに待っている「重い選択」。一粒で二度おいしい本作は、観終わった後にあれこれと話したくなること請け合いである。

■ 映画「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」最新予告

映画「ジュラシック・ワールド / 炎の王国」公式サイト

青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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