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戦国に光を掲げて―フランシスコ・ザヴィエルの生涯

戦国に光を掲げて―フランシスコ・ザヴィエルの生涯(9)地獄のような都

2018年1月19日18時14分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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関連タグ:フランシスコ・ザビエル

大名行列は京都に入り、将軍足利義輝に謁見(えっけん)するためにその屋敷に向かうことになったので、3人を西大路の入り口に残して行ってしまった。一行は丹波口から四条に入るため歩き出した。

「本当に、ここは焼け野原ですね」。ベルナルドが放心したように言った。家々は打ち壊されて崩れ、火をかけられた跡が歴然としている。あちこちに放置されたままの死体が転がり、凄まじい臭気を放っていた。少し歩いて大通りに出ると、朱雀門という大きな門があったので、その隅に身を寄せ合うようにして眠った。

真夜中、鋭い悲鳴が浅い眠りを破った。目の前に髪を振り乱した老婆が、目をギラギラさせて立っている。「やい!大事な息子を返せ!」。気が狂っているのが分かった。「小太郎や・・・かわいそうにひどい目にあったな。さあ、早う帰っておいで・・・」

ザヴィエルが近寄って声をかけようとすると、いきなり老婆は短刀を振り上げて飛びかかってきた。フェルナンデスとベルナルドがとっさに彼をかばった。その拍子にベルナルドの手を傷つけ、血が流れ出た。すると老婆は血を見て逆上し、彼の手に噛みつこうとしたので、ザヴィエルが後ろに回り、その体をしっかりと抱きしめた。

不思議に老婆は静かになり、しゃがれ声で話し始めた。どうやら、ずっと以前に息子がさらわれ、人買いに売られてしまったようだった。「都には人買いがうようよおるわ。みんな金に困っておるから子どもを売ったり買ったりして食いつないでいるんや」

そこへ、もっとひどい身なりの男たちが2、3人通りかかった。彼らは片手に何かぶらさげている。よく見れば、死体からはぎ取った頭髪であった。まだ肉片のついているものが多く、3番目の男は血のしたたる生首をぶらさげていた。

「おのれ!」。老婆はその前に躍り出た。「食いぶちを稼ぐために、よくも大事な息子を売りおったな」。彼らはきょとんとしていたが、笑い出した。「気が狂っておるわ、このばばあめ!」

女は野獣のような声を上げると、短刀をかざして男たちに飛びかかっていった。それより早く、1人が太いこん棒を振り上げると、その頭に力いっぱい振り下ろした。骨の砕ける鈍い音がしたかと思うと、老婆はくずおれ、死んでしまった。

「ついでに頂いていくか」。彼らはその白髪混じりの髪をつかんだが、手を放して蹴飛ばした。「こんなばばあの髪もろても一文にもならんわ」。そう言って、行ってしまった。

一行は傍らに落ちていた汚らしいむしろを老婆の死体にかけてやり、手を合わせてから丹波口を経て北に歩き出した。そのうち立派な屋敷の前に出た。貴族の住居らしい。生垣の間から中をのぞいていると、見張りの男がやって来て怒鳴りつけた。

「何をしておる!この盗人どもが!」。そして、3人をこん棒でひどくぶちのめした。そのうち見物人がやって来てはやし立てた。「もっとやれ!もっとぶちのめせ!」。そして、馬糞を投げつけ、追い立てたので、3人は痛む体を引きずるようにして再び歩き出した。「とにかく、小西隆佐という人の家を訪ねましょう。彼が最後のカギを握っています」。ザヴィエルは言った。

それから間もなく彼の屋敷は見つかった。こぢんまりとした家であった。隆佐は礼を尽くして一行を迎え入れ、歓待した。それから、日比屋了珪(ひびやりょうけい)の書状を丁寧に読んでから、できるだけのことをしようと言った。

「私たちはキリスト教の話をするために天皇にお目にかかりたいのです。どうか紹介状を書いてください」とザヴィエルが懇願すると、隆佐はため息をつき、首を振った。

「それは無理なことです。天皇の力は今や地に落ち、実際の権力は将軍が握っています。ところが、今の将軍足利義輝は、戦のためにほとんど都に落ち着かず、各地を回っています」

そして、親戚が坂本にいるから紹介状を書いてもらい、比叡山の責任者である斎胤院(さいらくいん)を訪ねたらどうかと言った。「斎胤院は、延暦寺の本堂におられます」。そして、坂本の親戚に手紙をしたため、それを持たせて一行を送り出したのであった。

その後、彼はもう1度日比屋了珪からの書状を読み返してみた。そして、ザヴィエルがナヴァール王国の宰相の息子であり、世界最高の水準であるパリの神学校で学んだ経歴を知り、驚愕(きょうがく)に打たれたのであった。

*

<あとがき>

京都に入ったザヴィエルの一行は、そこで目にした地獄さながらの光景に愕然(がくぜん)とします。気が狂った老婆や、死体から頭髪を持ち去る盗賊などと出会い、戦争がいかに人間から良心と尊厳とを奪い去るかを彼らは痛感するのでした。

その後、貴族の屋敷の前を通りかかった際に盗賊と間違えられ、暴行を受けた一行は、ボロボロの体を引きずるようにして、ようやく目指す小西隆佐の家を訪ね当てます。隆佐は、あの豪商日比屋了珪からの手紙を読み、天皇とじかに会って話をすることは不可能であるが、日本最大の権威を持つ比叡山延暦寺の高層斎胤院を訪ねることは可能であると言い、坂本にいる自分の親戚に手紙を書いてくれるのでした。

そして、一行を送り出した隆佐は、なぜザヴィエルたちがこのように困難な旅を続けて京都まで来たのかと不思議な思いに打たれるのですが、後に彼の息子行長がキリシタン大名となり、一族そろって神に栄光を帰することになるのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:フランシスコ・ザビエル
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