Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 社会
  3. 地震・災害

「心の復興」がなおざりにされた阪神・淡路大震災 岩村義雄・神戸国際キリスト教会牧師

2018年1月17日07時40分 執筆者 : 岩村義雄
  • ツイート
印刷
関連タグ:阪神・淡路大震災岩村義雄
「心の復興」がなおざりにされた阪神・淡路大震災 岩村義雄・神戸国際キリスト教会牧師+
地震発生翌日に、神戸市長田区の野田町4丁目4・若松町11丁目交差点から東に臨んだ様子=1995年1月18日(写真:神戸市)

潮の香りがするエキゾチックな港町・神戸は、「住みたい街」として常に上位にくる都市でした。ところが、23年前の1995年1月17日、専門家を含め、誰も予想もしなかった悲劇が襲いました。「彼らは頭に塵(ちり)をかぶり、泣き悲しんで、こう叫んだ。『不幸だ、不幸だ、大いなる都、海に船を持つ者が皆、この都で、高価な物を取り引きし、豊かになったのに、ひとときの間に荒れ果ててしまうとは」(黙示録18:19)。まさに聖書の言葉の通りのことが起こったのでした。

まだ朝早い午前5時46分、内臓の位置が入れ替わるのではないかと思うほどの、突き上げるような大きな揺れに襲われました。私の自宅は神戸市垂水区にあり、家内はおびえていましたが、すぐに地震だと気付いたようで、ガスの元栓を閉めに行きました。「あなた、大変なのよ。起きて」と言われたものの、「もう少し寝かせてよ」と不精にも生返事をしました。心の中で「今寝ておかないと、数日、睡眠が取れないに違いない」と思ったからです。家の中は食器が散乱し、冷蔵庫の扉は開きっぱなしです。停電の中、家内は丹念に片付けをしていました。

午前9時半、「さあ、動くか」と自宅近くのJR朝霧駅に向かいました。当時は神戸で教会を始めたばかりで、キリスト教の宣教に情熱を持っていました。震災当日も、いつものように福音を伝えようと考えたのです。駅前で大きな声をはり上げ、福音を語りました。しかし、誰も足を止めて耳を傾けてくれませんでした。「ご通行中の皆さん、時は満ち、神の国は近付きました。悔い改めて福音を信じましょう」。寒風の中、毎朝しているように何時間も語りました。

被災し、これからどうやって生きていけばいいのかと、不安、恐怖、失望で打ちのめされている人々にとって、言葉で「愛」とか「神の国」とか「永遠の命」を伝えても、絵空事にしかすぎません。宗教の言葉などどうでもいいのです。彼らが求めていたのは、飲み水であり、毛布でした。暖を取るための器具や衣服であり、食べ物だったのです。伝道が実を結ばない無力感で、打ちのめされました。

「心の復興」がなおざりにされた阪神・淡路大震災 岩村義雄・神戸国際キリスト教会牧師
神戸市須磨区の火災跡=1995年1月18日(写真:神戸市)

1月23日には、一部のJR線が回復したため、保存食や飲料水を詰めたリュックを背負い、家内と須磨寺近辺を戸別訪問しました。日本基督教団須磨教会の牧師館は被害が大きく、牧師夫婦は共に鎮痛のあまり無表情でした。教会の英語塾で学んでいた子の家が近くにあったため、訪問しました。その子の姉が出てきて「よく来てくださいました」と、にこやかに家族全員が無事であることを話してくれました。3月10日以降は、神戸で最も古い小学校である明親小学校の避難所に夫婦で物資を届け続けました。

大地だけでなく、多くの人の人生を揺るがした地震は、私たち夫婦を、被災によって家族、家、仕事を失った人たちと「共生」し、「共苦」する歩みへと導きました。

一方、復興を推進する行政の動きはどうだったでしょうか。

震災翌日の1月18日、神戸市都市計画局は職員を集め、長田区内を自転車やバイクで巡回させました。なぜでしょうか。同区では、震災より10年ぐらい前から再開発の計画がありました。ハコモノを計画通りに建造できるか、震災でどれくらい建物が破壊されているかなどを調べるために、職員たちは必死で見て回ったのです。復興は、被災者の生活再建が基礎とされるべきです。まずはライフライン、そして経済的に体力のない零細企業や個人商店などを優先的に考慮しなければならないはずです。

「心の復興」がなおざりにされた阪神・淡路大震災 岩村義雄・神戸国際キリスト教会牧師
地震発生翌日の長田区若松3・4南北道の様子=1995年1月18日(写真:神戸市)

しかし、行政は「創造的復興」と称して、神戸空港や地下鉄、最先端医療など大型プロジェクトを優先しました。10年前の計画を実現に至らせるために、復興予算や国から資金を、多くの反対を押し切ってハコモノ造りに使いました。「創造」は本来、無から有を生じることを意味しています。阪神・淡路大震災からの復興は決して「創造的復興」とは言えません。役人の名声欲を満たしたにすぎません。「禍(わざわい)の中に福あり。今までやりたいと思っていてもできなかったが、震災によって21世紀都市をつくっていくことが可能になった」と貝原俊民兵庫県知事(当時)は語りました。

長田区は、震災による火災で焼け野原となってしまいました。後に「奇跡の復興」と言われるように、再開発事業や区画整理事業が行われました。現在、数多くの超高層ビルやマンションがそびえ立っています。「アスタくにづか」という再開発地域の中心部には、立派なハコモノができました。

震災はまだ終わっていません。現在、「アスタくにづか」1番館ではシャッターを閉めた店が目立ちます。復興とは、景観が良くなったとか、町並みが元通りになったということではありません。被災者の心のケア、つまり心の復興が重要です。高層ビルに入居する商店の主人は高齢にもかかわらず、15坪ほどの小さな店で月額7万円前後の高い管理費と固定資産税を払い続けなければなりません。しかし、店のあるショッピングモールにはお客さんはほとんど入って来ません。年金から経費を払うともう何も残らないのです。生きていくこともおぼつかない人たちに、行政は「自助努力で頑張れ」と迫ります。弱い立場の人たちへの思いやりという視点が欠けています。

日本人は、ハコモノを次々と造ることで復興を成し遂げたと思い違いをしています。復興、復旧、再建。どんな言葉を使おうと、外見より「心の復興」が鍵なのです。復興予算でカネをばらまけば、ハコモノをはじめ、大都市が復活するかのような先入観があります。現場で被災者と涙を共有していない人の発想です。明治維新以降、モノで解決する価値観はすべての日本人に共通するアキレス腱です。老後の生活、夫婦の円満な関係、子どもや家庭生活においても、カネさえ出せば、自分は人間としての務めを果たしたと考え、胸をなでおろすのと同じです。

「心の復興」がなおざりにされた阪神・淡路大震災 岩村義雄・神戸国際キリスト教会牧師
地震発生翌日の鷹取商店街(長田区)周辺の様子=1995年1月18日(写真:神戸市)

イエスご自身は、弱り果てた人々に心が揺り動かされました。

あなたがたはどう思うか。ある人が羊を百匹持っていて、その一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、迷い出た一匹を捜しに行かないだろうか。(マタイ18:12)

また、群衆が飼い主のいない羊のように弱り果て、打ちひしがれているのを見て、深く憐(あわ)れまれた。(マタイ9:36)

同じように、半死半生でうめいている人を見掛けたサマリア人は突き動かされました。

ところが、旅をしていたあるサマリア人は、そばに来ると、その人を見て憐れに思い(ルカ10:33)

被災した人々を「深く憐れむ」感情移入が大切です。「共感」する感性が求められます。行く先々で、物資などを提供することが中心であってはいけません。被災者の「縁(よすが)」「寄す処(か)」、つまり心のよりどころ、頼りとするところ、心の支えとして、「共生」「共苦」する精神態度が尊いのです。

1月17日になると、世の中では「もう何年たったか」、そして次に「もう23年もたっているのにまだ言っているのか」という声が聞こえてきます。しかし、当時40代前半だった方は、定年の年代です。60歳で被災した人は80歳を過ぎる後期高齢者です。そうした被災者に、神戸市や西宮市は、借り上げ復興住宅から立ち退きを迫る裁判を起こしています。終(つい)の棲家(すみか)から被災者を追い出すのに、行政は司法の力を用いています。

イエスがされたように、被災した人々との「対話」が生命線です。「うめき声」があれば現場に急行します。被災者に寄り添うのは役所の机の上ではできません。現場の弱った声に耳を傾けてほしいものです。寄り添うとは、徹底的に相手側の状況や都合に合わせます。「ボランティアはしたいが、今は楽しいことをしたい」という立ち位置に揺れ動くゆとりはありません。被災者と共生するのに、条件、資格、経験は問われません。ほほえみ、声の色、発する「氣」などの身振りを通じて、生き様を示すだけでよいのです。何々運動などではなく、個々の活動に基づきます。生き様ですから、誰もができます。

孤児、夫を亡くした女性、高齢の独居者との縁こそが、いかなる政策や改革よりも優先すべきことではないでしょうか。もちろん被災地へ行きたくてもいけない苦しみを「共苦」するのも「苦縁」です。「苦縁」なる「よすが」は、時間や金銭、仕事の「ゆとり」とも無縁です。災害大国日本で今、地縁や血縁、同じ学び舎(や)の卒業生だけでは救済できない貧者への責任が求められています。

◇

岩村義雄

岩村義雄

(いわむら・よしお)

2001年の9・11以降、難民支縁、被災者に寄り添う「ボランティア道」や「田・山・湾の復活」を展開。これまでに150回を超える東北ボランティアや熊本豪雨の被災者支援を行い、千葉県布良(めら)、北海道厚真(あつま)町、岡山県真備(まび)、福岡県松末(ますえ)、熊本県益城(ましき)、東遊園地(神戸市役所隣)で炊き出しを行ってきた。海外では、ネパール、シリア、北朝鮮など10カ国以上で孤児施設の開設に取り組んでいる。神戸国際支縁機構代表、「みんなで『死』を考える会」会長、エラスムス平和研究所所長、「阪神宗教者の会」代表世話人、「カヨ子基金」前代表、神戸新聞会館講師、神戸国際キリスト教会牧師。著書、資格、表彰はなし。

関連タグ:阪神・淡路大震災岩村義雄
  • ツイート

関連記事

  • 兵庫県:あの日から23年 阪神淡路大震災追悼のつどい~語り続けよう 祈り続けよう~ 1月17日

  • 阪神・淡路大震災から22年(1)教会は地域の中で重要な役割を果たす

  • 阪神大震災で被災のステンドグラス、宮崎教会に移設され20年振りの輝き

  • 阪神・淡路大震災20年、思い新たに被災地で追悼記念行事

  • 阪神大震災から19年、牧師・信徒ら回想 被災の中でも神の恵み

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.