ISに破壊されたイラクの町の再建を カトリック慈善団体が2億円超の募金開始

2017年8月17日17時08分 翻訳者 : 野田欣一 印刷
+ISに破壊されたイラクの町の再建を カトリック慈善団体が2億円超の募金開始
荒廃したモスル市内を、手をつないで歩くきょうだい2人=2017年6月14日(写真:EU / ECHO / Peter Biro)

世界最大のカトリック慈善団体であるコロンブス騎士団(本部・米国、英語)が、過激派組織「イスラム国」(IS)によって破壊されたイラクの町の再建のために、200万ドル(約2億2千万円)の募金を始めた。キリスト教徒の避難民を最も多く受け入れている、イラク北部のカトリック教会の教区を通して、カレムルシュ(カラムデス)という町の復興を支援する。現地は「今を逃せば後はない状況」だという。

「イラクの人々と話して分かるのは、今後2カ月が重要な局面だということです。今、避難民たちを故郷に帰らせないと、国を離れていく人々がどんどん増えてしまいます」。コロンブス騎士団のアンドリュー・ウォルサー広報戦略企画担当副部長は、クリスチャンポストの取材にそう語った。「イラクのキリスト教人口は以前の150万人から落ち込み、今は南部にわずか20万人ほどが残っているという、のっぴきならない状況です」

ISが拠点としていた北部の都市モスルから、南に30キロほど離れたカレムルシュには、かつて数百世帯のキリスト教徒が住んでいた。しかし2014年夏、ISがモスルやニネベ平原の大部分を占拠したことで、その地域のキリスト教徒たちは、他の宗教的少数派と同様、家を捨てるか、あるいは信仰の故に殺されるかという選択を迫られた。

数十万人の住民は、ISから逃れるために故郷を捨てる選択をした。一方、国連の難民キャンプでは迫害の恐れもあるとして、多くのキリスト教徒は、カルデア典礼カトリック教会のアルビル教区が運営する難民キャンプに避難した。

カレムルシュは昨年10月末、イラク軍によりISから解放され、今年7月にはハイダル・アバディ首相がモスル奪還を宣言。対IS作戦は大きく前進した。そして今、これらの地域から避難していたキリスト教徒たちは、故郷に戻ってイラク国内に留まることを選ぶか、あるいは国外に移住するのかを決断しなければならない、重要な時期を迎えている。

ウォルサー氏は、「(イラクの)キリスト教は転機を迎えています。避難民たちがこの2カ月の間に、故郷に戻って自分の家を再建するという希望を見いだせなければ、そして2カ月以内に、集団で故郷へ戻るなどの大きな動きが起きなければ、イラクのキリスト教は以前の状態には戻れなくなってしまうと言われています」と話す。

コロンブス騎士団は、この200万ドルの資金調達キャンペーンを、1つの成功例を受けて始めた。現地キリスト教徒の再興を支援しているアルビル教区に対しては、ハンガリー政府がすでに200万ドルを寄付しており、キリスト教徒が大部分を占めていた町テレスコフの再建に大きな助けとなっていたのだ。このハンガリー政府の支援により、千世帯以上が故郷のテレスコフに戻ることができたという。

ウォルサー氏は、「ハンガリー政府のしたことは効果があったのです。これまでの数週間で、ハンガリー政府がイラク北部にしたことが成功したのを見てきましたから、私たちは、内容にもまた方法にも大きな自信を持っています」と言う。

ウォルサー氏によると、カレムルシュの元住人の多くは、クルド人自治区の主都であるアルビルで避難民として暮らしている。

「カレムルシュのような町が『実質的に人が暮らしている状態になる』ことが、次々に起こらなければなりません。ISによる脅威がある前には、キリスト教徒の家庭750世帯が住んでいたのですから」

「今後数百世帯がすぐに移動することになるでしょう。それほど悲惨でない家庭であれば、さらに早く復帰できるでしょう。逆に、ひどい状況に置かれている家庭の場合には時間がかなりかかります。400から600世帯は早々にでも復帰できるでしょう。8月までには確実にそうなると思います」

「これは本当に良いやり方だと思います。カルデア教会教区方式とでも言いましょうか。建築家と、再建するために共に働いてくれる構造設計者がいます。家を再建する人には必要な資材費が与えられます。自分が査定したら、それを設計者がチェックし、署名してそれを承認し、教区(ここではコロンブス騎士団)の支援で資材を手に入れに行くのです。再建後、設計者は戻ってきて、安全であることを保障する署名をしてすべてを終えるのです」

コロンブス騎士団は、個々の教区や教会、団体に対して1口2千ドル(約22万円)を寄付するよう呼び掛けている。2千ドルは、1世帯をカレムルシュに再定住させるのに必要となる金額だ。

ウォルサー氏によると、カレムルシュやテレスコフの他に、かつてはイラク最大のキリスト教徒の都市であったカラコシュのような町においても、アルビル教区を通じて復興の努力がなされている。しかし、ISによる被害を受けたニネベ平原一帯を再び安定した状態にするには、5千万〜1億ドル(約55億〜110億円)の資金が必要と見られている。

「このようにして町々を支援し、そこに暮らす人々を増やしていくには、当分の間は1期間に1都市のモデルで行くことになるでしょう」とウォルサー氏は話している。

一方、イラクからキリスト教徒の町や村がなくなると、そこにイランからイスラム教シーア派の人々が入り込んでくる危険性があると、懸念を示す人々もいる。

中東に関する多くの論説を執筆している保守派のケネス・ティマーマン氏が、米政治ニュースサイト「ザ・ヒル」(英語)に7月寄稿した論説によると、約10万人規模のイラン軍が、モスルとクルド人自治区の周囲にある「アッシリア人キリスト教徒の町や村を占拠」しているという。

※この記事はクリスチャンポストの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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