「パリ協定」破棄はトランプ大統領の暴挙?英断? 共和党保守派ヘリテージ財団の見解

2017年6月3日21時09分 執筆者 : 青木保憲 印刷
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トランプ大統領を支持し、彼の決断のソースとなったウェブサイト「The Daily Signal」のスクリーンショット

トランプ米大統領は1日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を発表し、またまた注目を集めている。米国の民主党陣営は早速非難の声明を発表し、これにリベラル系のマスコミも同調する流れとなっている。日本もこれに追随する報道が繰り返されており、「環境問題をまったく無視するひどい支配者」というレッテルを貼りつけ、ネガティブな発言を繰り返している。

一方、私の書評コーナーで紹介した渡瀬裕哉著『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』では、この辺りを見越したように、トランプ政権を実質的に支援しているヘリテージ財団、および共和党保守派の意見を詳らかにしている。本書の中で、彼らの最新情報を得るためのウェブサイトが掲載されている。

私は本書を読んだことがきっかけとなり、このサイトからメルマガをもらえるよう登録した。サイト名は「The Daily Signal」。彼らは「既存メディアの信憑性(しんぴょうせい)が下がっている」と指摘し、「従来の主流派メディアに換わる新しい媒体が米国には必要だ」と自らの存在意義を語る。そしてご丁寧にほぼ毎日、トランプ大統領の動向を発信している。これを読みながらいつも思い知らされるのは、日本や米国のリベラル系メディアが伝えない「トランプなりの真実」があるということである。

私は決してトランプ寄りの発言をしたいわけではない。しかし、日本で映し出されるトランプ像は、「物事の理(ことわり)をまったく理解しない暴君」でしかない。これでは彼について、また彼によって導かれている米国について、偏った見解になってしまうことは否めない。そこで、今回あえて、トランプ大統領を支持し、彼の決断のソースとなった「The Daily Signal」の主張を紹介したい。実際の記事をご覧になりたい方はこちら(英語)

6月1日(日本時間では2日)、早速メルマガが届いた。トップニュースはやはり「パリ協定離脱」であった。どうしてトランプ大統領がパリ協定から離脱を決めたのか、その理由(要旨)を4つ簡潔に挙げてみよう。

①パリ協定はコスト高で、ほとんど効果のないものである。

この協定を守るなら、米国の製造業は廃れ、職は失われ、2035年までに2兆5千万ドルもの損失を被ることになる。そもそも中国はこれを本当に守れるのか? この協定はトランプ大統領が政権を終えたのちまで効力を持つものとなる。だから意を決してこれに反対したのだ。

②パリ協定を守るなら、高額な税金を無駄遣いすることになる。

協定に従うなら、2020年まで毎年1千億ドルの税金をこのために充てなければならない。すでにオバマ政権下で10億ドルが議会の承認なしに支払われている。すでに無き政権の不当な縛りをどうして次政権が引き継げようか? そんなことはできない。

③撤退は、確かなリーダーシップを示すことになる。

パリ協定からの離脱によって、多くの弊害が起こるとメディアは伝えているが、それは針小棒大である。中国の大気汚染と米国の環境状況は一緒に語れない。米国はたとえ協定から撤退しても今までと変わらない関係を諸国と持っていくし、リーダーシップを執り続けることになろう。

④撤退は米国のエネルギー競争にとって益となる。

現在エネルギー開発は年間60億ドルかかっているが、2040年にはこの3分の1にまでコストを削減できるだろう。おおよそ1億3千万人がまだ電気のない生活を強いられている。ここに血税を用いなくても次世代エネルギーは届けられるようになるだろう。だから今、パリ協定に縛られて国民の税金を無駄にすることは控えるべきである。

いかがであろうか? 手前勝手な言い分ととるか、それとも「なるほど」を納得する部分があっただろうか? ヘリテージ財団とは、1980年代に宗教右派がレーガン政権を支援した際に生み出されたシンクタンクである。彼らの主張は基本「小さな政府」であり、個々人に与えられた権利を最大限用いることで世の中は良くなる、と考えることになる。

当初、トランプ候補を支持することはなかったが、ペンス副大統領とセッションズ司法長官の口利きで、政権支援を決めたという。彼らが一番気にしているトピックスが「税金」であることが分かるだろう。これは、私たち外部の者には間接的にしか分からない「痛み」だといえよう。

政府樹立の経緯から、そもそも指導管理を嫌う風潮と、神の名の下に生み出された統治機構を敬う傾向が、常に拮抗(きっこう)してきた。その中で育まれた国民性は、恐らく日本人のそれとは異なるだろう。だからトランプ大統領を支持する層が生み出されてくるし、「The Daily Signal」の主張を受け入れる土壌が確かに存在するのである。

「パリ協定」の締結を「前政権のやったこと」として済ませていいのか、今から20年以上も先のことを、いかにも「未来を見通しています」と主張することは可能なのか、いろいろ問題は噴出してくるだろう。しかし、その現状を「一方の側のリアリティー」としてストレートに発信しているものを知らないまま、PC(ポリティカル・コレクトネス)的見地から発言するだけでは、こちらも一種の無責任と言わなければならないだろう。

私は、今後もこのサイトからのメルマガを受け取り、分析を続ける必要を感じた。特に、環境問題という切迫した状況に対し、諸説が噴出している現在、果たして「パリ協定」が唯一の道なのか、それとも各国で新エネルギー開発を推進した方がいいのか、正直分かりかねる。

ただ1つ分かることは、両者の言い分が俎上(そじょう)にあってこそ、こちらも意見を出せるということだ。しばらくこの問題がワイドショー、ニュースを席巻するだろう。両者からの言い分をしばらく拝聴することにしよう。

青木保憲

青木保憲(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院を卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科卒(修士)、同志社大学大学院神学研究科卒(神学博士、2011年)。グレース宣教会研修牧師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(2012年、明石書店)。

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