Skip to main content
2025年10月25日23時52分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
脳性麻痺と共に生きる

脳性麻痺と共に生きる(19)「福祉が嫌い」という言葉にある苦い記憶 有田憲一郎

2016年11月3日00時58分 コラムニスト : 有田憲一郎
  • ツイート
印刷
関連タグ:障がい

15年前のことになると思います。数人の仲間同士で集まり、たわごとのない世間話で盛り上がっていたとき、「私、福祉が大嫌い!」、そう言った仲間のことを思い出すことがあります。それは障碍(しょうがい)者施設でのことでしたが、偶然にもその集まりの中には障碍を持った者は僕だけだったと思います。あまりにも突然の言葉に、その場にいた数人の仲間も衝撃の一言に聞こえたかもしれません。

「福祉が嫌い」と言ったのは、いろんな障碍を持った方と関わりを持っている健常の方です。ついポロリと本音を話してしまったのでしょう。今でも忘れられないような鋭い顔をして、慌てたように「今のことは内緒だからね。絶対、誰にも言ったらダメだからね」、そう言ったのです。その時、僕は「誰にも話すわけないじゃん」と心で思いながら、念を押されたことに苦笑いで答えたような気がします。

そのような言葉が出てくるのには「きっと何かある」と僕は何かを察してしまいました。仲間には言いませんでしたが、その時僕は「いいね。面白い。その話、もっと詳しく聞きたい」、心の中でそう思いました。

仲間は、僕が福祉嫌いなどと知りません。僕も今まで福祉嫌いということを誰にも話したことがありません。「嫌だな~」、内心そう思い、気分も晴れない中、僕は誰にも悟られないように、そして気付かれないように平常心を保ち、ニコニコして福祉活動や障碍者運動に参加していました。

ですからもちろん、僕の前で「福祉が嫌い」と言った仲間は、きっと僕が福祉は最高で大好きだと思っていて、福祉嫌いな障碍者だとは少しも思っていないと思います。

どんな思いで仲間は「福祉が嫌い」と言ったのでしょう。仲間はそれを聞いた僕はきっと驚きビックリしただろうと思ったと思います。しかし、僕はその反対でした。内心では「よくぞ言ってくれた」と思っていました。それは、きっと心のどこかで「この言葉が聞きたかった」という思いがあったのかもしれません。

しかし仲間はそれ以上、語ることができませんでした。そしてそれ以降、「福祉が嫌い」の言葉を封印してしまったように話してくれなくなってしまいました。

介助が必要な重度障碍者で、福祉のサービスを受けながら生活している僕が、カミングアウトのように「福祉が嫌い」というと、ほとんどの方は驚かれてしまうと思います。そして、福祉サービスを提供していただいて生活している僕は、立場上「福祉が嫌い」などとは口が裂けても言えないところでもあり、自分の中で気持ちの葛藤が続いているのです。

そもそも、僕が福祉嫌いになってしまったのには理由があります。それは、幼少時代から青年時代にかけての苦い経験からでした。その苦い経験が大人になった今でも心の奥で引きずっていて忘れたくても忘れることができないでいて、気持ちの整理もつかないまま、今なおトラウマのようになっています。そして、福祉とか障碍者ということを聞くだけでも、なぜだか恐怖感を覚え、精神的に気持ちが重くなり、気分が晴れなくなってしまうこともあるぐらいです。

話は30数年も前にさかのぼります。10数年前に他界した実の父が仕事の営業中に交通事故に遭ってしまい、入院をすることになりました。当時、僕は小学校1、2年生だったと思います。両親は共働きでしたが、父が入院をし「体力的にも俺が家にいて家事をしながら、憲の面倒を見た方がいいかもしれない」と、病室で両親は今後のことを話し合ったそうです。

そんな話をしているとも知らずに、子どもというのはのん気なものです。5つ離れた弟と僕は、骨折して痛がっている父のベッドの上でピョンピョンと楽しく跳ねてはしゃいで遊んでいたそうです。

父が退院して、わが家では、母が働きに出て、父が専業主夫という夫婦逆転の生活が始まりました。父は、養護学校(今の特別支援学校)に通う僕を、朝6時にスクールバスの停留所まで送っていき、しばらくして今度は弟を保育園まで送り、洗濯や掃除などの家事仕事をこなしていたのでしょう。

母はスナックの経営者で、多くの従業員さんを雇い、3軒の店を経営していました。夜はお店で働き、日中は事務仕事やお客さんの接待などで本当に寝る暇もなく、1日中働きずくめで家族のため懸命に働いてくれていました。

そのように忙しく働いてくれていた母ですが、どんなに過酷で疲れていても、弟や僕の保育園や学校行事などには必ず参加してくれました。今思い出しても、言葉にできないくらい感謝でいっぱいです。

そんなふうに書いて終われば「どこにでもあるようなごく普通の幸せな家庭だなぁ」と思われるかもしれません。しかし、この生活によって、やがて僕だけでなく、弟や母までもが福祉嫌いになりました。

専業主夫となった父は、弟と僕を保育園や学校などに送り出した後、家のことや家事仕事は後回しにし、朝から晩まで毎日のように障碍者福祉のボランティア活動に出掛けていってしまうようになります。家庭優先とか仕事優先などという言葉を聞くことがありますが、父にとっては家庭や家族よりボランティアが優先になっていました。そして、それが悲劇の始まりでした。

父は、僕が小学校4年生の時から高校2年生の時まで、PTAの役員や会長をしていました。また周囲からおだて上げられ、全国の障碍児教育改革や福祉改革に力を入れていました。そのため父は、何やかんやと毎日のように僕が通う学校に行っていたのです。父は「いってらっしゃい」と僕を送り出してくれるのですが、学校に行っても父と顔を合わせる状況にあったのです。(つづく)

<<前回へ     次回へ>>

◇

有田憲一郎

有田憲一郎

(ありた・けんいちろう)

1971年東京生まれ。72年脳性麻痺(まひ)と診断される。89年東京都立大泉養護学校高等部卒業。画家はらみちを氏との出会いで絵心を学び、カメラに魅力を感じ独学で写真も始める。タイプアートコンテスト東京都知事賞受賞(83年)、東京都障害者総合美術展写真の部入選(93年)。個展、写真展を仙台や東京などで開催し、2004年にはバングラデシュで障碍(しょうがい)を持つ仲間と共に展示会も開催した。05年に芸術・創作活動の場として「Zinno Art Design」設立。これまでにバングラデシュを4回訪問している。そこでテゼに出会い、最近のテゼ・アジア大会(インド07年・フィリピン10年・韓国13年)には毎回参加している。日本基督教団東北教区センター「エマオ」内の仙台青年学生センターでクラス「共に生きる~オアシス有田~」を担当(10〜14年)。著書に『有田憲一郎バングラデシュ夢紀行』(10年、自主出版)。月刊誌『スピリチュアリティー』(11年9・10月号、一麦出版社)で連載を執筆。15年から東京在住。フェイスブックやブログ「アリタワールド」でもメッセージを発信している。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:障がい
  • ツイート

関連記事

  • 脳性麻痺と共に生きる(18)障碍者は違う世界なの?パラリンピックと「バリバラ」から考える 有田憲一郎

  • 脳性麻痺と共に生きる(17)なんだかパラリンピックが忘れられているような 有田憲一郎

  • 脳性麻痺と共に生きる(16)水族館で感じたもの 有田憲一郎

  • 脳性麻痺と共に生きる(15)相模原殺傷事件から3週間を経て今感じていること 有田憲一郎

  • 脳性麻痺と共に生きる(14)相模原障がい者施設殺傷事件:障碍者から最も大切なものを奪った 有田憲一郎

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 約250校の子どもたち数千人が「主の祈り」を唱和 英イングランド

  • 「迫害下にある教会のための国際祈祷日」 WEA・JEAが呼びかけ

  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • トルコ、5年余りで外国人キリスト教徒200人以上を国外追放 「国家安全保障」理由に

  • イラクで2つの歴史的教会が再開 「イスラム国」の支配から8年

  • 現代における「御言葉の飢饉」 法規制や不足で1億人のキリスト教徒が聖書入手できず

  • 日本聖公会首座主教・主教会が「京都事件」の書簡発表 元牧師が性加害、教区が2次加害

  • 神の前に高ぶらないで生きよう 菅野直基

  • 聖書のイエス(20)「どのわざのために」 さとうまさこ

  • ワールドミッションレポート(10月24日):トルコ 静かな霊的復興―教会を生む教会へ

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • 日本聖公会首座主教・主教会が「京都事件」の書簡発表 元牧師が性加害、教区が2次加害

  • 現代における「御言葉の飢饉」 法規制や不足で1億人のキリスト教徒が聖書入手できず

  • トルコ、5年余りで外国人キリスト教徒200人以上を国外追放 「国家安全保障」理由に

  • 中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

  • 冷めた心に注意しよう! 万代栄嗣

  • イラクで2つの歴史的教会が再開 「イスラム国」の支配から8年

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(233)宣教は主の備えから始まる 広田信也

  • 【インタビュー】ブトロス・マンスール世界福音同盟新総主事 「平和をつくる者、それが私の使命」

  • やなせたかしさんの妻・小松暢さんはクリスチャン、朝ドラ「あんぱん」きっかけに判明

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 米メガチャーチ牧師、当時12歳の少女に性的虐待 罪認め6カ月収監へ

  • 「ジーザス・ムーブメント」指導者チャック・スミス氏のディボーションブック邦訳出版

  • 日本キリスト教病院協会第5回総会 人材確保や人材育成などを討議

  • 英国国教会トップのカンタベリー大主教に初の女性、ムラリー主教の任命を国王が承認

  • 聖公会保守派、「グローバル・アングリカン・コミュニオン」設立を宣言 決定的な分裂に

  • 「ザ・チョーズン」がギネス記録、イエス・キリストの生涯描いた長編連続ドラマ

  • イラク人難民のキリスト教徒、フランスでライブ配信中に殺害される

  • 中国当局、政府非公認教会の著名牧師ら約30人を拘束 米国務長官が非難声明

編集部のおすすめ

  • 「神の言葉を全ての人に」 日本の聖書普及事業150年で記念式典・レセプション

  • 教団・教派超えて神の平和求める 戦後80年で「日本国際朝餐祈祷会」初開催

  • イエスの統治を祝う祭典「ジーザス・レインズ」が10周年 ラップ賛美など新しい試みも

  • 「聖書を読まなかったら、今の自分はない」 元ヤクザの進藤龍也氏と山崎純二氏が対談

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.