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使徒の働き味読・身読の手引き

使徒の働き味読・身読の手引き(76) 宮村武夫牧師

2013年12月12日17時42分 コラムニスト : 宮村武夫
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私は生まれながら
使徒の働き22章22節~29節

[1]序

今回は、使徒の働き22章22~29節を味わいます。直前の22章1~21節には、エルサレムの民衆に対して展開された、パウロの弁明が記述されていました。

21節の「行きなさい。わたしはあなたを遠く、異邦人に遣わす」との、主イエスのパウロに対する使命のことばは、イスラエル人と異邦人の絶対的区別を主張する人々にとっては、神経を逆なでする言葉であり、21章28節、「こう叫んだ。『イスラエルの人々。手を貸してください。この男は、この民と、律法と、この場所に逆らうことを、至る所ですべての人に教えている者です。そのうえ、ギリシヤ人を宮の中に連れ込んで、この神聖な場所をけがしています』」を確証するものと受け取られます。これが直接の引き金となり、民衆はさらに激しく怒り、混乱します(22章22節後半、23節、「……このとき声を張り上げて、「こんな男は、地上から除いてしまえ。生かしておくべきではない」と言った。そして、人々がわめき立て、着物を放り投げ、ちりを空中にまき散らすので」)。

その中で、千人隊長は彼なりの処置をとるため命令を発します。この混乱を背景に、パウロは自分のローマ市民権を中心に主張を重ねます。今回の聖書箇所を、①パウロの弁明に対する反応と、②パウロのローマ市民権主張の両面から見ます。

[2]パウロの弁明に対する反応

(1)民衆の反応
主イエスのことばの引用(21節、「すると、主は私に、『行きなさい。わたしはあなたを遠く、異邦人に遣わす』と言われました」)が引き金となり、エルサレムの民衆は激しく怒り、パウロの存在そのものを抹殺しようと息巻くのです(22節)。さらにパウロ抹殺の意志を発言するだけでなく、行動で意志を表示します(23節、「そして、人々がわめき立て、着物を放り投げ、ちりを空中にまき散らすので」)。

このようにして、二十数年前、主イエスがエルサレムの宮で、「人々がわたしについてのあなたのあかしを受け入れないからです」(18節)とパウロに語られたことばは、二十数年後のこの時点でも成就したのです。

(2)千人隊長の反応
民衆が事実を確証することなく、一方的断定からパウロを殺害しようとしている事態から、千人隊長はパウロを安全な場所に救出し、事実を詳しく調べます(24節、「千人隊長はパウロを兵営の中に引き入れるように命じ、人々がなぜこのようにパウロに向かって叫ぶのかを知ろうとして、彼をむち打って取り調べるようにと言った」。参照・21章34節)。

千人隊長のこの態度はそれなりに評価されるべきものです。しかしその調査方法については、パウロを「むち打って取り調べ」(24節)ようとしたとルカは記述しています。非ローマ人や奴隷に対して取られた、当時の取り調べ方法です。千人隊長は、それなりに評価されるべき面と共に、彼の生きた時代の制約の中にも捕らわれていたのです。

[3]パウロ、ローマの市民権を主張

(1)劇的瞬間に
取り調べを担当する兵士たちが、鞭で打つためにパウロを縛り、残忍な取り調べを開始しようとする、まさに劇的瞬間に、その現場の責任者である百人隊長に向かい、「ローマ市民である者を、裁判にもかけずに、むち打ってよいのですか」(25節)と、パウロは自分のローマ市民権を効果的に主張します。パウロの凄みのある声が聞こえませんか。

(2)千人隊長との対話
百人隊長の的確な判断と千人隊長への報告。恐らくギリシャ人と思われる千人隊長は、「私はたくさんの金を出して、この市民権を買ったのだ」(28節)と、ローマ市民権がいかに尊いものか強調します。これに対して、「私は生まれながらの市民です」と、父祖の功績に対し市民権を与えられた由緒ある家族の出身であるとパウロは明らかにします。パウロはローマ市民権の価値を理解し、それを福音宣教のため活用します。

[4]結び

前回確認したように、パウロは、「私はキリキヤのタルソで生まれたユダヤ人です」(22章3節)と、ユダヤ人の意識に堅く立ち弁明しました。

しかも同時にローマ市民権を生まれながら与えられていることも活用します。さらに、「国籍は天にあり」との意識に基づく生活と生涯に徹しています。

パウロの実例は、現代日本に生かされる私たちの献身の道がいかにあるべきか、つまり生まれながらに与えられているものを、国籍が天にある者として、日本と世界の関係を重んじながら生かす道に、それぞれの場で徹することを指し示してくれます。

◇

宮村武夫(みやむら・たけお)

1939年東京生まれ。日本クリスチャン・カレッジ、ゴードン神学院、ハーバード大学(新約聖書学)、上智大学神学部修了(組織神学)。現在、日本センド派遣会総主事。

主な著訳書に、編著『存在の喜び―もみの木の十年』真文舎、『申命記 新聖書講解シリーズ旧約4』、『コリント人への手紙 第一 新聖書注解 新約2』、『テサロニケ人への手紙 第一、二 新聖書注解 新約3』、『ガラテヤ人への手紙 新実用聖書注解』以上いのちのことば社、F・F・ブルース『ヘブル人への手紙』聖書図書刊行会、他。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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