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聖ニコラスの生涯

サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(30)歴史の振り子

2025年10月15日16時07分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(1)孤児ニコラス+
聖ニコラスの肖像画(画:ヤロスラフ・チェルマーク)

紀元303年も終わろうとするある日。ディオクレティアヌス帝から4番目の勅令が出された。これは最も過酷な勅令であって、「告訴されなくても、キリスト教徒らしいとうわさされるだけで追跡し、逮捕し、直ちに拷問にかけるべし」というものであった。

知事のセルギオは、これを見てつぶやいた。(ううむ。いくら何でも皇帝陛下はやり過ぎではないかな。こんなことをしていると、反対に足をすくわれるぞ)

そして彼は、ニコラスたちに言った。「皇帝からまた新しい勅令が出ましてな。これほどひどいものは今までなかった。でも、あなたがたの命は、このセルギオが保証する。州知事の友人としてありますから、政府の役人たちの間にもまかり通っています」。ニコラスは、知事の好意に心から感謝した。

このセルギオは、公平に物事を見ることができ、温かな心を持った人だった。彼は、自分の部下である兵士たちをかわいがり、故郷を遠く離れて兵役に就いている者がいれば心にかけ、何くれとなく世話してやっていた。

それであるから、彼らは皆、親のようにセルギオを慕っていた。ニコラスも彼に対していつの間にか友人のような親しみを持ち、2人は屋敷内で共にくつろぎ、いろいろな話をするのだった。

そんなある日のことである。知事が公務に出たあと、ニコラスが一人祈っていると、使用人たちのこんな会話が耳に入ってきた。

「しかし、弾圧もここまでくると、皇帝陛下は狂気にとりつかれておいでじゃないかと思ってしまうな。キリスト教がお嫌いなのはよく分かるが、信者を捕まえては処刑し、女や子どもも容赦しないというじゃないか。あの方には情けというものがないのだろうか」

「ほとんどの教会が襲撃を受けて全滅だそうだ。ルキア地方はもちろん、ガラテヤ、フリギア地方にも手が伸びて、コロサイ、ラオディキア、フィラデルフィアも全滅。それから海沿いにミレトス、エペソ、スミルナも根絶やしにされ、信者はひとまとめにされてニコメディアに送られ、処刑を待っているということだ」

「特にアカイア(ギリシャ)はひどかったらしい。コリントの教会は土台も残らないほどやられて、そこの司教は火刑。信徒たちは残らず闘技場で見せ物にされ、野獣に食い殺されたそうだ。その中には小さい子どももいたそうじゃないか。今に天罰が下るぞ」

ニコラスは、衝撃のあまり立っていることができなかった。(ああ、コリントの教会。アポロ先生も、自分に「天使の微笑」のレシピをくれたアンゼラとその家族も殉教したのだ)。彼は涙とともに、殉教した人々のために心からなる祈りをささげたのだった。

歴史には、振り子のような作用があるといわれている。ある思想や政治政策が極端な方向に走り、極みまで行ったとき、ちょうど振り子が逆の方向へと動くように、別の力が働いて押し戻すのである。

このたびは、ディオクレティアヌス帝が出した過酷な禁教令が、クリスチャンたちにとって有利に働くことになったのである。――というのは、この4番目の勅令が出されるや、キリスト教と関係のない一般市民たちの間に不満の声が上がり、それがクリスチャンに対する同情に変わっていったのである。

「いくら何でも、東ローマ皇帝はやり過ぎじゃないか。こんな勅令が出されると、ユピテル神やローマの神々を信仰するわれわれの立場だって危うくなるぞ。今度ひっくり返りゃ、別の宗教を信じている者が血祭りに上げられるんだ」

市民の一人がこう言うと、別の者も共鳴した。

「信仰や文化のそれぞれ違う民族や人種が一つ都に住んでいることが、ローマ帝国の繁栄の基であり、誇りだったじゃないか。互いに干渉し合わないからこそうまくいっていたのさ。それが、勅令が出て宗教が強要されるとなると、今度はわれわれが首に縄をつけられて引っ張っていかれかねないさ」

これらの人々は、互いにひそひそと皇帝の悪口をささやき合った。そして、それはいつしか不当な弾圧を受け、権力の犠牲になっているクリスチャンたちに対する同情に変わり始めた。その声は徐々に国内で高まってゆき、国外にも広がり始めた。そして、ついには市民の間で「クリスチャンをかくまってやろうじゃないか」という動きが出てきた。

そのうちに、町の有力者たちが自分たちの広大な屋敷の中に彼らをかくまったことから、これに倣って一般市民も先を争うようにしてクリスチャンたちを助け、保護するようになった。そして、互いに接触し合ううちに、キリスト教に教化された者も数多くいたのである。

*

<あとがき>

ルキア地方の長官セルギオは、ローマの軍人としては珍しく寛大で心優しい人物で、彼は部下の兵士たちや屋敷の使用人から慕われていました。そんな彼のもとに、ディオクレティアヌス帝から4度目の勅令が届けられます。これはかつてないほど過酷なもので、キリスト教徒と判明した者に対しては、その場で逮捕し、拷問にかけるべしという今までに類を見ないものでした。

しかし、歴史の流れというものには不思議な働きがあるもので、ある思想が世界を一定の方向に押し流すと、必ずその反動というものが戻ってくるものです。この行き過ぎたディオクレティアヌス帝の勅令は、多くの人の怒りと反感を買い、民衆は、それでなくてもキリスト教徒の弾圧に対して苦々しく思っていたところだったので、一致団結して「キリスト教徒をかくまってやろう」という声が広がっていったのでした。

実に歴史の流れというものが、人間の背後にあってこれを支配される神の御手の中にあることを思うものです。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)刊行。また、猫のファンタジーを書き始め、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。20年『ジーザス ラブズ ミー 日本を愛したJ・ヘボンの生涯』(一粒社)刊行。現在もキリスト教書、伝記、ファンタジーの分野で執筆を続けている。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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