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保育の再発見

保育の再発見(10)「統合保育」ではなく、個性を守り育てる「総合保育」へ

2023年6月28日22時29分 執筆者 : 千葉敦志
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子ども/children/kids/幼稚園/kindergarten/保育園/nursery+
※ 写真はイメージです。(写真:acworks)

第5回で、乳幼児の記憶の範囲について触れた際、記憶の範囲を「時間」「空間」「定員」という3つの観点でお話しました。前回紹介した魚の世界のいじめについても、これらの観点で考えると合点がいきます。魚(メジナ)のいじめは、広い海では起こらないものの、狭い水槽に入れると起こってしまうというものでした。この場合は「空間」、あるいは、その空間の中にいる魚の「定員」が問題となっているのです。

保育においても、物理的な「空間」、またそこにいる子どもたちの「定員」が問題となることがあります。具体的には、保育室の狭さや、保育士1人当たりが担当する子どもの数といった問題で、最近特にクローズアップされています。

広ければよいというものではない

保育室の狭さについては、最近は小規模保育事業やマンションなどの一室を利用した保育施設が増えていることから、問題にされることもあるようです。しかし、保育室は単純に広ければよいというものでもありません。

私は学生時代、旅館で泊り込みのアルバイトをしていたことがあります。使っていない大広間で寝ることになりましたが、これがとても寒々しいものでした。数十畳もあるだだっ広い部屋で真ん中に布団を敷いて寝るのは、何とも心細いものです。結局、壁に沿って布団を敷いて寝ました。

多くの場合、どこの保育施設でも、保育室は可能な限り整理され、保育士がおもちゃを出さない限りは何もないただの広い空間です。しかし、この状態のままでは、子どもたちは何もすることがなく、無目的になってしまいます。

このように、「空間」は広ければよいというものではなく、そこに何もなければストレスがたまりやすい場となってしまうのです。物理的な広さや狭さだけを見るのではなく、子どもたちが心理的に安心できる「空間」を考え、用意することが大切です。

配置基準で子どもを見るのは無理?

次に、最近取り沙汰されている「配置基準」を見てみましょう。現在の配置基準は下記の通りです。

  園児数 保育士数
0歳児(乳児) 3人につき 1人
1、2歳児 6人につき 1人
3歳児 20人につき 1人
4、5歳児 30人につき 1人

これは、保育施設を運営するのに必要と定められた、子どもに対する保育士の数です。この配置基準で子どもたちを常時、無策な状態で見るというのであれば、それは不可能でしょう。しかし、ここに保育士としての腕の見せ所があります。

一斉に何かをやろうとすれば、当然、子どもたち一人一人のスキルの格差が表面化します。速くできる子はさっさとこなして暇を持て余す一方で、遅い子はなかなかうまくいかず、ヒステリーを起こしたり、そもそも何もしないでぶらぶらしたりするでしょう。こういう状態になってしまうと、配置基準通りに保育士が配置されていても対応が難しいところがあります。

しかし、もしこの配置基準でクラスを全く維持できないというのであれば、保育士としては問題です。仮に、保育士1人当たりが見る子どもの数を配置基準の3分の2にしても無理だと思う人は、実際に無理でしょう。それではもはや、保育士というよりもベビーシッターのレベルになってしまわざるを得ません。

子どもの「待てる時間」を有効に使って「余裕」を作る

では、どのようにすれば、この配置基準で子どもたちを見ることができるのでしょうか。それは、子どもたちの「時間」と「定員」をうまく組み合わせることで、可能となります。ここでの「時間」とは、子どもたちが「待つことのできる時間」で、「定員」とは、子どもたちが「関係を構築できる人数」となります。

双子を授かったある母親が子育てのコツを語っていました。それは、順番にするというものです。例えば授乳をするとき、「今日はあなたが後ね」と言いながら、片方の子に授乳をしつつ、もう片方の子には待ってもらうのだそうです。考えてみれば当然のことですが、この母親は、わが子の「待つことのできる時間」をうまく用いることで、見事に2人の子どもを育てているのです。

保育においてもこのように、子どもたちの「待つことのできる時間」を用いることで、「余裕」を作っていくことが大切です。

また、保育士1人が何十人もの子どもを一度に直接相手にすることはできませんが、子どもたちは発達段階に応じて、自分たちで遊んだり、何か作業をしていれば一緒にそれをしたりすることができるようになります。これが、子どもたちの「関係を構築できる人数」を用いることになります。保育士が全てするのではなく、子どもたち同士でやらせていくのです。

国の配置基準が定められたのは、こうした意図をくんでいるからです。このように子どもたちの「時間」や「定員」、また、子どもたちが心理的にも安心できる「空間」をうまく使いこなすことが、保育においては何より大切なのです。

一番大切なのは見極め

前述の双子の母親は、「大丈夫、だんだん分かってくれるようになるんです」と言いながら、子育てのコツをあっけらかんと教えてくれました。また、「頑張り過ぎないこと、わが子は分かってくれると信じること」が秘訣だとも話していました。言われてみれば、なるほどと思います。結局は、子どもたち一人一人のスキルや発達度合いを見極めつつ、それらを伸ばしていくことが子どもに対する支援であり、その見極めが一番大切だということです。

例えば、手を挙げることができれば、名前を呼んだときに「は~い」と手を挙げるように教えることができます。動き回ることができるようになれば、「おいで」ができるようになります。物陰で踏ん張る様子が見えてくれば、それに先んじて「うんち?」と聞くこともできるでしょう。

このように、子ども一人一人のスキルや発達度合いを見極め、声がけやタイミングを計ることを「個別の保育計画」と呼びます。個別の保育計画には、その子の癖なども織り込まれなければなりません。すねる子、キレる子、気にしない子・・・。それぞれの子がさまざまな「個性」を持っていますので、それらを踏まえた保育計画にする必要があります。

個性を守り育てることが「個別の保育計画」の目的

最近では、「障害も個性」という言葉が出てくるようになりました。障害を隠すのではなくて、積極的に開示し、見える化し、共に生きていく社会を目指していくことがこの世の主流な意見になってきました。

その結果、世の中はユニバーサル化しなければいけないということがいわれています。ユニバーサルとは、「全てに共通の」「普遍的な」という意味の言葉です。「老・若」「男・女」「障害・健常」「病気・健康」「国籍」といったあらゆる点において、それぞれの立場にある全ての人が快適に生きていくことのできる世界を目指していくことが求められる時代になりました。大多数の平均値である「普通」に合わせていくことは避けなければならない時代になってきているのです。

かつて「統合保育」という言葉が保育界で話題になったことがありました。以前は分離されていた障害児などの保育を、通常の保育に「統合する」ことが理想とされたのですが、その結果として起こったことは、人間の規格化でしかありませんでした。

しかし、オリンピックに義足の選手が出場したり、実業界で障害者の経営者が活躍したりするような時代を迎えるようになると、障害者を一般社会に統合するよりも、障害者らしさを生かしてもらった方が建設的であることに否応なしに気付かされたわけです。

「統合保育」から「総合保育」へ

「障害も個性」である以上、障害までいかないさまざまな「個性」をどう大切にするかということも、これからの保育界で大きなテーマになるべき問題です。そして、見えてくることは、「画一的な集団一斉保育」は時代に適合しなくなってきているということです。

今まで、いろいろな問題に触れて考えてきました。生活環境、それまで生きてきた時間・精神的空間など、さまざまな要因がその人の個性と密接に関係していることを私たちは改めて知らなければなりません。

21世紀に入ってはや20年余りを経てもなお、各地域には色濃く方言やその地の伝統が残っています。その一方で、外国人を当たり前のように日常の中で目にするようになりました。また、各地域の主要産業などによって、人々の生き方やニーズは大きく異なってきます。

このような時代にあって、保育は「統合保育」ではなく「総合保育」となることが求められており、多様な人々が、豊かな関係性の中で弱点や欠点を補い合い、互いに尊重しながら生きていく世界を模索するものになってきているのです。(続く)

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※ 本紙では通常「障がい」と表記していますが、本連載では文意などを考慮し、「障害」と表記しています。

◇

千葉敦志

千葉敦志

(ちば・あつし)

1970年、宮城県生まれ。日本基督教団正教師(無任所)。教会付帯の認可保育所の施設長として、保育所の認定こども園化を実施。施設長として通算10年間、病後児保育事業などを立ち上げたほか、発達障害児や身体障害児の受け入れや保育の向上に努め、過疎地域の医療的ケア児童の受け入れや地域の終末期医療を下支えするために、教会での訪問看護ステーション設置などを手がけた。その後、これまでの経験に基づいて保育所等訪問支援事業を行う保育支援センターを立ち上げた。現在、就労支援B型事業所「WakeArena」を立ち上げ、地域の福祉増進を目指している。

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