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さくら時計

さくら時計(11)血の縄 星野ひかり

2022年2月17日18時35分 コラムニスト : 星野ひかり
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さくら時計(1)プロローグ 星野ひかり+

私は、間もなく60歳の定年を迎えようとしておりました。ちょうどその頃、母の連れ合いが亡くなったと知らせを受けました。もう、生きている身内のいない人だったそうで、母と私、そしてたくさんの趣味の仲間たちに見送られ、天国に旅立ったのです。司式は、いつの間にか母と男性が通っていたという教会の牧師先生が執り行ってくださったのです。

私はしばらく見ない間に、背骨の丸くなっていた母と暮らすことを計画し、母に話を持ちかけました。しかし、母は首を横に振るばかりでした。そうこうしているうちに、まるで連れ合いの後を追うようにして、母は突然天に召されたのでした。

ろう人形のような亡きがらに、母の好きだったダリアの花を敷き詰めて、母を見送りました。ろうのように硬くなった体には、母の霊はひとかけらも残っていないことが見て取れました。しかし、この世で、泣き、笑い、涙し、歯を食いしばって、母と共に長く生きてくれたしわだらけの体はいとおしく、別れがたいものでした。私は母が深く愛した男性の墓に、母を葬りました。

私は定年後も、引き続き働かせてもらおうと考えておりましたが、母と男性が遺したものを整理しなければならず、いったん定年を機に仕事を辞めることとなりました。長く務めた病院では、患者さんや看護師さんたちから、大きな花束に写真がプリントされた食器、寄せ書きなど、抱え切れないほどのプレゼントをもらい、入り口まで見送りの列ができたほどでありました。

私はそれからもしばらくは、贈られたものをテーブルに並べ続け、感慨深く見つめて暮らしておりました。長く働いてきた月日のことを思い返しては、目じりを濡らしてばかりでした。足元には大きなバケツにお湯を張り、ラベンダーやミントなどハーブや花をたくさん浮かべて、その中に足を浸しておりました。お湯の蒸気が立ち上っては、草花の良い香りが顔中を包みます。これが長く働いた、私自身へのねぎらいでありました。

私の存在を気遣ってのことでしょうか。母と男性は、最後まで結婚することはありませんでした。しかし、生前から心を尽くして私に何かしらを遺せるように計らってくれていたことを、母の死後の整理から知ることができました。

思えば、働きづめの人生でした。「少しゆっくりしてみようかな」。私は草花の香りに包まれながら、ふーっと息を吐きました。

しかし、毎日が祝日のような日々にはなかなか慣れることができませんでした。そこで、今まで仕事を理由に行くことができなかった教会の学び会や祈祷会の予定を、手帳に書き入れてみました。疲れがたまって、または猫の病院や庭仕事を理由にして休みがちだった日曜礼拝にも、欠かさず出席してみようと思いました。

教会の学び会は、皆でお茶菓子を持ち寄って楽しく、祈祷会は、神様の光あふれた神聖なものでありました。次第に、今までなかなか仲良くなれなかった婦人たちとも、少しずつ親しくもなれました。日曜礼拝でも、たくさんの人が声をかけてくれるようになりました。こんな私の家に、遊びに来たいと言ってくれる人もおり、緊張してお茶菓子を用意して招くこともありました。そして、神様の話に花を咲かせ、共に祈り合う幸せも知りました。

毎日が祝日のようであった毎日は、毎日が ‘聖日’ へと、少しずつ変わっていったのです。イエス様と共に暮らし、共に自然の豊かなこの街を散策し、賛美が口からほとばしる、そんな毎日に変わっていったのです。

「主はわたしの牧者であって、わたしには乏しいことがない。主はわたしを緑の牧場に伏させ、いこいのみぎわに伴われる。主はわたしの魂をいきかえらせ、み名のためにわたしを正しい道に導かれる。たといわたしは死の陰を歩むとも、わざわいを恐れません。あなたがわたしと共におられるからです。あなたのむちと、あなたのつえはわたしを慰めます。あなたはわたしの敵の前で、わたしの前に宴(えん)を設け、わたしのこうべに油をそそがれる。わたしの杯はあふれます。わたしの生きているかぎりは必ず恵みといつくしみとが伴うでしょう。わたしはとこしえに主の宮に住むでしょう」(詩篇23篇)

わたしの唇は歌いました。いろいろな所に住みました。お金のある所にも、ない所にも、騒がしい所にも、静かな所にも、人の冷たい所にも、人の優しい所にも。骨がきしむほどに疲れても、働かなければならないときもあり、体を横たえて休めるときも与えられました。あなた様は決して優しいばかりではありませんでした。本当の牧者であるあなた様は、盲目の私が一人で迷うことのないように、ときに杖を使い、むちを使って、私を導かれて来られました。煮えたぎるように熱い涙を流して、私のために泣かれました。煮えたぎるように熱い血を流して、私のために死なれました。

イエス様、あなた様以外に、私に道しるべはありませんでした。あなたは縄でつなぐように、けっして私をあなた様と離れないようにされました。その縄は血の縄、あなた様が流された、私を買い取られるために流された、契約の血の縄でありました。

あなたの愛が伝わって、私の足は震えます。その中で私は、愛とは血であり、命であり、‘契約’ であることを悟るのです。

さくら色の花びらで縁取られたさくら時計の中で、幼子の私はイエス様に問いかけます。「イエス様、熱いわ?」私にはしっかりと、イエス様と離れることのないように血の縄がくくられているように、そして、それはイエス様の愛ほどに熱く感じられました。「イエス様。いつから私をこのようにされておられたの?」

イエス様はほほ笑んで、おっしゃいました。「この世界の基(もとい)が据(す)えられる、そのずっと前からだよ」。私は涙を流しました。「イエス様、うれしいわ」

私はそう言って、イエス様の足元に伏しました。そこは柔らかな青草が見渡す限りに生えており、草の香りは優しく、まるでイエス様の香りのようでありました。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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