Skip to main content
2025年8月31日08時25分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
さくら時計

さくら時計(8)目まい 星野ひかり

2022年1月6日22時41分 コラムニスト : 星野ひかり
  • ツイート
印刷
さくら時計(1)プロローグ 星野ひかり+

私は大みそかも働いておりました。大みそかと言ったら、家族や親族が集い合い、和気あいあいと歌番組でも見て、ぜいたくな料理をつつき合い、日付の変わる頃には年越しそばと除夜の鐘、そんなにぎやかな日でしょうか。幼い頃から、母は大みそかも変わらずに働きに出ておりましたし、そのうち母が男の人と暮らし始めてからはなおさら遠慮して、その家にはほとんど行くことがありませんでした。ですから大みそかは、この国中の家族が楽しげに過ごしていることを感じながら、寂しく過ごすつらい日でした。いつからか、できることなら大みそかにも仕事を入れて、忙しく過ごす癖がついていました。病院の清掃人という仕事でも、人が入りたがらない大みそかにシフトを入れると、それはありがたがられました。大みそかと三が日は、特別手当も出るのです。私のかき入れ時とでも言いましょうか。

病院には、長く病を患って、ずっとここで暮らしているような人もおりました。まるで自分の家のように、仲間を作って楽しげにリビングでテーブルゲームをして、看護師さんや私にも家族のように接してくれます。そんな人たちも、今日ばかりはどこかしら、寂し気でありました。

‘大みそかも働くあの人は、きっと独り身なのだろう’ 患者さんさえ、そんなふうに察したかもしれません。病院には、大みそかにも家に帰れない者同士の、痛みを分かり合うような優しさがあふれていました。独り身の女には、まだまだ風当たりの冷たい時代でありましたが、優しさやあわれみもまたあったのです。

長く酒席で働いてきたことを隠すように、私は化粧もせずに、髪も地味に編みました。しかしそれでも隠し切れない何かはあったのではないでしょうか。しかし、誰もが気付かぬふりをしてくれる優しさが、この職場にはありました。私はいつからか、自分の家のようにこの病院を愛し始めておりました。

患者さんから洗濯物を預かって、晴れた日の屋上で干していると、また、洗濯室の畳のあがりで畳んでいると、まるで愛する家族のために働く母のような気持ちになりました。家族を持つ幸せの片りんを感じておりました。それを一人一人に返しに行って、声を掛けて部屋の掃除もします。長くここにいる人たちは、まるで自分の部屋のように小さな仕切りの空間に、好きなものを寄せ集めて暮らしていました。それを大切に扱って、掃除をします。「甘いジュースの飲み過ぎじゃない? 体を悪くしてしまうわよ」。ゴミ箱にたまったジュースの缶を袋に詰めながらそんなふうに声をかけると、「許してよ、それしか楽しみがないんだから」。気恥ずかしそうに答えてくれます。そんなささやかなやりとりが、幸せでした。病のある人たちは、神様に砕かれた人のように、弱さを認めざるを得ず、だからこそ優しく、憐(あわ)れみ深い人が多かったと思います。

そして日曜日は礼拝に行きました。そうです、私は教会に通っていたのです。

さくら時計がゆっくりと針を回す中で、私はイエス様を見上げました。「私はね、教会がなかなか好きになれなかったわ。皆立派な人のように思ったの」。イエス様はうなずいて「そうだったね」と言いました。「そして、人をうらやんで苦しかったわ」。イエス様は優しくじっと見つめてくださいました。

やきもちは怖いものでした。自分に与えられた神様の恵みを見えなくさせ、他人が受けている ‘よいもの’ ばかりに目が行くのですから。神様はおっしゃいました。「わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全にあらわれる」と(2コリント12:9)。幸せな家庭や素敵なおうち、安定した仕事に健康や財力、私には ‘あったほうがよい’ と思われるものがたくさんありました。しかし、欠乏の中にこそ主は働かれ、その欠乏の中にこそ主の力が満ちあふれるというのです。そして、あなたに対して十分なものはもはや与えている、そう主は言われるのです。それは、どんな時もであるのでしょう。例えば、私が一番欠乏を感じていたときでさえ、主は「十分であった」と言われるのでしょう。それでも私は「足りない!」と叫んでばかりいたのです。

また、私の心には母への怒りがちりちりと、くすぶっておりました。私は胸に火を抱え、やけどの痛みに苦しみました。イエス様を、神様を愛していると言いながらも、その愛が私の痛みのすべてを覆おうとしていても、私は胸に火を抱え、その愛が染み渡ることを自ら拒否していたのです。それは ‘あなたの愛は十分ではなかった’ と、神様に言っているのと同じことであったのですから。私が、「わたしの力は弱いところにこそあらわれるのだ」と言われた神様の言葉を本当に分かるには、長い月日がかかりました。

掃除人として働き、教会に通い、私は目まいがするほどのまぶしさを感じておりました。ずっと暗闇を好んで、もっと暗いほうへと足を進めてきた人生でした。そのような中で私は少しずつ、明るいほうへと歩き出していたのです。ですから、一歩一歩行くごとに、光のまぶしさに目まいを起こし、倒れそうになることもありました。しかしその光は、‘イエス様のまばゆさ’ でしかなかったのです。

ある日、雲一つないほどに晴れた日のことでした。私は病院の屋上で、かご3つ分の洗濯物を干しておりました。青空に包まれて汗をかき、石鹸の甘い匂いを嗅ぎながら洗濯物を干していると、「自分はなんて幸せなのだ」と思いました。その日の帰り道、道端の野花たちがほほ笑みかけているように思いました。帰ったら、ミルクのたっぷり入ったアイスティーを入れて、賛美歌を流そうと思いました。聖書は「ヨハネの福音書の17章」を読みましょう、そしてイエス様の愛を蜜のように飲み干しましょう。そう思って、幸せでした。

しかしなぜでしょう。家に帰った私は、アイスティーも入れず、賛美歌も流さず、聖書の棚の文具入れからカッターナイフを取り出すと、自分の腕を傷つけていたのです。

床にへたり込んで、血のにじむ腕を見つめました。この痛みの中にこそ、私の故郷がある気がしました。‘痛み’ はなつかしい景色を見せてくれます。泣き叫んだあの日、路上にうずくまったあの日、帰る家もなかった夜、誰にも届かない叫び…。私はつつと涙を流しながら、‘久しぶりにタバコを吸いたい’ と思いました。

まぶし過ぎる。そう思って目まいがするとき、私は袖で隠れる腕の上のほうを、傷つけていたのです。そして安心していたのです。そう、この痛みこそ私の道であったのだ、と。それは忘れがたいほどに痛みうずき、癒やされるにはまだまだ月日が必要でした。

その時は気付いていませんでした。私が自分を傷つけるたびに、イエス様も共に傷ついていたのだということに。イエス様は私たちと共に泣き、共に傷つくお方です。私はどれほど、あなたを傷つけてきたでしょうか。十字架につけてもなお足りず、あなたを傷つけ続ける私とは、一体何者なのでしょうか。

イエス様は、傷だらけの神様です。この世にもろい肉の体を持って生まれてきて、その命が絶え果てるまで私たちに傷つけられ、今もなお、私たちと共に傷つかれ、そのすべてを負われる神様です。

それでも私たちを愛するという、この方は、一体何というお方でしょうか。(つづく)

<<前回へ     次回へ>>

◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • さくら時計(7)来られた方 星野ひかり

  • さくら時計(6)聖夜の祈り 星野ひかり

  • さくら時計(5)万華鏡 星野ひかり

  • さくら時計(4)きりきり舞い 星野ひかり

  • さくら時計(3)かげろう 星野ひかり

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • ウクライナ、米大衆伝道者フランクリン・グラハム氏に勲章授与 人道支援を評価

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • 「森は海の恋人」の畠山重篤さん、気仙沼市の名誉市民に

  • ワールドミッションレポート(8月31日):ガーナのリグビ族のために祈ろう

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(10)抗黙示思想 臼田宣弘

  • イエス様と共に働く 菅野直基

  • 主キリストの大きな力で癒やされよう 万代栄嗣

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

  • 進藤龍也氏×山崎純二氏対談イベント「神様との出会いで人生が変わった」 埼玉・川口市で8月30日

  • 米福音派の重鎮、ジェームス・ドブソン氏死去 フォーカス・オン・ザ・ファミリー創設者

  • 花嫁(31)神に従う者の道 星野ひかり

  • 21世紀の神学(30)伊藤貫氏が提唱する古典教育とセオセントリズムの復権 山崎純二

  • 「森は海の恋人」の畠山重篤さん、気仙沼市の名誉市民に

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(前半)悪魔の起源 三谷和司

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(11)「苦しみ」が始まるまでの経緯(後半)救いの計画 三谷和司

  • 「信教の自由を脅かす」 旧統一協会の解散命令巡り特別集会、西岡力氏らが登壇

  • 牧師を辞めた理由は? 元牧師730人を対象に調査 現役牧師や信徒へのアドバイスも

  • 新約聖書学者の田川建三氏死去、89歳 新約聖書の個人全訳を出版

  • キリスト教徒が人口の過半数を占める国・地域、この10年で減少 米ピュー研究所

  • N・T・ライト著『わたしの聖書物語』が大賞 キリスト教書店大賞2025

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(10)「苦しみ」から「苦しみ」へ 三谷和司

  • 日本キリスト教協議会、戦後80年の平和メッセージ キリスト者の戦争加担にも言及

  • 福音派増えるベネズエラ、大統領が「マーチ・フォー・ジーザスの日」制定 全国で行進

  • 米カトリック教会で銃乱射事件 ミサ参加中の付属学校の子どもら2人死亡、17人負傷

編集部のおすすめ

  • 「20世紀のフランシスコ・ザビエル」 聖心女子大学で岩下壮一神父の特別展

  • 「罪のない赤ちゃんを殺さないで」 東京でマーチフォーライフ、中絶の問題を訴え

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.