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さくら時計

さくら時計(6)聖夜の祈り 星野ひかり

2021年12月9日17時23分 コラムニスト : 星野ひかり
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さくら時計(1)プロローグ 星野ひかり+

「ねえ、お兄様、天のお父様はなぜあれほどに私を打ったの?」私は悲しげな瞳で、イエス様を見上げました。イエス様もとても悲しそうな顔をして、「おまえをただ、深く愛しておられたんだよ」とほほ笑みました。「でも、耐えられないほどだったわ」。するとイエス様は分厚い本を開いて、子どもに読み聞かせるようにそれは優しく読んでくださったのです。

「あなたがたは訓練として耐え忍びなさい。神はあなたがたを、子として取り扱っておられるのである。いったい、父に訓練されない子があるだろうか。だれでも受ける訓練が、あなたがたに与えられないとすれば、それこそ、あなたがたは私生子であって、ほんとうの子ではない」(へブル12:7、8)

そして本を閉じると私の小さな頭を抱き寄せてくださいました。「ほんとうの子だから…」そうつぶやく私に深くうなずかれました。私は母の胎のうちにあり、まだ私の日が1日もないときから、父の娘として愛されて造られたことに思いをはせました。

さくら色の花びらで縁取られた、さくら時計がくるくると回り、私がこの麗しい兄であり、荘厳な神様であるイエス様に出会った日へと、時計の針は回っていったのです。

*

電話をかけると、長いコールの後で留守番電話になりました。私はメッセージを残さずに電話を切って、折り返しの電話を待ちました。そわそわとして爪を噛み、部屋中を歩き回りました。もう1週間も、彼と連絡の取れぬままでありました。「何か事故でもあったのでは」そう不安に思って吐き気がしました。私は彼の住所も、勤め先も、詳しくは知らないままであったのです。確かなのは、この携帯電話の番号だけでありました。

細い糸にすがるように、携帯電話のボタンを押しました。それでも、どうしてでしょう。彼の声が受話器から聞こえることはなかったのです。

窓を開けて、マンションの前の道路に彼の姿を探しました。冬が押し寄せるようにこの街をも覆っており、氷をはらんだ冷たい風が吹き抜けました。窓を閉めると、椅子の背から毛糸のガウンを取り、からだを守るようにくるまりました。私の手のひらは、お腹の下のほうにくだり、わずかな体温で下腹部を温めておりました。

「だいじょうぶよ、何も心配はいらないの。あなたのお父さんはそれは素晴らしい人なんだから」。そう語り掛けると、ほほ笑みがもれました。「だいじょうぶ」。口に出す言葉に励まされ、温かいお湯を沸かしました。

道端でふと立ち止まって、携帯電話のリダイヤルを押しました。そしていつものように留守番電話のメッセージを最後まで聞くと、静かに電話を切りました。

「だいじょうぶよ」。お腹に手を当てて、そうつぶやいて街を見渡すと、商店も色とりどりの電飾で輝いている今はクリスマス間近でした。私は輸入雑貨のお店をガラス越しに見つめながら、瞳を輝かせました。ツリーなんて飾ったことはないけれど、今年は1人ではないクリスマスです。小さな頃に母がささやかながらにケーキとチキンで祝ってくれた日のように、私もこの子のためにクリスマスのお祝いをしてあげたい。そう、輸入雑貨のお店のドアを開きました。キャンドルやツリーにいろいろな形のオーナメント。店中をぐるりと見渡しながら、私の瞳もいろいろな色できらめきました。

抱えきれないほどの荷物を抱えて、小さなツリーを肩に担いでお店を出ました。すると美しい賛美歌が、バイオリンで奏でられているのが聞こえました。私はその音のする人だかりへと誘われて、正装したひげの男性がバイオリンを肩に乗せ、奏でる音楽に耳を澄ませました。すると、トナカイの被り物をした男性が歩み寄り、1枚のビラをくれたのです。それはこの街にあるキリスト教会の、クリスマスの日に行われるキャンドルナイトのお知らせでした。‘オルガンとバイオリンによる祈りの調べ’ と銘打って、無料のコンサートが開かれるそうでした。そういえば、クリスマスとはキリスト教のお祝いの日であったことに思いをはせました。キリスト教に悪いイメージはありませんでした。イエス様を信じて、貧しい人や病の人のために命をささげた人の話も聞いたことがありましたから、この神様を信じる人は、貧しい人も、知恵のない人も、病気の人も偏り見ることのない優しい人たちだと思っていました。私はありがたくビラを受け取って、畳んでしまうと、家路へと向かいました。

家に帰ると、担いでいた小さなツリーを下ろして、窓のそばに置きました。紙袋から外国から渡ってきたかわいらしいオーナメントを取り、一つ一つ丁寧に飾り付けました。ツリーのてっぺんに金色に輝く大きな星を飾って、出来上がりです。

「甘く焼かれたチキンとケーキでお祝いしましょう。素敵なクリスマスにしましょうね」。お腹に手を当ててほほ笑みました。そして「きよしこの夜」を鼻歌で歌いました。歌詞を知らなかったのです。

クリスマスイブも、電話は相変わらず留守番電話につながれました。「だいじょうぶ」。それにしても今日は忙しい。キッチンをひっくり返してサラダを作り、チキンを焼いているのです。チキンは2つ。イブの今日こそは、私たちを驚かせるように唐突に、大きなプレゼントを抱えて彼が来る。そう信じておりました。なんていったって、今日はクリスマスイブなのですから。

テーブルに料理を並べると、金の燭台の上の赤いろうそくに火をつけました。今夜は不思議と空気が冴えわたっており、七色の光が天井から降っているような、神聖な気持ちになりました。テーブルにはパンとスープとチキンにケーキ。窓際のツリーが静かに明滅しています。私は椅子に深く座り、お腹に手を当てながら「きよしこの夜」を鼻歌で繰り返し歌いました。「だいじょうぶ。今日こそはさすがにお父さんだって来てくれるわ。だってクリスマスなんですもの」。その思いは、時計の針が回るごとに、涙に変わってゆきました。気が付けば私はおいおいと泣きながら、「彼は来ない」と思い至りました。「クリスマスさえも来ないのなら、もう彼が来ることはないのだ」そう突きつけられたようでした。

私は料理に手をつけぬまま、ふかふかの襟がついた厚いコートを羽織ると、家を出ておりました。なぜでしょうか。ビラを見てうろ覚えの ‘教会’ に、足は向かっていたのです。

教会の入り口からは、ほのかな光がこぼれていました。開け放たれているドアをくぐると、親切そうな老女が、キャンドルを渡して火をつけてくれました。中に入るとたくさんの人が集っており、一人一人が炎の揺らめくキャンドルを手にして、立っておりました。

牧師先生の立つ教壇の後ろには、床から天井までを貫く大きな十字架が掛けられており、白く輝いておりました。牧師先生が、分厚い聖書を開いて読むごとに、「アーメン」とささやきがあふれていました。

「神の子らよ、主に帰せよ」(アーメン)
「栄光と力とを主に帰せよ」(アーメン)
「み名の栄光を主に帰せよ」(アーメン)
「聖なる装いをもって主を拝め」(アーメン)
「主のみ声は水の上にあり」(アーメン)
「栄光の神は雷をとどろかせ」(アーメン)
「主は大水の上におられる」(アーメン)(詩篇29篇)

荘厳な言葉の連なりと、十字架が迫るようでした。キャンドルを、椅子の背にある台に置き、私も皆と同じように手を組んで祈っていました。「助けてください!」と、心は叫びだしました。しばらくすると、牧師先生の言葉はやみ、代わりにオルガンとバイオリンが崇高な調べを奏で始めました。皆こうべを垂れて祈りの姿勢を取ったまま、それを聞いておりました。私も必死に両手を組んで、祈り続けていたのです。祈りというよりも叫びと言ったほうがいいかもしれません。神様など信じて生きてきたわけではないのに、なぜでしょうか、どこかにおられるかもしれない神様に、切に祈っていたのです。

その教会には、1枚の絵が掛けられておりました。その絵は、暗闇の中に立ち、胸から一筋の光の放たれた1人の人でありました。その顔は優し気で、胸からあふれる光は一筋の道を示しておられるようでした。「イエス様」というお方を描いたものだと、私でも分かりました。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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