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さくら時計

さくら時計(7)来られた方 星野ひかり

2021年12月23日10時58分 コラムニスト : 星野ひかり
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さくら時計(1)プロローグ 星野ひかり+

さくら色の花びらで縁取られたさくら時計の中で、「イエス様、あの日のことは、今でもよく分からないの。ただ、あなたが来てくださったことだけは、分かっているの」そう目に涙をためる私の肩を、イエス様はそっと抱き、静かにうなずきました。「まるでこの世での出来事とは思えないの…今でも」。そう言う私の目は、クリスマスイブから日付をまたいだクリスマスの朝の4時、あの日の部屋に向けられました。

教会からどうやって帰ってきたのか、覚えていませんでした。ただ、牧師先生が大きな十字架を背に、最後に語った言葉…「すべて、疲れた人、重荷を負っている人は、わたしのところに来なさい。わたしがあなた方を休ませてあげます」という言葉が、この世のものではない温かな響きをもって頭の中でこだましておりました。そして、あの絵…暗闇の中で胸から一筋の光を放ち、ほほ笑まれているお方の姿がまぶたの裏にありました。私はコートを着たままベッドにうずくまってうつらうつらとしており、たるんだ目じりには、涙がたまっておりました。「助けてください」くちびるはそう動いていました。

ふと、お腹が氷のように冷たくなってゆくことに気付きました。青ざめて、両手をお腹に当てて、体温で温めました。しかし次に襲ってきたのは、波のように襲う痛みでした。私はお腹に手を当てたままうずくまり、目を見開いて震えました。まだまだ小さないのちの火がおなかの中で震えながら消えてゆこうとしていることを感じていました。「だめよ、大丈夫なの、お母さんは一人でだってあなたをちゃんと育てられるの」。瞳を震わせて訴えました。しかし、ざぶん、ざぶんと波が覆いかぶさるように襲う痛みとともに、ベッドに体液が滲み始めたのです。私の目は凍り付いて震えました。「いや」

救急電話にかけようと、電話をつかみましたが番号が思い出せず、110番にかけていました。それでも、私は「助けて」と言うのが精いっぱいで、電話を落としました。

その時、私を支えるように、肩を抱く手があったのです。暗闇の中、振り向くと、背の高い男の人のようでした。「やっと来てくれたのね」。彼が来たのだ、と思いました。その人は私の肩をつかみ、背中を覆うように抱きしめました。私は彼の手を強く握り返し、深く強く手を握り合いました。片手はお腹を支え、片手では手を握り合い、蒼(あお)い暗やみの中で、世界がぐるぐると回りました。体液が流れ続けました。青ざめながら、握り合う手だけが支えでした。私は、彼の顔を見ました。もうろうとする意識の中で、その人の名を呼びました。「イエス様…?」

私を支えるように肩を抱き、励ますように手を握ってくださっているこの方は、‘イエス様’…会ったことなどないけれど、教会で見たあの絵をほうふつとさせる慈しみにあふれたまなざし…その方はあまりにも熱く私を愛するまなざしを持ち、そしてあまりにも聖らかな方であったのです。

赤い光が窓から差し込み、部屋中を照らしておりました。サイレンの音がうなるように響いておりました。「大丈夫ですか?」野太い声が響きました。私はゆっくりと倒れ込み、目を閉じました。

気が付くと、白い天井が見えました。私は白いリネンのベッドに寝ておりました。天井にはひびのような模様があり、そのひびの模様が子どもの顔に見えました。子どもは笑ったり、怒ったり、表情を変えていきました。「ごめんね」。その子に語り掛けました。すると子どもはかなしそうな顔に変わり、「おかあさんの悲しみ、ぼくの悲しみ」そんなふうに言うのです。私は涙をぽろぽろと流し、「だいすきだよ」そう言うのがやっとでした。子どもは笑ったり、悲しそうにしたり、次第に立ち上がり走り、跳ね、くるくると回りながら遠くへ走って、見えなくなってゆきました。

私は病院の喫煙室で、タバコをくわえました。その唇は荒れ、手は震えておりました。‘教会に行こう’ ふいにそう思いました。そこでなら、あのお方、‘イエス様’ のことをきっと知ることができるのだ、と思ったのです。あの蒼い夜、私のもとに来てくださった方のことを…。

さくら時計の中で、私はイエス様の胸に手を当てました。「あなたは確かに来てくださった。そうでしょう」。イエス様はただほほ笑まれました。

陰府(よみ)の深みで、闇に手足も取られていた私のところまでイエス様は降りてこられ、陰府の深みでイエス様の血の味さえ口に含んだようでした。ですから、あなたのいのちは私のいのちであり、私のいのちは、あなたのいのちなのです。あなたの血は私の血であり、私の血はあなたの血なのです。愛とは、いのちそのもの、血のようです。

その後、しばらくして訪れた教会で、小さないのちはイエス様のおられる天国に行ったと聞いて、うれしかったものでした。そう信じてはいても、牧師先生からそう聞くと、いっそうそうなのだと思いました。私は子どもに名前を付けておりました。もう老年が近づいた今でも、その名を呼ばない日はありません。私はこの地では母になれなくとも、天の世界にはその子を産むことができたのです。何とうれしいことでしょうか。

生まれることのなかった小さないのち、生まれてすぐに亡くなった、小さないのち、そんな子たちがたくさんいるから、天国は天使たちであふれているのかもしれない。そう思って、天使たちの描かれた古い聖画集や天使の置物を買い集めて部屋に飾るようになったのは、その頃からでありました。

そして、私は天にいるその子に恥ずかしくない母として生きていこうと強く思ったことでした。そんな母としての思いは、私を強くしてくれたのかもしれません。‘誰かの世話をして生きていきたい’ そんな思いを持つようになったのですから。

私はそれから、病院の清掃人の仕事に就きました。清掃人といったら、地味でつまらない仕事のように思うでしょうか。私もそう思っていました。しかし何も経験のない私です。まず清掃人から始めて、いつかもっと身近に患者様のお世話をする、そんな仕事に変えていこうと思っていました。しかし清掃人のやることは掃除だけではありませんでした。洗濯物を洗って干して戻すこと、シーツの交換だってします。時には患者さんの悩みを聞いたり、掃除をしながら寝たきりの方に歌を歌ってあげることだってあるのです。母から受け継いだあの店は、居抜きで貸しに出しました。ですから、安いお給料でもさして心配なく暮らしてゆくことができました。酒の席でしか働いたことのなかった私は40代、知らないことばかりの新しい世界が開かれていったのです。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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