Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
リビングストンの生涯

アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(16)さようなら、お父さん

2021年12月29日13時14分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(1)悲しい伝説+
リビングストン(1813〜73、写真:Thomas Annan)

以前は人なつこい微笑を浮かべ、彼を慕ってあとについてきた黒人たちのあまりの変わりようにリビングストンはうろたえながら、何があったのかと尋ねた。すると一人が泣きながら叫んだ。「あんたがイギリスに帰っちまってからすぐに、あっちからもこっちからも白人たちがやってきて象牙を売ってくれと言う。われわれが売らなかったら、やつらはリビングストンの友達で許可をもらっていると言うじゃないか。そうして、みんなを鉄砲で脅し、象牙をみんな持っていっちまった」

「それだけじゃない。やつらは毎日やってきて家畜を残らず持っていっちまった。それに文句を言ったら、私らの家族に乱暴をして、奴隷に売るために引っ張っていっちまったんだよ」

リビングストンは恐ろしい衝撃を受けた。「あんなやつらと友達なら、あんたと口もききたくない。顔も見たくないから行っちまってくれよ。もうここに来ないでくれ」

一行は逃げるように先に進んだ。リビングストンの頬には涙が流れていた。自分が英国に帰りもてはやされている間に、こんな悲劇が起きていたのだ。一体自分がこれまでやってきたことは何だったのか。

あのなつかしいリンヤンティに着くと、ここも以前と様子が一変していた。あの人なつこい微笑を浮かべて自分を迎えてくれた住人が一人もおらず、にぎやかな声にあふれた広場――それが消えてしまっていた。目を凝らして見ると、小屋も残らずなくなり、ガラクタの山があちこちにでき、涼しそうな葉をつけた木々は残らず切り倒されていた。彼の姿を見て顔見知りの黒人たちが寄ってきたが、いずれも冷たい目で非難するようにじろりと見た。彼は不安におののく胸を抑えて、首長のセケレトウの屋敷を訪れた。

「首長はずっと床に就いている。もう助からない病気だそうだ。だから帰ってくれ」。従者は突き刺すように言った。それでもぜひ会いたいから取り次いでくれと頭を下げると、彼はしぶしぶ病室に案内してくれた。

「おい、立派な首長。どうしたね?」リビングストンは、ありったけの愛情を込めてなつかしい友に呼び掛けた。セケレトウは全身悪性の腫瘍に侵され、死にかけていた。それでも、リビングストンが来たことを知ると、かすかに目を開けてほほ笑みかけた。

「お父さん、来てくれたんですね。もう一度会えてよかった」。「しっかりするんだよ。私は医者だ。きっとあんたを元の体にしてみせる」。リビングストンは必死で言ったが、彼は首を振った。

「私は最後までお父さんを信じていた。お父さんがここに来てくれたのは、われわれが好きだったからですよね。でも、こんなことになってとても残念です。お父さんがイギリスに帰ってすぐにここはボーア人に荒らされ、そのあとポルトガル人や他の国の白人たちによってめちゃくちゃに踏みにじられました。やつらは、お父さん――情けないことにみんなお父さんの友達だとか家族だとか言ってここの人たちを殺したり奴隷に売るために引っ張っていってしまったんですよ」

「セケレトウ、ゆるしてくれ。私はイギリスになど帰るべきじゃなかった」。リビングストンは声を上げて泣いた。セケレトウは、次第に弱っていく中でありったけの力を込めて言った。

「お父さんがやったことは今まで誰もやったことがない素晴らしいことです。もしお父さんがセント・ポール・ルアンダやキリマネまで歩いて道を開かなかったら――それはポルトガル人やアラビア人に踏み込まれることになったけど――アフリカは開けなかったじゃありませんか。ヨーロッパの人たちと貿易する機会がなかったじゃありませんか。だからね、お父さん、これでよかったんですよ」

それから、最後の力を振り絞ってその指から金の指輪を引き抜いて彼に渡した。「…もしこのマコロロでお父さんが危ない目に遭ったとき、首長セケレトウのこの印を見せるんですよ。そうすれば、どんなにお父さんをよく思っていない人も、よくしてくれます」

そして、彼はもう見えなくなった目で、なおもリビングストンを見つめた。「あなたに会えて本当によかった。…さようなら、お父さん」。そして、がっくりと首が後ろに落ち、彼は息絶えた。

「セケレトウ、私たち白人をゆるしてください!」リビングストンは、冷たくなった彼の体に取りすがって号泣し続けた。

*

<あとがき>

マコロロの首長セケレトウは、リビングストンを実の父親のように慕い、彼が説くキリストの教えを子どものように受け入れたのでした。リビングストンはしばらくの間英国に帰っていましたが、いつもその心にはセケレトウをはじめとするアフリカの兄弟たちへの思いがありました。彼は務めを終えると、飛ぶように現地に戻ってきました。

しかし、彼を待っていたのは、あまりにも残酷な現実でした。彼らが欧州の商人たちと対等に貿易ができ、国を立ち上げることができるようにと、リンヤンティから大西洋まで水路を開いたのに、それが奴隷商人をアフリカ奥地へと呼び寄せる結果となり、国は踏みにじられ多くの原住民が殺されたり、奴隷に売られたりしたのでした。

リビングストンは、重傷を負い息絶える寸前のセケレトウのもとに駆けつけます。するとセケレトウは、リビングストンの偉大な業績をたたえ、彼を励ましつつ天に召されていったのでした。

アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(1)悲しい伝説
(画像:栗栖ひろみ著『信仰に生きた人たち 第3巻 リビングストン』[1982年、ニューライフ出版社〕)

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。80〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、82〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、90年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。12年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。15年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
  • ツイート

関連記事

  • アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(15)栄光の後に悲しみが

  • アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(14)ビクトリアの滝を発見する

  • アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(13)困難な旅を続けて

  • アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(12)敵を愛しなさい

  • アフリカ奥地に神の愛を―リビングストンの生涯(11)仲間を売る者たち

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.