日本の宗教者と研究者が「環境と気候の非常事態宣言」 対応の遅れに高まる懸念

2019年9月7日23時43分 印刷
+日本の宗教者と研究者が「環境と気候の非常事態宣言」 対応の遅れに高まる懸念
第10回宗教と環境シンポジウムで参加者からの質疑に応じる発題者ら=7日、東洋大学(東京都文京区)で

環境問題に取り組む日本の宗教者と研究者によるシンポジウムが7日、東洋大学(東京都文京区)で開催され、「環境と気候の非常事態宣言」を発表した。地球環境の危機的な状況を受け、世界では英国やカナダなど6カ国が同様の「気候非常事態宣言」(CED)を採択しており、自治体レベルでCEDを表明しているのは19カ国で850を超える。シンポジウムでは、日本の環境問題に対する認識の低さや、取り組みの遅れに危機感を抱く声が聞かれ、宣言では「宗教界・学界はもとより市民の間にも、もはや非常事態にある地球環境の現状の認識について、共有の輪を広げて」いくと表明している。

開催されたのは、宗教・研究者エコイニシアティブ(RSE)が主催する「宗教と環境シンポジウム」。RSEは2011年、さまざまな宗教の信仰者と各分野の研究者が協力して、環境問題に取り組むことを目的に設立された。シンポジウムは毎年1回開催しており、第10回となった今年は「海と環境を宗教から考える」をテーマにした。

基調講演では、吉川まみ・上智大学神学部准教授が「SDGsにおける環境問題への取り組みと宗教からの視点」と題して講演。吉川氏は、ローマ教皇フランシスコが環境問題をテーマに発表した回勅「ラウダート・シ」(2015年)の日本語共訳者の一人だ。講演では、「ラウダート・シ」の内容を中心に、カトリック教会が環境問題をどのようにして信仰の問題として捉えているのかを説明した(関連記事:環境問題扱った教皇による初の社会回勅「ラウダート・シ」 日本語訳者が「宗教と環境」シンポで講演)。パネル発表では、環境材料科学などが専門の山本良一・東京大学名誉教授らが発表。宗教界からは、松本光明氏(金光教「環境と倫理」研究会代表)と深田伊佐夫氏(立正佼成会中央学術研究所研究員)が、各宗教における取り組みの実例を報告した。

RSEが発表した「環境と気候の非常事態宣言」は以下の通り。

環境と気候の非常事態宣言

宗教・研究者エコイニシアティブ(RSE) 2019年9月7日

現在の文明のあり方は環境や気候の危機を招き持続不可能であることが従来指摘されてきましたが、今や深刻な環境破壊や極端な気象が現実のものとなっています。2050年には海洋プラスチックの総重量が魚の総重量を超えるとする予測(A)や、100万種の生物種が絶滅の危機に瀕(ひん)しているとする報告(D)がなされています。2017年に熱波にさらされた人口は、2000年に比べて世界で1億5700万人増加しました(C)。パリ協定の1・5℃目標は早ければ2030年頃に突破されると予想されています(B)。

環境と気候が人類にとって非常事態にあることは以上の4つの報告書を挙げれば十分でしょう。環境と気候の非常事態に直面して問題解決のための政治的な取り組みの遅れを懸念し、世界の青少年が一斉に気候ストライキを行っており、5月24日には180万人が参加しました。ローマ法王は気候の非常事態に言及したほか、世界の80余りの大学も気候非常事態宣言を行い研究教育に反映させると誓約しています。

さらに、世界19ヶ国の850を超える自治体が環境と気候が非常事態にあることを宣言し、問題の解決に社会の総力を挙げて取り組むことを表明しています。英国、アイルランド、ポルトガル、カナダ、フランス、アルゼンチンは国家として同様な宣言をしています。

これらの状況をふまえ、本日、第10回宗教と環境シンポジウムを主催した「宗教・研究者エコイニシアティブ」(RSE)は、上記の危機的状況への感性と認識とを共有する構成員それぞれの信仰的信念、信条、およびそれぞれの研究分野における見識と良心に基づいて、既に宣言した世界の自治体、国、団体に続き、以下を宣言します。

1. わたしたちRSEは、宗教界・学界はもとより市民の間にも、もはや非常事態にある地球環境の現状の認識について、共有の輪を広げてまいります。

2. わたしたちRSEは、地球環境の危機を深く憂慮し、2050年までにカーボンニュートラル(※)を実現するよう政府等に要請し、一般社会にも訴えてまいります。

3. わたしたちRSEは、大量生産、大量消費で自然を破壊し、地球温暖化等をもたらした現代文明を反省し、小欲知足の心とエシカル消費による自然と調和した文明への転換を提唱し、自らその実践に努めてまいります。

※ CO2排出量とCO2吸収量が同量の状態

A)World Economic Forum, The New Plastics Economy - Rethinking the Future Plastics (2016)
B)IPCC Special Report on Global Warning of 1.5℃ (2018)
C)The lancet Countdown, tracking progress on health and climate change (2018)
D)The IPBES Global Assessment Report on Biodiversity and Ecosystem Services (2019)

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