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孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯

孤児の父―ハインリッヒ・ペスタロッチの生涯(9)シュタンツの悲劇

2019年6月19日14時39分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
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1789年。フランス革命が勃発し、世界に不穏な波を広げていった。1792年8月26日。ペスタロッチはフランス国民議会から「フランス名誉市民権」を授与された。これに対しスイス国内には、ペスタロッチがフランスと秘密の関係を持っているのではないかと恐れる者がいた。国民はフランス革命の影響とフランス人の干渉を恐れていたのである。

1798年。スイス国民の予想通り、フランス国家はスイスに対し、フランス革命の模範に従って政治形態を組織するようにと強要するようになった。そして、この年の4月12日。アーラウに革命的力を持つ「ヘルヴェチア共和国」が成立した。この時、スイス国内では幾つかの州が異議を唱え、市民が団結して自由な自治を求めて立ち上がった。

ウンターヴァルデン州では特に市民の抵抗が激しく、中央の革新政府に対して反対運動を始めた。これに対して怒ったフランス軍は、1798年9月、主都のシュタンツに侵攻。荒れ狂う民衆に対して殺りくをほしいままにし、なお飽き足らずに民家に火を放ち、目も当てられない状態にして引き上げた。この惨状について内務大臣レンガ―は次のように報告している。

「死者411名。家屋焼失712戸。無一文になったり保護者を失った老人11名。親を失い、路頭に泣く孤児237名である。加えて、アルプスの冬は早くも襲来し、アルプスの峰から雪混じりの風が吹き下ろすようになっても、衣類1枚の補給もなかった。これらの老人や孤児はそのまま路傍で死を待つしかなかった」

ついに当局はこれを傍観するわけにはいかず、この地に孤児院を建てることにして、ペスタロッチを孤児院の監督者に任命し、彼に打診してきた。ペスタロッチはこれこそ長年心に抱いていた理想が実現する機会であると喜び、政府からの申し入れを受諾した。

12月7日。ペスタロッチは単身シュタンツに赴いた。あの忠実なエリザベートは彼に付き添って行くと申し出たが、アンナの健康が思わしくない上、ヤーコブの養育に手がかかるので、彼女を残して行くことにしたのである。

孤児院として与えられた建物は、古い修道院であった。中に入ると、台所も整っておらず、孤児たちのベッドも椅子もテーブルも、その他の家具も何ひとつ用意されてなかった。取りあえず彼は町を歩いて見つけられる限りの孤児を引き取ろうと決心し、上着を羽織って出かけた。

一歩町に入った途端、ペスタロッチは思わず息をのんだ。想像以上のひどさであった。倒壊した家々の前には死体がまだ埋葬されずに転がっており、飛び散った血は生々しく道路を染め、焼け跡はまだかすかに火がくすぶっていた。そして、辛くも命拾いした者たちがふらふらとあたりを歩き回っている。

その時、倒壊した家の後ろから弱々しい子どもの泣き声が聞こえてきた。「母ちゃん・・・母ちゃん・・・」。声を頼りに探し回ると、5歳くらいの女の子が、母親の死体に取りすがって泣いている。「かわいそうに。こっちへおいで」。ペスタロッチは、手を差し伸べて女の子を抱き上げた。「私と一緒に来れば、おなかいっぱい食べさせてあげるよ」。女の子は、一層大声で泣き叫んだ。

子どもを抱いてしばらく行くと、今度はがれきの横に同じくらいの年の男の子がしゃがみ込み、震えているのが見えた。泣く力もなく、喉をひくひくさせて、自分の前に立った男の人を見上げた。ペスタロッチは、いったん女の子を下ろすと、自分の上着を脱いでその子に着せた。

「さあ、私と一緒においで」。そう言って、片手で再び女の子を抱き、もう一方の手で男の子の手を引いて歩き出した。一つ目の路地を過ぎないうちに、いつの間にかあちこちから子どもたちが集まってきて、列をなしてペスタロッチの後について歩き出した。その日、彼は7人の孤児をつれて孤児院に戻ったのだった。

後ろの倉庫に薪と乾パンが保存されてあったので、彼は暖炉にありったけの薪をくべ、買ってきた牛乳に乾パンをひたして子どもたちに食べさせた。その間にも孤児たちは彼の首っ玉にぶらさがったり、両側からその腕に抱きついたりして離れなかった。

彼らは皆、体はあかだらけで、ノミやシラミが付き、不潔きわまりない様子をしていた。しかし、ペスタロッチは少しもそんなことは気にかけないといった様子で彼らを抱きしめたまま、その晩は床で眠ったのだった。

*

<あとがき>

いつの時代にも、戦争の犠牲は自分の力で自分を守ることができない子どもたちです。フランス革命は多くの国に影響を及ぼし、革命的力を持つ共和国が幾つかヨーロッパに誕生しました。スイスにも「ヘルヴェチア共和国」が誕生し、軍事国家への道を歩み始めます。

この時、スイスの幾つかの州はこうしたやり方に異議をとなえ、自由な自治を求めて抵抗運動を始めました。ウンターヴァルデン州では特に市民の抵抗が激しかったので、これを怒った政府軍は主都シュタンツに軍隊を侵攻させ、市民を殺りくしたのです。その結果、悲惨なことに237人の孤児が町に残され、飢えと寒さで次々と死んでいったのです。

さすがに当局はこれを見過ごしにできず、この地に孤児院を建てることにして、ペスタロッチをその監督に任命したのです。これはペスタロッチにとって願ってもいなかったことで、彼は喜んでその命を受け、ただちに孤児救済のために働き始めたのでした。

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◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で日本動物児童文学奨励賞を受賞。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝のWeb連載を始める。その他雑誌の連載もあり。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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