パネリストは全員女性、「地域とくらし」を女性の視点で考える 第4回賀川豊彦シンポジウム(2)

2018年11月27日23時30分 印刷
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第4回賀川豊彦シンポジウムの様子=10日、早稲田大学(東京都新宿区)で
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「地域とくらし―今、女性の視点から考える」をテーマに、早稲田大学で10日に開催された第4回賀川豊彦シンポジウム。第1部では、開催趣旨の説明や女性3人のパネリストによる発表などが行われ、第2部では、主に参加者から寄せられた質問に答える形で、パネルディスカッションが行われた。

パネルディスカッションには、パネリストである南部美智代氏(日本労働組合総連合会=連合)、山内明子氏(生活協同組合コープみらい)、堀田亜里子氏(全国農業協同組合中央会=JA全中)の他に、協同組合に関する研究が専門の杉本貴志氏(関西大学商学部教授)と、コーディネーターとして稲垣久和氏(東京基督教大学大学院教授)が参加した。

女性から見て、男性が活動に入ってくることのメリットとデメリットは?

南部:どちらかというと、連合は男性社会。連合本部の場合、役員に占める女性の割合は約33パーセントだが、ようやくそうなったという状況。男性の中に女性が入るという状況はよくあるが、女性の中に男性が入るという状況はほとんどない。女性が参加するようになったメリットとしては、会議を昼間にランチミーティングの形式ですることで、時間を短縮できたり、会議後の飲み会の時間が短くなったりした。女性の中に男性が入ってくるメリットとしては、会議全体が締まるということがあるのでは。

山内:333人のブロック委員のうち男性は2人。現在は、女性たちに同化できる男性が参加している。まだデメリットが出るほどではない。男性が入るメリットとしては、女生や子どもは参加するが、男性の参加がない企画があったが、男性ブロック委員の提案を取り入れたところ、男性の参加者が出たことがあった。

堀田:組織は単一の人ばかりであれば話は早いが、異質な人も入り、議論・対話ができるのであれば、良い方向に向かっていくのでは。女性の理事が「女性理事」ではなく単に「理事」と呼ばれるような時代になれば、いろいろな立場の人がいるはず。その時に大切なのは、互いが自分の意見に固執せず、互いのことを思い合って対話できること。そうすれば、女性も男性もそれぞれ生きづらい雰囲気ではなくなるのでは。

女性として苦労したこと、また女性で良かったことは? 男性社会に変えてもらいたいことは?

山内:2015年まで日本生活協同組合連合会で働いていたが、そこで女性としては初めて執行役員になった。他は全員男性で、そこで自分らしく振る舞うやり方が分からなかった。ロールモデルがいなかったので、男性のように強く引っ張っていくのがリーダーなのかと思ったが、しっくりこず、悩んだ。後輩からのプレッシャーもあった。

生協はユーザーの声を聞いて生かすことを大切にしている。ユーザーの多くは女性であるため、その声を理解し伝えられるということは、女性で良かったと思う。

画一な人だけだと話は早く、異質な人が入ると時間はかかるが、コミュニケーション力は養われる。違う人とも多様に話をしながら、違うものを新しく作り上げる、良さ、うれしさ、大切さを、(男性には)女性と力を合わせることで気が付いてほしい。

堀田:仕事も育児もどれも中途半端な感じで悩んでいるところもあり、今は何とか回っている感じ。男性社会に対して言いたいことは、男女で違いがあるのであれば、良い悪いではなく、その違いを楽しんでもらえばよいのではないかということ。

南部:子育て中に役員となり、男性からは「出張は無理しなくていい」と言われていたが、逆に女性委員会からは「ずるい」と言われた。男性、女性にかかわらず、働きながら子育てをするのは本当に大変。本当に仕事と家庭の両立を考えるならば、24時間以上必要ではないかと思うほど。

立場が上になるにつれ、一対一で対話をしなければいけない場合が出てくる。女性と話す場合は問題ないが、男性と話す場合は、一対一では気を遣ってすごく話しづらかった。相手が交渉相手であっても、同僚であっても、複数人で対話をする気遣いが必要だった。

女性で良かったことは、(女性役員が)珍しい存在であったため、ちやほやされたこと。しかし、それもほんの一瞬だった。男性には意識を変えていただきたい。家庭がある人は、女性の仕事と家庭の両立を支援するため、早く帰っていただきたいと思っている。

先進国では特に日本と韓国で、結婚・出産期に女性の就業率が下がる「M字カーブ」の現象が見られる。日本はどうしてそうなのか。「M字カーブ」解消のため、企業はどのような努力をしているか。

南部:私自身は公務員出身で、(公務員では)結婚・出産しても働くというのが当たり前だった。しかし一般の企業では、女性が寿退社をしたり、1人目は何とか頑張っても、2人目が生まれたときには、専業主婦となって子育てをしなければいけなかったりした。だが最近では、人材不足もあり、企業は女性の雇用を非常に大切にしている。法整備も進みつつあり、企業内保育など、さまざまな形で両立支援ができている。男性が育児休暇を取るケースはまだ少ないが、意識は相当変わっている。

日本と海外を比較するとどうか。

山内:日本人は空気を読み過ぎだと思う。例えば、子育て中の女性であれば「私の状況を考えて上司は言ってくれないかな」と暗に思っているところがある。一方、男性も「俺の立場を分かってくれ」というようなところがある。インドに3年赴任したが、自分の言いたいことははっきりと言う。自分の状況を一番よく分かっているのは自分自身だから、それを口に出してコミュニケーションすればよい。

過労死するまで働くという、日本人の働き方、(悪い)勤勉性はどうして生まれたのか。

杉本:英国在住時、本当に日本人は働き過ぎだと理屈ではなく、実感として分かった。英国では本当に午後5時になったら全員帰ってしまう。これは大学の教員であっても同じで、学生が質問のために待っていても帰ってしまう。まったく空気を読まない。とにかくこれは自分の権利であると。ロンドンなどの国際都市は別だが、商店も午後5時半には閉まってしまう。日本との差があまりにも激し過ぎて、そう簡単には解決できないと思わされた。

しかし、英国とは同じ先進国であり、同じような資源状況、人口構成であり、日本でそのような社会を実現できないわけではない。しかしそのためには、個人的な意識改革だけではなく、社会システムを変えないといけない。

なぜ日本がこのようになってしまったのか。簡単に言えば、男女役割分業を徹底することが、企業にとって一番都合が良かったから。男性には企業で一生懸命働いてもらい、妻や子どもの生活を支えられるだけの家族賃金を与える。その代わり、女性は子育てに専念する。これが一時期の日本社会で非常にうまく機能したことによる。

日本人の勤労意識や勤勉精神は、もともと持っている性質のように考えられているが、幕末に日本を訪れた外国人による滞在記を読むと、当時の日本人を「怠け者」と表現する記述が多くある。そのため、日本人のDNAに勤勉精神がすり込まれているというよりも、日本の資本主義が一時期採用した男女役割分業という労働システムに問題がある。それを変えれば、欧州型社会の実現も可能ではないか。

日本は2025年には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる「超・超高齢社会」を迎える(2025年問題)。高齢者に対してはどのような取り組みをしているか。

南部:2025年問題については相当議論している。健康寿命をいかに延ばすかが重要。男性は健康寿命と寿命の間に9年の差がある。それをいかに縮めるかということで、働き方改革を含め、地域での役割分担なども考えている。人口が減っていく中で、過疎の問題もあり、それを「コンパクトシティー」(都市的土地利用の郊外への拡大を抑制する都市政策)という一つの政策だけで片付けてよいのかも深く議論をしている。

山内:寿命が延びれば健康な高齢者も増えるので、ますます健康なまま活躍できるよう、地域の中に男性もたくさん参加してもらえればと思う。介護は働き方改革に大きな影響を与えている。50代の経験を積んできた世代は今、親の介護で大変。仕事も介護も両立できる働き方を提供できないために、経験のある人たちが仕事を辞めなければいけないのは大きな損失。介護をしながら働けるという仕組みを作ることは、多様な働き方を認めるということ。これを通して、働き方改革を2歩、3歩と、大きく進めることができるはず。

堀田:(2025年問題により)介護の必要がさらに増える頃には、いろいろな人が働かなければ社会が回らない時代になると思う。しかしそれを前向きに考え、いろいろな人が活躍できる社会にしていくということではないか。JAでは「健康寿命100歳プロジェクト」という、互いに助け合いながら楽しく年を取ろう、という活動を行っている。高齢化社会を暗いこととして捉えず、これをチャンスとしていけばよいと思う。

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■ 第4回賀川豊彦シンポジウム:(1)(2)

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