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京大式・聖書ギリシャ語入門

京大式・聖書ギリシャ語入門(4)「あなたは、人の子を本気で信じているのか」―動詞の活用(続)と名詞の曲用―

2018年11月7日22時31分
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関連タグ:宮川創福田耕佑ギリシャ語
京大式・聖書ギリシャ語入門(4)「あなたは、人の子を本気で信じているのか」ー動詞の活用(続)と名詞の曲用ー+
5世紀ごろに書かれたとされる「ベザ写本」のマタイによる福音書11章10〜21節

皆さん、こんにちは。京大式・聖書ギリシャ語入門を担当させていただいております、宮川創、福田耕佑です。いよいよ夏も過ぎ去り、空もすっかり秋めき冬が近づいてきました。この夏も地震や台風、そして猛烈な暑さに襲われ、苦しい日々を過ごされた方も多かったかもしれません。このような中にあっても、神様の御言葉に耳を傾けることのできる機会(それも少し掘り下げて)が与えられていることに感謝致します。皆様どうぞよろしくお願い致します。

今回のメニューですが、初めに第3回の練習問題の解答を行います。それから、ギリシャ文字の二重母音とアクセント、そして気息記号について解説した後で、例題4(ヨハネによる福音書9章35節の後半)を取り上げます。

■ 第3回の練習問題の解答

1)次の新約聖書の一節を日本語に訳しなさい。

Ὁ θεὸς ἀγάπη ἐστίν, καὶ ὁ μένων ἐν τῇ ἀγάπῃ ἐν τῷ θεῷ μένει καὶ ὁ θεὸς ἐν αὐτῷ μένει.

解答例:
 「神は愛であり、そしてその愛の中に住む人は神の中に住み、神もその人の中に住む」

「神は愛です。愛にとどまる人は、神の内にとどまり、神もその人の内にとどまってくださいます」(ヨハネ一4:16後半、新共同訳)

「神は愛です。愛のうちにとどまる人は神のうちにとどまり、神もその人のうちに
とどまっておられます」(同、新改訳2017)

2)次のギリシャ語の単語の意味を答え、発音をカタカナで書きなさい。

Ίησοῦς Χριστός 「イエス・キリスト」、イエースース・クリストス
Μαρία 「マリア」、マリア
Παῦλος 「パウロ」、パウロス

3)自分の名前をギリシャ語で書きなさい。(独断と偏見で日本人に多そうな姓と、男女の名をそれぞれ5つ書きます)

<姓>
・佐藤 Σατω
・鈴木 Σουζουκι
・高橋 Τακαχασι
・田中 Τανακα
・渡辺 Ουαταναβε

<名>
・しょうた Σιωτα
・だいき Δαικι
・けんた Κεντα
・ゆうた Ιουτα
・しゅん Σιουν

・みさき Μισακι
・あおい Αοι
・さやか Σαιακα
・まい Μαι
・なつき Νατσουκι

前回のおさらいですが、前回は動詞の「活用」と「語順」についてお話ししました。まずは動詞の「活用」に関してですが、ギリシャ語の動詞は変化しない部分である「語幹」と「語幹」の後ろに変化する「語尾」があって、この「語尾を変化させる」ことで、人称・数・性・時制などのさまざまな意味を表していくことをお話ししました。図式化しますと、

語幹(不変化)+語尾(変化)

という構造でした。前回の講座では、「留まる、住む」という意味を表す動詞 μένει(menei / メネイ)が登場し、この動詞を例に取り上げました。「1人称・単数・現在」と「2人称・単数・現在」、そして「3人称・単数・現在」の活用形を上で用いた図式に当てはめて記述すると、

μέν - ω(men - ō / メノー) 私は、住む(1人称単数)

μέν - εις(men - eis / メネイス) あなたは、住む(2人称単数)

μέν - ει(men - ei / メネイ) 彼(彼女、それ)は、住む(3人称単数)

となりました。このうち変化しない「語幹」に当たる部分が μέν- で、変化する「語尾」に当たる部分が -ω(1人称単数)、-εις(2人称単数)、-ει(3人称単数)でした。動詞の活用に関しても、今後少しずつさらに詳しく説明していきます。

また「語順」に関しては、ギリシャ語は語順が自由な言語であるということをお話ししました。前回の練習問題で扱った Ὁ θεὸς ἀγάπη ἐστίν(ホ・テオス・アガペー・エスティン)「神は愛である」には、英語の be 動詞の is と同じ働きをする繋辞(けいじ)動詞の ἐστίν(エスティン)が登場しました。前回お話ししましたが、この一文を英語の単語に直してそのまま並べると、“the god love is” のような語順になっています。しかし、ギリシャ語は文の主語には定冠詞が付くことが多く、「テオス」に定冠詞「ホ」が付いて、「アガペー」に定冠詞がないことから、「ホ・テオス」が文の主語であり、この「ホ・テオス」とイコールの関係を作っている補語になっているのが「アガペー」であることが分かります。この文の語順をさらに理解しやすい語順に並び替えると、

Ὁ θεὸς ἀγάπη ἐστίν(ホ・テオス・アガペー・エスティン) (the god love is)

→ Ὁ θεὸς ἐστιν ἀγάπη(ホ・テオス・エスティン・アガペー) (the god is love)

となり、「神は愛である」を意味しました。

次に同じく前回の練習問題に出てきた ὁ μένων ἐν τῇ ἀγάπῃ ἐν τῷ θεῷ μένει(ホ・メノン・エン・テーィ・アガペーィ・エン・トーィ・テオーィ・メネイ)「愛の中に住む人は神の中に住む」を取り上げます。

ὁ μένων ἐν τῇ ἀγάπῃ(ホ・メノーン・エン・テーィ・アガペーィ)は「愛の中に住む人は」という主語の塊を表していました。次に ἐν τῷ θεῷ μένει(エン・トーィ・テオーィ・メネイ)ですが、μένει ἐν τῷ θεῷ(メネイ・エン・トーィ・テオーィ)と、語順を英語のように並び変えた方が理解しやすいかもしれませんが、これで「神の中に住む」という意味を表していました。この2つを重ね合わせると、

【ὁ μένων ἐν τῇ ἀγάπῃ】 【ἐν τῷ θεῷ】 μένει → 「愛の中に住む人」が「神の中」に「住む」
(【ホ・メノーン・エン・テーィ・アガペーィ】・【エン・トーィ・テオーィ】・メネイ)

英語のような語順に変えてみますと、

【ὁ μένων ἐν τῇ ἀγάπῃ】 μένει 【ἐν τῷ θεῷ】 (the living in the love lives in the god)
(【ホ・メノーン・エン・テーィ・アガペーィ】・メネイ・【エン・トーィ・テオーィ】)

となります。以上で前回の練習問題の復習を終わります。

■ ギリシャ文字とその他の記号など

今回はギリシャ文字の二重母音とアクセント、そして気息記号についてお話しします。繰り返しにはなりますが、本講座では、初めてギリシャ文字を学ぶ人のために、正確さを多少犠牲にしてでも、まずはとにかく聖書を音読できるようになることを最優先に解説しています。これまで学んだギリシャ文字24字については、第2回(前半12文字)と第3回(後半12文字)をご覧ください。

二重母音

以下にまず8個の二重母音を紹介します。

αι αυ ει ευ
アイ アウ エイ エウ
οι ου υι ηυ
オイ ウー ユイ エーウ

続いて、「下付きイオータ」が付く3つの母音を紹介します。

ᾳ ῃ ῳ
アー(ィ) エー(ィ) オー(ィ)

この3つのギリシャ文字の下には ι(イオータ)が付いていますが、これを「下付きイオータ」、あるいは「下書きイオータ」と呼びます。古い発音では「イ」が発音されていましたが、新しい発音では発音されなくなりました。そのため、発音しても、発音しなくてもどちらでもよいのですが、単数与格を区別するために下付きイオータが重要になってくることがあり、下付きイオータがそこにあることを覚えるために、各3文字については、短く「ィ」の音を付け足して発音することをお勧めします。

υ(ユプシロン)について

υ(ユプシロン)は前が子音の場合は、「ユ」の音で発音されます。このユの音は、フランス語の u やドイツ語の ü と同じく、ウの口でイを発音する要領で発音される音です。しかし、前に母音が来た場合、αυ は「アウ」、ευ は「エウ」のように「ウ」で発音されます。ですが、母音であっても ο(オミクロン)の場合のみ、ου で「ウー」と発音する規則が存在します。この点、他の文字よりも複雑ですが、ラテン文字音写では今回は常に、υ は u で音写しているため、u を見か掛けたときはこの規則を思い出し、「ユ」や「ウ」「ウー」で発音してください。なお、カタカナ音写では、アントゥローポス(anthrōpos)など、ウ段の音は、二重母音以外はすべて子音のみの音です。カタカナ音写に引きずられて、anthurōposu などと発音しないように注意してください。

アクセントについて

アクセント記号には、①鋭(´)②重(`)③曲(῀)の3種類があります。それぞれ本来違った仕方で発音されていましたが、今回は、便宜的に、違いを無視して全部英語のようにアクセントを付けてください。実際、現代のギリシャでは3つのアクセントの発音の差異は無視して、すべて強勢を込めて発音しています。詳しいアクセントの差異は後の連載で説明します。

気息記号について

ギリシャ語にはハ行を表す文字が存在しません。しかし語頭の母音に限り「h+母音」で始まる単語がありますので、ハ行の音を表すために以下に紹介する気息記号を用います。ハ行を表す際には有気記号(‛)を、ハ行の音を含まないときは無気記号(᾿)を用います。つまり、ある単語が母音で始まる場合、語頭の母音には必ず有気記号か無気記号が附されています。以下に例を紹介します。

ἀ ἁ ἱ ἰ ἑ ἐ
ア ハ ヒ イ ヘ エ

無記記号はアポストロフィー(᾿)と形が似ています。「アポストロフィーのア。アだから無気」という感じでダジャレのように福田は覚えました(笑)。

また二重母音に関しましては、以下に紹介しますように、後ろの母音に付与します。

αἰ αἱ εὐ εὑ ᾤ ᾥ
アイ ハイ エウ ヘウ オーィ ホーィ

■ 例題4(ヨハネによる福音書9章35節後半)

「そして彼に出会うと、『あなたは人の子を信じるか』と言われた」(新共同訳)

「彼を見つけ出して言われた。『あなたは人の子を信じますか』」(新改訳2017)

ギリシャ語:καὶ εὑρὼν αὐτὸν εἶπεν, Σὺ πιστεύεις εἰς τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου;

音写:kai heurōn auton eipen, su pisteueis eis ton hyion tou anthrōpou?

<語釈>

καὶ
(kai / カイ)
[接続詞] そして
εὑρὼν
(heurōn / ヘウローン)
[動詞] 見つけて、発見して(分詞形)
αὐτὸν
(auton / アウトン)
[代名詞] それを、彼を(男性・単数・対格)
εἶπεν
(eipen / エイペン)
[動詞] 彼は~を言った(3人称・単数・過去)
συ (Συ)
(su / シュ)
[代名詞] あなたは(2人称・単数・主格)
πιστεύεις
(pisteueis / ピステウエイス)
[動詞] あなたは~を信じている(2人称・単数・現在)
εἰς
(eis / エイス)
[前置詞] (対格の名詞と)~へ、~の中へ
τὸν
(ton / トン)
[定冠詞] 男性・単数・対格と
υἱὸν
(huion / ヒュイオン)
[名詞] 息子を(男性・単数・対格)
τοῦ
(tou / トゥー)
[定冠詞] 男性・単数・属格と
ἀνθρώπου
(anthrōpou / アントゥロープー)
[名詞] 人間の(男性・単数・属格)
; [疑問符] クエスチョンマーク(?)

■ 動詞の活用

本文では2人称・単数・現在の πιστεύεις(pisteueis / ピステウエイス)が登場しています。2人称・単数・現在の基本的な語尾は -εις になります。先ほど復習した μένω(menō / メノー)と並べてみますと、次のようになります。

単語 語尾 人称 意味  
πιστεύω -ω (-ō) 1人称 私は信じている (μένω)
πιστεύεις -εις (-eis) 2人称 あなたは信じている (μένεις)
πιστεύει -ει (-ei) 3人称 彼は信じている (μένει)

それぞれ語尾を、-ω(-ō)、-εις(-eis)、-ει(-ei)と活用することで、人称を変化させることができます。

■ 第2変化名詞の曲用

動詞の語形変化については「活用」と言いましたが、名詞の語形が数や格によって変化することは「曲用」と言います。今日の例文で登場する ἀνθρώπου(anthrōpou / アントゥロープー)は属格で、「人間の」という意味を表しています。今回までの例題で第2変化名詞の単数形のすべての曲用が登場しましたので、表の形にしてまとめて紹介します。

単語 語尾 各 意味
ἄνθρωπος -ος (-os) 主格 人間が
ἀνθρώπου -ου (-ou) 属格 人間の
ἀνθρώπῳ -ῳ (-ōi) 与格 人間に
ἄνθρωπον -ον (-on) 対格 人間を

アクセントの移動がありますが、読解においてはアクセントの移動の規則の理解は必要ありませんので、今は気にしないでください。主・属・与・対のそれぞれの格で、語尾が -ος(-os)、-ου(-ou)、-ῳ(-ō)、-ον(-on)と変化します。使い方や実際の文章での現れ方は、本文の解説を通して説明していきます。

■ 本文の解説(1)

ギリシャ語:καὶ εὑρὼν αὐτὸν εἶπεν

音写:kai heurōn auton eipen

καὶ
(kai / カイ)
[接続詞] そして
εὑρὼν
(heurōn / ヘウローン)
[動詞] 見つけて、発見して(分詞形)
αὐτὸν
(auton / アウトン)
[代名詞] それを、彼を(男性・単数・対格)
εἶπεν
(eipen / エイペン)
[動詞] 彼は~を言った(3人称・単数・過去)

新改訳2017では「彼を見つけ出して言われた」に該当する部分です。ここにはまだ説明していない分詞や過去形が登場していますが、現段階では説明を割愛させていただきます。ですが、前回も登場した「彼を、彼女を、それを」などを表す代名詞の対格形 αὐτὸν(auton / アウトン)が登場しています。上の表で見ると、ここでは語尾の形が -ον で対格になっていることが分かります。前回は「彼に、彼女に、それに」などを表す αὐτῷ(autōi / アウトーィ)という与格形が登場していました。

■ 本文の解説(2)

ギリシャ語:Σὺ πιστεύεις εἰς ...

音写:su pisteueis eis ...

συ (Συ)
(su / シュ)
[代名詞] あなたは(2人称・単数・主格)
πιστεύεις
(pisteueis / ピステウエイス)
[動詞] あなたは~を信じている(2人称・単数・現在)
εἰς
(eis / エイス)
[前置詞] (対格の名詞と)~へ、~の中へ

まず、συ (Συ)(su / シュ)が登場しています。これは「あなたは(が)」を表す代名詞です。第1回の講座でも説明しましたが、ギリシャ語の動詞には既に主語の情報が含まれていますので、必ずしも主語を書く必要はありませんでした。

ここで「あなた」という形で呼び掛けられている人物は、ヨハネによる福音書9章でイエス・キリストに癒やしていただいた「生まれつきの盲人」であり、キリストを証ししたためにファリサイ人たちによって追放されてしまった人物です。日本語で見ると分かりにくい部分ではありますが、ギリシャ語で見ると、この彼に対し「ファリサイ人を含め、他の者はともかくも『あなたは』信じるのか」と、「あなた」を強調するために文法的には書かなくてもよい主語を置いているのです。

そして、πιστεύεις(pisteueis / ピステウエイス)が登場します。これは、今回の大きなポイントの一つである、動詞の2人称・単数・現在です。「動詞の活用」で紹介しましたように、πιστεύεις は、πιστεύω(pisteuō / ピステウオー)「私は~信じている」の2人称・単数・現在の形「あなたは~を信じている」でした。そしてこの πιστεύεις は対格を要求する前置詞 εἰς(eis / エイス)とセットで、「人と人が信頼し合うときのように、神・キリストが求めるような全信頼を預ける形で自分自身を委ね信じる」というニュアンスを与えています。ですので、

Σὺ πιστεύεις εἰς + 名詞の対格+疑問符

の意味は、

(他の者は信じないとしても、他の誰でもなく)あなた(・・・)は、~を「本気で」信じているのか

となります。この「あなた(・・・)」の強調と「本気で」の部分は、日本語訳聖書にはありませんが、「本気で」は εἰς を何とか短く訳そうという思いで訳出したものです。本文にはこのようなニュアンスがあるのです。

■ 本文の解説(3)

ギリシャ語:εἰς τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου;

音写:eis ton huion tou anthrōpou?

εἰς
(eis / エイス)
[前置詞] (対格の名詞と)~へ、~の中へ
τὸν
(ton / トン)
[定冠詞] 男性・単数・対格と
υἱὸν
(huion / ヒュイオン)
[名詞] 息子を(男性・単数・対格)
τοῦ
(tou / トゥー)
[定冠詞] 男性・単数・属格と
ἀνθρώπου
(anthrōpou / アントゥロープー)
[名詞] 人間の(男性・単数・属格)
; [疑問符] クエスチョンマーク(?)

εἰς は本来、対格と用いて「~へ、~の中へ」を表す前置詞です。今回は、定冠詞 τὸν(ton / トン)が付いた息子を表す名詞 υἱός(huios / ヒュイオス)の対格形である υἱὸν(huion / ヒュイオン)と共に用いられています。ですので、

εἰς τὸν υἱὸν:息子の方へ、息子の中へ

という意味になります。しかし、先程説明したとおり、πιστεύω「私は~信じている」の2人称・単数・現在である πιστεύεις「あなたは~信じている」がその前に来ていますので、それと組み合わせると、

πιστεύεις εἰς τὸν υἱὸν:あなたは息子を「本気で」信じている

という意味になります。そしてこの υἱὸν「息子を」に後ろから、属格の定冠詞+名詞 τοῦ ἀνθρώπου(tou anthrōpou / トゥー・アントゥロープー)「人間の」が修飾しています(曲用に関しては、先程見た第2変化名詞の曲用表を参考にしてください)。属格の多くは所有の「~の」を表す場合が多く、一般的にギリシャ語も英語の “A of B”(BのA)やフランス語の “A de B”(BのA)のように、日本語の語順とは逆に後ろから修飾します。ですので、

πιστεύεις εἰς τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου:あなたは人間の息子を「本気で」信じている

となります。ここで「人間の息子」と言われているのは、ギリシャ語的な言い方というよりはむしろ、旧約聖書に登場するヘブライ語 בן-אדם(ベン・アダム、詩編8章5節など)に由来する言葉です。「人間の息子」つまり「人の子」が実際に何を意味しているのかは、ギリシャ語の知識だけではなく、ヘブライ語や神学的な知識が必要になるでしょう。

■ まとめ

最後に本文全体をもう一度見てみましょう。

ギリシャ語:καὶ εὑρὼν αὐτὸν εἶπεν, Σὺ πιστεύεις εἰς τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου;

音写:kai eurōn auton eipen, su pisteueis eis ton huion tou anthrōpu?

この本文の直訳は、

「そして(イエス・キリストは)彼(生まれながらの盲人)に出会って言った。『(他の誰でもなく)あなた(・・・)は、人の子を本気で信じているのか』」

となります。こなれた日本語にすると、「そして彼に出会うと、『あなたは人の子を信じているのか』と言われた」(新共同訳)のようになります。今回の講座では、特に動詞の現在形と第2変化名詞の曲用の2つを学びました。何度も表を確認して、少しずつ覚えていっていただければ幸いです。

■ 練習問題

1)次の新約聖書の一節のうち、下線部を日本語に訳しなさい。

καὶ εὑρὼν αὐτὸν εἶπεν, Σὺ πιστεύεις εἰς τὸν υἱὸν τοῦ ἀνθρώπου;

今回の例題では、本文に関してはカタカナ音写を施しませんでした。少しずつでもギリシャ文字を読むのに慣れていっていただければ幸いです。練習問題のヒントはすべて上の文章中にあります。

今回のレッスンはいかがでしたでしょうか。次回は第4回の練習問題の解答をした後、第1変化名詞の曲用(主に女性名詞)と第2変化名詞の曲用(主に中性名詞)を学び、例題を一緒に解いていきましょう。次回の講座もよろしくお願い致します!

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◇

宮川創

宮川創(みやがわ・そう)

1989年神戸市生まれ。独ゲッティンゲン大学にドイツ学術振興会によって設立された共同研究センター1136「古代から中世および古典イスラム期にかけての地中海圏とその周辺の文化における教育と宗教」の研究員。コプト語を含むエジプト語、ギリシャ語など、古代の東地中海世界の言語と文献が専門領域。ゲッティンゲン大学エジプト学コプト学専修博士後期課程および京都大学文学研究科言語学専修在籍。元・日本学術振興会特別研究員(DC1)。京都大学文学研究科言語学専修博士前期課程卒業。北海道大学文学部言語・文学コース卒業。「コプト・エジプト語サイード方言における母音体系と母音字の重複の音価:白修道院長・アトリペのシェヌーテによる『第六カノン』の写本をもとに」『言語記述論集』第9号など、論文多数。

福田耕佑

福田耕佑(ふくだ・こうすけ)

1990年愛媛県生まれ。現在、京都大学大学院文学研究科現代文科学専攻博士後期課程、日本学術振興会特別研究員(DC1)。専門は後ビザンツから現代にかけての神学を含むギリシャ文学および思想史。特にニコス・カザンザキスの思想とギリシャ歴史記述とナショナリズムに関する研究が中心である。学部時代は京都大学文学部西洋近世哲学史科でスピノザの哲学とヘブライ語を学んだ。主な論文に「ニコス・カザンザキスの形而上学と正教神学試論―『禁欲』を中心に―」『東方キリスト教世界研究』第1号など。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:宮川創福田耕佑ギリシャ語
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