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のりぼと神様

のりぼと神様(7)天のオーロラ 星野ひかり

2018年5月18日08時47分 コラムニスト : 星野ひかり
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「おかえりなさい。分かりかけた?イエス様がなぜお生まれになったか」。そう聞いたのは確かにルビーでした。

のりぼは白い繭(まゆ)でできた洞窟に寝ころんでいました。繭は金色に輝いて、ところどころにスミレのような花をつけています。繭が体に絡みつき、人肌のようにやわらかです。

「少し分かったよ。イエス様は、本当に僕たちを憐れんで、そばにいてくれたかったんだ」。「そう。愛のないものにイエス様のことは分からないと言うわ。愛を覚えて初めて、イエス様がお生まれになった理由、そして生涯を人のために生きた理由、十字架についた理由が分かるものよ」

「この世界は、どこもかしこもとても美しいね。僕はもう帰りたくなくなるよ。このままここに住んで、お母さんに会って、お母さんと暮らすんだ」

ルビーは風のように柔らかなしぐさで、髪をかき分け繭の上に腰掛けます。

「愛は美しいものでしょう?・・・先生やあなたの、おばさんへの慈しみのように、愛は美しく麗しい。・・・神が愛であるから、この世界が美しいのは当たり前のことよ。そして、あなたのお母さんのいる天国はもっと美しく麗しいわ・・・でも連れて行ってあげることはできない。あなたはまだ、地上の世界でやるべきことがたくさんあるからよ」

のりぼは少し不安になりました。「お母さんは美しい所にいるんだ。幸せにしている?」。「もちろんよ。もう痛みも苦しみも、嘆きもない。ただ美しく麗しい関係性の中で、さんざめく光のように生きているわ」

「そんないい所にいるんでは、僕のことは忘れたかな」。ルビーは驚いた顔を見せました。「まさか!忘れていないからこそ、私がここにいるのでしょう。けしてあなたに無関心ではないのよ。イエス様もお母様も、私も」

「じゃあどうして、お母さんがここに来てくれないの?」。のりぼは聞きました。ルビーはのりぼの鼻をなだめるように撫ぜて、「ここはね、地上の世界にとても近い所なの。お母さんには来られないわ。もうそういう体ではないのよ。そうね、なんて言ったらいいのかしら。光のような体なの。だからあなたには感じることはできるけれど、見ることはできないのよ」

「感じることはできるの?」。ふふ、とルビーは笑いました。「感じているでしょう?今も。いつも」

のりぼは胸が熱くなり、涙がこらえられない思いにかられました。そして輝く繭に触れ、そのあとスミレたちに触れ、空中に両手を伸ばして、「どれもに感じているよ」と言うと、うっうと泣きました。

「あなたたちは知らずにいるでしょう。地上の世界の風が優しいのは、花々がほほ笑みかけるように感じるのは、光が背を押し、赦(ゆる)しさえ与えるように思えるのは・・・天の世界の心なのよ。・・・あなたたちが天国や神様と言って遠く感じる者たちは、いつもそばにいるのよ」

のりぼはうんうんとうなずきました。ルビーは立ち上がり、繭の洞窟を歩きはじめ、少しだけ振り返りました。のりぼも立ち上がり、ルビーの後に続きました。

繭の洞窟の先に、碧い夜空が開けました。ラピスラズリの宝石とアメジストを混ぜたような美しい夜空です。空の碧を映すように、草原も碧く輝いて、神様を賛美するように揺らいでいます。その先に、見覚えのある影が見えました。

近づいてゆくと、白い割烹着に身を包んだおばさん(いけにえおばさん)が花を摘んでおりました。手には、長細い、ちょうど子どもの大きさの麻袋が抱かれています。おばさんはその麻袋の中に、摘んだ花を詰めておりました。

のりぼはすぐに分かりました。その麻袋はおばさんの子どものつもりなんだ、と。そして無言で、花を摘む手伝いを始めました。りんどう、スミレ、マーガレット、ポピー・・・この世界には季節がありません。すべての季節の花が咲き乱れているのです。風はひと吹きですべての季節の役割を果たします。のりぼの小さな腕は、花でいっぱいになりました。

そして、それを手におばさんに近づくと、おばさんは無言で麻袋の口を傾けました。のりぼはそこに花を詰めました。麻袋がパンパンになったとき、おばさんの子どもは本当に愛くるしい、花のような女の子だったんだと思いました。

それからおばさんは素手で柔らかな黒い土を掘りました。のりぼも手伝います。麻袋を寝かせられるまで深く掘ります。黒く肥えた土は、簡単に掘ることができました。ちょうど麻袋を寝かせられる深さにすると、2人でゆっくりと穴の中に麻袋を寝かせました。

そして土をかぶせると、おばさんは水晶のようにきれいな涙を流しました。水晶のように美しい涙は地に落ちて、麻袋の花の中に染みわたっていくのが分かるようでした。おばさんは本当に子どもを愛していたことが伝わるようでした。

その時、空が光線のようなオーロラで光り輝き、オーロラは聞いたことがないような音楽を響かせました。・・・まるで天の人が歌っているような美しい調べでした。光は柔らかくのりぼとおばさんを包みます。その光の柔らかさに、のりぼはお母さんを感じました。

「お母さんもいる。見ている」。そう確信しました。のりぼは少し誇らしげに、空を見上げました。ルビーは赤メノウを砕いたような岩に腰掛けて、2人をずっと見守っておりました。

その時、ルビーのいる岩の先に、いつか見たような青年が現れ、大声を出して叫びました。「世の終わりは近づいた!船に乗ろう、乗り遅れてはいけない。神に勇敢なモーセのように!」。天の歌とオーロラに、世界の終わりを感じたようです。

ルビーは人差し指を鼻にあて、「静かに」と言いました。そして「まだ時間はあるわ」とつぶやきました。この世界の一番奥の丘の上にある、赤い十字架が輝きました。おばさんの胸も、それに呼応するように赤く灯っているようでした。

おばさんはひざまずき、両手を組んで祈りました。「イエス様。あなたが私の罪のために、十字架にかかってくださったことを信じます・・・。イエス様。神の子だというのに、私たちと同じ、この脆く痛みやすい肉体を持ってお生まれになって・・・私たちを愛するがゆえに、十字架にかかられ、私たちを赦してくださったことを信じます。・・・イエス様、ごめんなさい。私はあなたを愛しています」。そう言うと、おおぅ、と泣き崩れました。

のりぼは十字架を見つめて、あることに気付きました。赤い十字架は、ルビーの目の色と同じ色をしていたのです。ルビー色の奥には、赤黒い、硬く美しい結晶体があります。そして、それはイエス様の血だ!と、のりぼははっとしました。

「ルビー」。そう言ってルビーの方に振り向いたとき、のりぼは病室のベッドの中で目覚めました。

ベッドのわきの椅子には、お父さんが腰かけて、うつらうつらと眠っていました。お父さんはずいぶんと痩せて疲れている様子でした。寝顔を見つめるのりぼに気付き、はっと目を覚ましたお父さんは、「のりぼ、起きたか」と身を乗り出しました。

「お父さん、ごめんね」。のりぼはつい謝っていました。お母さんがいなくなって、お父さんを支えてあげなくてはいけないのに、こんな病室に寝ていることが情けなく思ったのです。

「何を謝るんだ、お父さんこそ、牧師先生に頼んだきり見舞いにも来れなくてごめんな。仕事がなかなか休めなくてな」と笑いました。その笑みは、いつかのお母さんの笑顔のように、はかなげに思いました。のりぼはお父さんがいなくなってしまうような寂しさにかられて、その手をぎゅっと握りました。いつものお父さんのたくましい骨ばった手ではなく、柔らかく、はかなげで、今にもつぶれてしまいそうに感じました。

「のりぼ?」。お父さんが心配そうに呼びかけました。のりぼは自分がしっかりしなければいけない、と思いました。

「お父さん、イエス様は僕たちを本当に愛しているんだよね。それが分かったんだ。罪深くても、ダメでもいいんだ。愛するって、そういうことなんだね」

お父さんを励ますように言いました。お父さんは照れるように笑って、「どうしたんだ。さては先生からいろいろ教わったんだな。そうだよ。のりぼ。愛するっていうことは条件付きじゃない。ダメでもいいんだ。弱くても、すぐに心が折れても、いいんだ」

そう言うと、ふーっとため息をついて、「戸根先生に感謝だね」と言いました。のりぼはうなずいて、「そう。お父さん、僕はいけなかった。牧師先生だから優しくしてくれるのもお見舞いに来てくれるのも当たり前だと思ってた。・・・でもそうじゃないよね。病院で会ったおばさんはね、誰にも優しくされたことがないような寂しそうなおばさんだった・・・優しくされたり、お見舞いをされたりするのは、絶対に当たり前のことじゃなくて、とてもありがたいことなんだって、思うんだ」

「そうだな。本当に感謝だ・・・飢えている人がいるのに当たり前にご飯を食べてはいけないように、人の優しさ、あたたかさを、当たり前だって受け取ってはいけないよな」

お父さんはそう言うと目を上げて、またふーっと息をつき、「のりなりが大人になりました。これもすべて、父なる神様のおかげです。主のみ名を賛美します」と、小さくお祈りをしました。

のりぼも両手を組んで、「アーメン」と小さく言いました。そして不思議に思いました。あんなにひねくれっ子だったのにいつの間にかこんなに素直になっている自分が、とても不思議で別の生き物になったかのように感じたのです。お父さんもまた、のりぼのまっすぐさを受けて、心がまっすぐに伸びているような気がしていました。小さな息子を、本当にいとおしく思い、そっとのりぼを抱きしめました。

「先生も、もうすぐ退院できるって言っていたからな。そうしたらお父さんのラーメンを一緒に食べよう。お母さんみたいになんでも上手にはできないけれど、ラーメンだけはお母さんに負けないからな」

のりぼは「うん」と声にならない声でうなずきました。お母さんがいないことがひしひしと悲しく思われたのです。(つづく)

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◇

星野ひかり(ほしの・ひかり)

千葉県在住。2013年、友人の導きで信仰を持つ。2018年4月1日イースターにバプテスマを受け、バプテスト教会に通っている。

■ 星野ひかりフェイスブックページ

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
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