「誰もが加害者・犠牲者になり得る」 外国人居留地設置150年の神戸で人権考えるシンポ

2018年5月16日07時49分 印刷
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シンポジウム「みんなで考える“ヒューマン・ライツ(人権)”」の様子=4月24日、神戸市内で(写真:同実行委提供)
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外国人居留地が設置されてから今年で150年となる神戸市で4月24日、シンポジウム「みんなで考える“ヒューマン・ライツ(人権)”」が開催された。同実行委(岩村義雄委員長=エラスムス平和研究所所長、神戸国際キリスト教会牧師)が主催したもので、兵庫県や神戸市などの自治体のほか、朝日、毎日、読売各紙の神戸総局・支局や神戸新聞、サンテレビなど地元メディアが後援。多民族・多文化共生のモデルとされるカナダから教育関係者が来日して発題し、日本側からは旭川アイヌ協議会の川村兼一会長(川村カ子〔ネ〕トアイヌ記念館館長)らが語った。

神戸居留地は1868(慶応3)年、日米修好通商条約など欧米5カ国との条約(安政5カ国条約)により設置された。当時日本で最も大きかった横浜居留地と並び、日本と諸外国を結ぶ友好、外交、相互理解の窓口となった。一方、居留地は日本の法律が及ばない治外法権の区画でもあり、実行委員長の岩村氏は「(外国人居留地は)日本国には不利な屈辱の歴史だった一面を見逃せません。私たちが自由、希望、喜びのある生活を営むには、一人一人の人権が守られることが必要です」と話す。

カナダ一行の代表者であるフローラ・チョン氏(アルファ・エデュケーション代表)はシンポジウムで、「太平洋戦争における残虐行為は、地域や文化、または民族を超えて大きな意味を持ちます。事実、これはすべての人類にとって重大な教訓になっているのです」と強調。誰もが虐待の加害者・犠牲者になり得るとして次のように語った。

「人間は残酷になることができ、『人が人に非人間的な行為ができる』という事実はすべての歴史に一貫して存続しています。私たちは、誰もが、もしかしたらいつか自分が同じような攻撃の犠牲者にもなり得るし、加害者にもなり得るということを忘れてはなりません。私たちが、もう二度と残虐行為をするはずがないとか、残虐行為からは守られていると考えるならば、それは幻想であり危険でさえあります」

アルファ・エデュケーションは昨年、トロントに「アジア太平洋平和博物館・教育センター」を設立することを発表した。アジアにおける第2次世界大戦時の非道な行為に関する歴史意識への理解促進などを目的とした施設で、2019年に開館する予定。兵庫県に戦争資料館を設立することを目指し、12年から活動している岩村氏は「(同センター設立は)キリスト者であるチョン氏らの祈りの成果。模範であり、感銘を受けた」と語った。

トロント在住のジャーナリストである田中裕介氏は、カナダが昨年「建国150周年」を祝ったことから話を始めた。英国の植民地統治に深く根ざした歴史を持つカナダは、かつては多民族・多文化共生の国ではなかった。移民として流入してきた民族集団にとっては、絶え間ない人種差別と圧政の連続だったという。

日系カナダ人のコミュニティー新聞で編集を長く手掛けてきた田中氏によると、マイノリティー(少数者)に対する過去の不正を謝罪し、和解を求める「リドレス運動」がカナダで広がり始めたのは1980年代。「リドレス(Re-dress)」とは「再び着なおす、やり直す」という意味。カナダはそれ以降、過去の汚点を隠したり、水に流してしまったりせず、反省する態度を示してきた。カナダ政府はマイノリティーへの謝罪と賠償に応じ、賠償金は義援金や民間からの寄付でなく、税金でまかなわれ、納税者がその実施を厳しく監視しているという。

参加者の1人、原田洋子さん(日本基督教団神戸栄光キリスト教会信徒)は、「カナダの歴史においても少数者である先住民を抑圧していたことを知り、驚きました。日本もカナダのように謝罪と賠償をアイヌ、琉球(沖縄)、在日朝鮮人などにする時代になってほしいと刺激を受けました」と語った。

「誰もが加害者・犠牲者になり得る」 外国人居留地設置150年の神戸で人権考えるシンポ
アイヌの民族衣装姿で発題する旭川アイヌ協議会会長の川村氏(写真:同実行委提供)

アイヌの代表者として民族衣装で発題した川村氏は、「米国のインディアン政策をそっくり取り入れて日本のアイヌ政策ができ上がった関係上、開拓した側とされた側の歴史は当然のことながら酷似している。共に文字を持たない民族であり、土地を奪われ続け、人権・主権・文化などをことごとく無視されてきた」と、日本の同化政策による抑圧を訴えた。

また過去には、旧帝国大学の研究者らが、アイヌの人々の遺骨を研究材料として墓から掘り起こすなどしたが、いまだに多くが返却されていないことを指摘。先住民族の遺骨返還は世界的な潮流になっているが、北海道大学など国内の大学は返還をかたくなに拒んでいるという。

シンポジウムは約7時間にわたり、岩村氏は「基本的な人権が守られ、教育、居住、言語、宗教などの自由が奪われることのないコミュニティーにすべきだとあらためて気付かされた」とコメント。「『権利を守る』を意味するヘブライ語『リーブ』には、『(権利を)弁護する』『(困難、不幸)に対処する、取り組む、戦う』という原意があります。社会的弱者、抑圧されている者のために、差別に対して戦うことも示唆されているのです。原爆被害を受けたヒロシマ、ナガサキを記念するだけでなく、加害で多くの人権を損なった歴史があったことを記憶する必要があります」と語った。

「誰もが加害者・犠牲者になり得る」 外国人居留地設置150年の神戸で人権考えるシンポ
シンポジウム最後には、3つの提言を含む共同声明を採択した。(写真:同実行委提供)

シンポジウム最後には、兵庫県に戦争資料館を設立することなどを求める「共同声明」を発表。下記の3つの提言を盛り込み、これらの提言について「無感覚、無関心、無視する3無主義を克服し、記憶(リメモリ)運動を展開します」と宣言した。

<共同声明で採択された3つの提言>

  • 神戸開港150年にあって、伊藤博文初代兵庫県知事や日本政府が先住民族であるアイヌ、琉球民族を同化し、今なお人権を奪ってきた歴史認識を教科書で取り上げること。
  • 日本が戦前、戦時下、朝鮮半島、中国やアジア諸国の土地収奪したことによる失業から派生した強制連行、日本軍「慰安婦」問題への謝罪と補償をすること。
  • 神戸事件(阪神教育闘争:連合軍総司令部〔GHQ〕の指令で日本政府が朝鮮人学校の閉鎖を命じたことで起こった)から70年目にあって、在日朝鮮人の子弟の教育の機会が平等に与えられること。

シンポジウムでは、カナダからはチョン、田中の両氏のほか、エイドリアン・ズィー氏(オスグッドホール法科大学院)、アリサ・ワング氏(トロント大学大学院)、ジェンリン・チャング氏(前トロント教育委員会副部長)が発題。日本からは、川村氏のほか、森宣雄(よしお)氏(同志社大学研究員)、家正治(いえ・まさじ)氏(神戸市立外国語大学名誉教授)、安次富浩(あじとみ・ひろし)氏(沖縄平和活動家)、木村公一氏(西南学院大学講師、福岡国際キリスト教会協力牧師)、林伯耀(りん・はくよう)氏(関東大震災虐殺追悼会共同代表)が発題した。

カナダから来日した一行は、翌25日には神戸市内の学校を訪問。26日には神戸市役所に隣接する東遊園地で、路上で生活をしている人々への炊き出しにも参加した。

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