Skip to main content
2025年6月15日20時35分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 文化
  3. 映画

「美女と野獣」に見る啓蒙主義とキリスト教的な愛

2017年5月9日06時57分 執筆者 : 青木保憲
  • ツイート
印刷
「美女と野獣」に見る啓蒙主義とキリスト教的な愛+
「美女と野獣」公式サイトのスクリーンショット

CG全盛期にふさわしい豪華絢爛(けんらん)な映画である。原作のアニメーションは、1991年にアニメ初のアカデミー賞ノミネートとなった記念碑的作品であり、計算し尽くされた舞踏シーンなどに、当時は下絵としてCGが使われていたことは有名な話である。

今回は実写化ということで、あの魔法の世界をどうやって実際の人間に演じさせるかが話題となったが、予想以上の出来栄えではなかったか。劇場は連日満員札止め、見に来る層も幅広く、おそらくディズニー屈指の大ヒット作品となることは間違いない。

しかし、アニメーションそのままを実写で再現したのではなく、実写ならではの深みを与えるエピソードが挿入されている。そもそもアニメは90分足らずだが、実写は130分という大作である。アニメーションのコミカルかつ迅速な動きを再現して子どもたちの心をつかみつつ、会話劇で大人の観客にアピールすることも忘れていない。まさに「完璧」と呼ぶにふさわしい古典的な「おとぎ話」となっている。

しかし、表面的な「王子様とお姫様の物語」という筋書きを越えて、かなり啓蒙的かつキリスト教的なメッセージも加えられているように思う。本稿は「啓蒙主義」「キリスト教的な愛」をモチーフに論を進めてみたい。

アニメとの比較ということでいうと、迷信や従来の価値観にがんじがらめになっていた世界から、主人公の2人(ベルと野獣化した王子)が本を読むことによって抜け出していくという視点が強く出ていたように思う。これは、原作が1740年に発表されたことからも分かるように、啓蒙主義に未来への光明を見いだしていた時代であることが強調されている。

彼らの対極にあるのがガストンという粗野で男尊女卑的な従来の価値観を代表する人物である。アニメ版に比べて、本作では彼の極悪非道ぶりが特に目立っていた。彼からの挑戦を受けざるを得ず、その彼を打ち倒すことで古き価値観を乗り越えて2人が結ばれることになるのである。

言い換えるなら、それだけ強い時代的文化的偏見によって虐げられていたからこそ、2人は結ばれたとも言えよう。共に母親との死別を体験し、父親の偏愛を疎ましく思いつつも、それを振り切る強さを持ち得ないまま生きた。一方はその慈愛のなさゆえに獣と変えられ、一方は周りから「変わった子」と揶揄(やゆ)される中を生きてきた。王族と庶民の子という身分の違いこそあれ、実は同じような傷を負っていたことをお互いが知ることで引かれ合っていくという筋書きは、決してディズニーお得意の「魔法」のなせる業ではなく、むしろ啓蒙主義的ロジカルな人間描写であると言える。

そして、お互いへの理解が深まるシーンでは、アニメ版に大きな改変が加えられている。それは、ベルが王子に好意を抱くプロセスである。もちろん、オオカミに襲われたベルを王子が身をていして助けるという事件がきっかけとなるのは同じだが、よく見るなら、その後に2人で今までに読んだ本の感想を言い合うことによって打ち解けていく。

本を読むことが奇異に映り、周りから変人扱いされてきたベルと、王族教育の一環として本を読んではいたものの、その感想や同じ本を読んだ第三者の意見を聞く機会のなかった王子は、やはり啓蒙主義的な知的好奇心を真に満足させることで、魔法や迷信に支配されていた旧世界的価値観を抜け出て、対等な男女としての恋愛を成立させるのである。

ここがまず、実写ならではの説得力を持って観客に迫って来るテーマとなっている。

もう1つ挙げるなら、「愛する」ということの究極的な本質を本作では強く描いているように思える。「おとぎ話」という枠内であれば、愛するということは2人が結ばれるための調味料的な位置付けしか与えられないのが普通である。つまりどんな状況でも「愛している」ならすべての障害を乗り越えられることになってしまうのである。

しかし本作では、さらに具体的に「愛するとはどういうことか」を掘り下げている。それは、人を見た目や外見で判断してはいけない、ということ。そして、相手の気持ちを求めることではなく相手のために犠牲すること、または自分の都合ではなく相手の都合に合わせて一歩引くこと、である。

ベルは父親を助けるために「愛」を実践する。その姿に激高した王子は「この牢屋の扉は2度と開かない」と言い放つ。おそらく彼にとって「愛する者」と「愛される者」の真実の姿を見た初めての体験だったのだろう。だから動揺したのである。しかし、やがてその彼がベルを解放する。愛しているがゆえに、自分への気持ちを相手に求めるのではなく、相手の気持ちに自分が立つことを実践するのである。

このような「愛の本質」の対極に位置するのが、またまたガストンである。「結婚してくれ」とベルに言い寄るその姿は、自分の都合に相手を合わせようとしており、本作では本当に嫌悪感すら抱かせるような言動が目につく。おそらく昨今の日本映画で異常なブームとなっているイケメン男子の恋愛映画にも一石を投じることになるだろう。

物語的に見るなら、王子がこの愛の本質に気付くことの意味は大きい。なぜなら、彼こそ「相手に愛を求めなければならない」という究極の状況で、タイムリミットが迫っている渦中にあったからである。だから家来たちも必死になってベルの愛を「求めた」。しかし皮肉なことに、求めれば求めるほど、彼らが願っていた世界からは遠のいていってしまうのである。

しかし本の感想を言い合い、雪合戦をし、舞踏会さながらに踊るその過程を通して、ついに王子は魔女が真に訴えたかったこと、「愛するとはどういうことか」に気付くのである。この展開は、ある種のどんでん返しであり、アニメ版ではそれほど強く打ち出されてはいなかったが、大人の鑑賞者に訴えて来るエモーショナルなシーンとなっている。

聖書の有名な1節に「あなたの隣人を、あなた自身のように愛せよ」とある。そのようなキリスト教的な愛の物語として、本作は十分にメッセージ性を含んでいるエンターテインメントである。

一時、キリスト教保守団体が、ディズニー映画には魔法と迷信が満ちている、として忌避すべきだと訴えたことがあった(同じような憂き目に遭ったのがハリーポッターシリーズ)。しかし21世紀に入り、CGの進歩だけでなく、物語としての普遍性も大きく前進したように思う。本作は単なるアニメ版のリメイクではない。新たな「美女と野獣」の解釈として、堂々たる風格を持った作品となっている。

◇

青木保憲

青木保憲

(あおき・やすのり)

1968年愛知県生まれ。愛知教育大学大学院卒業後、小学校教員を経て牧師を志し、アンデレ宣教神学院へ進む。その後、京都大学教育学研究科修了(修士)、同志社大学大学院神学研究科修了(神学博士)。グレース宣教会牧師、同志社大学嘱託講師。東日本大震災の復興を願って来日するナッシュビルのクライストチャーチ・クワイアと交流を深める。映画と教会での説教をこよなく愛する。聖書と「スターウォーズ」が座右の銘。一男二女の父。著書に『アメリカ福音派の歴史』(明石書店、12年)、『読むだけでわかるキリスト教の歴史』(イーグレープ、21年)。

  • ツイート

関連記事

  • 牧師の小窓(79)映画「沈黙」を見て6 俳優アンドリュー・ガーフィールド氏が言わんとしたこと 福江等

  • 「何かを始めたい」思いが少女を変える ドキュメンタリー映画「トトとふたりの姉」29日から公開 

  • たかが「歌」、されど「歌」! 映画「SING/シング」に見る、生きざまの発露としてのステージ!

  • ロシアの至宝はいかに守られたか 「エルミタージュ美術館―美を守る宮殿」4月29日公開

  • 「ローマ法王になる日まで」予告編公開 激動の半生つづった実話が映画に

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • コヘレトの言葉(伝道者の書)を読む(5)時の賛歌 臼田宣弘

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(224)音楽が支える聖霊による祈り 広田信也

  • ワールドミッションレポート(6月14日):スイス 信仰で買ったトラクター、ローレン・カニングハムとYWAMに託された農場の奇跡

  • ワールドミッションレポート(6月15日):ベラルーシのために祈ろう

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 花嫁(27)絶えず喜んでいなさい 星野ひかり

  • ワールドミッションレポート(6月12日):ベルギーのために祈ろう

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • ウォルター・ブルッゲマン氏死去、92歳 現代米国を代表する旧約聖書学者

  • 戦時下でも福音は止まらない ウクライナの伝道者が欧州伝道会議で講演

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

  • 「ハーベスト・ジャパン2025」開催決定! “世界的な癒やしの器” ギエルモ・マルドナード牧師が来日

  • 『天国は、ほんとうにある』のコルトン君、臨死体験から22年後の今

  • 1990年代生まれのプログラマー、カトリック教会の聖人に

  • 【ペンテコステメッセージ】約束の成就と聖霊の力―ペンテコステの恵みにあずかる 田頭真一

  • クリスチャンロックバンド「ニュースボーイズ」元ボーカルに性的暴行・薬物疑惑

  • 大統領選の結果受け韓国の主要キリスト教団体が相次いで声明、和解と相互尊重を訴え

  • フランクリン・グラハム氏、ゼレンスキー大統領と面会 和平求め祈り

  • 淀橋教会、峯野龍弘主管牧師が引退し元老牧師に 新主管牧師は金聖燮副牧師

  • 「みにくいアヒルの子」など数々の童話生み出したアンデルセン自伝 『わが生涯の物語』

  • 米南部バプテスト連盟、同性婚、ポルノ、中絶薬の禁止を求める決議案を可決

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.