Skip to main content
2025年7月14日09時06分更新
クリスチャントゥデイ
メールマガジン サポーターのご案内
メールマガジン サポーターのご案内
Facebook Twitter
  • トップ
  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
  • 記事一覧
  1. ホーム
  2. 論説・コラム
  3. コラム
生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯

生命への畏敬―アルベルト・シュヴァイツァーの生涯(11)人間が真に偉大になるとき

2016年12月23日05時54分 コラムニスト : 栗栖ひろみ
  • ツイート
印刷
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー

彼はヨーロッパに一度戻り、ヘレーネ夫人と娘レーナと共に束の間の憩いの中に過ごした。しかし、アメリカその他から講演の依頼があり、演奏のほうも続けなくてはならないので、長く留まることはできなかった。1927年から1年間スウェーデン、デンマーク、オランダ、そしてイギリスを講演して回る。

翌1928年にドイツに戻ったとき、フランクフルト・アム・マインにて「ゲーテ賞」を受けることになった。彼はこの賞金で自分の家を建てた。父が亡くなり、ギュンスバッハの牧師館に住むことができなくなったためである。

しかし、彼は苦しい生活であえぐドイツの同胞のことを忘れず、賞金を自分のために使うことに罪悪感を覚えた。そこで彼は、ドイツ国内で「社会福祉事業」と「海外伝道会」のために講演を行い、それが「ゲーテ賞」と同額になるまでやめなかったのである。

1929年。3度目にランバレネに渡る。このたびは彼の健康を心配してヘレーネ夫人が付き添った。この船の中で『使徒パウロの神秘主義』が完成。ランバレネ病院はよく守られ、さらに発展していた。

神経病患者のための新しい建物が建つことになったが、これはモード・ロイデンの「ギルドハウス会」からの寄贈であった。その後、重病人のための大きなバラックと食料貯蔵のための倉庫、そして付き添いの人のための宿舎を建てる必要に迫られたが、この時アルザスの材木商G・ツーベル氏がオゴーウェ地方を去ってヨーロッパに帰るに当たり、最後の奉仕をしたいと、セメントのタンク数個と、セメント造りの家を作ってくれたのであった。

「エデンの園」は毎月、野菜やバナナ、油ヤシなど新しい植林地を少しずつ広げていた。果樹園からはたわわに実った果実を誰でも自由にとることができたが、いつも使い切れないほどの収穫であった。

オイエンボの種の中には珍しい蜜柑(みかん)が混じっていて、今ようやく苗木になったところだった。教会の塔には、アルザスの鋳造所で作った鐘が鳴って祈りの時を告げる。桟橋では夜中、ランプが赤々と燃え、熱帯の夜に希望の光を投げ掛けていた。

1930年1月14日。シュヴァイツァーは55歳になった。この頃には、3人の有能な医師ドクトル・ネスマン、ドクトル・ラウテンブルク、ドクトル・トレンスの協力を得、夫人もそばにいるので、彼はいつになく心にゆとりを覚えた。この年『使徒パウロの神秘主義』が世に出る。また、彼はペンを取り、「生命の畏敬」に関する理念を書き始めた。

「世界は事象のみでなく、また生命である。あらゆる生命に奉仕することによって、私たちの人生は意義あるものとなる」

「人間にとって善とは、生命を生かすことであり、悪とは生命を殺すことである」

「人間にとって自らの生命と同じように、植物や動物の生命も神聖であるときのみ、そしてどんな生命をも力を尽くして助けるときにのみ、人間は真に偉大な存在になれるのである」

この思想は、『わが生涯と思想より』と題する本にまとまり、1931年に出版された。

1932年2月22日。シュヴァイツァーはフランクフルト市に招かれ、フランクフルト・アム・マインで「ゲーテ死後百年祭」の記念講演を行う。この頃ドイツ国民は絶望のどん底にあった。経済的不況にあえぎ、失業者は600万人以上。何千という人が自殺し、何万という人が餓死していた。このような中で、シュヴァイツァーの講演は人々の胸に希望の火をともし、生きる望みを与えた。

その後イギリスへ。モード・ロイデンの「ギルドハウス会」を訪れ、事業を支えてくれた感謝と共に説教をした。ウェストミンスターのマーガレット教会のオルガン演奏は、ラジオで全世界に放送された。オックスフォード大学は「神学名誉博士号」を彼に贈り、セント・アンドリュー大学は「神学および音楽博士号」をそれぞれ贈った。この年、ギュンスバッハの自宅で、彼は『文化哲学』第3巻の『キリスト教と世界の宗教』を完成させた。

翌年アフリカに4回目の滞在をしたかと思うと、1934年には、またヨーロッパへ。オックスフォードのヒッバートでシュヴァイツァーは「近代文化の宗教的危機」と題する記念的講演を行った。彼は聴衆にこう語り掛けた。

「人間は、謙虚さのうちに知に至る道を求めるべきです。われわれが自然への洞察を深めれば深めるほど、自然は生命に満ちているということを一層認識するでしょう。そこで、倫理に対しては次の句が善悪の尺度になるべきです。すなわち、生命を維持することは善であり、生命を妨げたり破壊したりすることは悪だということです」――と。そして彼はなおも語る。

「われわれは今、暗闇の中を歩いている。しかし、われわれは確実に前進しているのです」

会場は、感動のるつぼと化した。

*

<あとがき>

時代の混迷の中で、一体何が善で、何が悪か分からない――というつぶやきがよく聞かれます。しかし、シュヴァイツァーは極めて単純な言葉で、これを示しました。彼はこう言っています。

「人間にとって善とは、生命を生かすことであり、悪とは生命を殺すことである」

そして、さらにこうも語っています。

「人間にとって自らの生命と同じように、植物や動物の生命も神聖であるときのみ、そしてどんな生命をも力を尽くして助けるときにのみ、人間は真に偉大な存在になれるのである」

原文を直訳すると「倫理的存在」という言葉になるそうですが、若い層の方々にはやや分かりにくいと思われるので「偉大な存在」という語に置き換えさせていただきました。

幼い時から動物の虐待や弱い立場の人々の苦しみに胸を痛めてきた彼が、ついに行き着いた「生命への畏敬」は、今や倫理思想の金字塔になっています。

<<前回へ     次回へ>>

◇

栗栖ひろみ(くりす・ひろみ)

1942年東京生まれ。早稲田大学夜間部卒業。派遣や請負で働きながら執筆活動を始める。1980〜82年『少年少女信仰偉人伝・全8巻』(日本教会新報社)、1982〜83年『信仰に生きた人たち・全8巻』(ニューライフ出版社)刊行。以後、伝記や評伝の執筆を続け、1990年『医者ルカの物語』(ロバ通信社)、2003年『愛の看護人―聖カミロの生涯』(サンパウロ)など刊行。動物愛護を主眼とする童話も手がけ、2012年『猫おばさんのコーヒーショップ』で、日本動物児童文学奨励賞を受賞する。2015年より、クリスチャントゥデイに中・高生向けの信仰偉人伝の連載を始める。編集協力として、荘明義著『わが人生と味の道』(2015年4月、イーグレープ)がある。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:アルベルト・シュバイツァー
  • ツイート

関連記事

  • 【聖書クイズ】10ムナを現在の貨幣価値に換算すると?

  • 牧師の小窓(33)福江等

  • 社会的弱者の友として―賀川豊彦の生涯(1)暗い出生

  • 非暴力で差別と闘った人―キング牧師の生涯(1)どうして黒人は差別されるの?

  • 貧民救済に命賭けて―山室軍平の生涯(1) 強さと優しさと

クリスチャントゥデイからのお願い

皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。

サポーターになる・サポートする

人気記事ランキング

24時間 週間 月間
  • 2025年参院選、クリスチャンの候補者も 牧師2人が立候補

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 栄光の富で必要を満たされる神 万代栄嗣

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • ワールドミッションレポート(7月14日):欧州での亡命申請者のために祈ろう

  • 篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(234)聖書と考える「世界で一番早い春」

  • 2025年参院選、クリスチャンの候補者も 牧師2人が立候補

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • Gゼロ時代の津波石碑(4)芥川を自死に至らしめた「ぼんやりした不安」と2つの遺書 山崎純二

  • 日本人に寄り添う福音宣教の扉(226)葬儀文化を受け継ぎ、教会がエンディングを支える時代が来る 広田信也

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 初めの愛に戻りなさい 佐々木満男

  • 栄光の富で必要を満たされる神 万代栄嗣

  • ワールドミッションレポート(7月13日):ザンビアのララ族のために祈ろう

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • 2025年参院選、クリスチャンの候補者も 牧師2人が立候補

  • 米テキサス州洪水、死者100人超える キリスト教サマーキャンプ参加の少女ら多数犠牲

  • 淀橋教会で新主管牧師就任式・祝賀会 金聖燮牧師が6代目に

  • 学校法人聖学院、新理事長に田村綾子氏

  • 教育改革が「日本のリバイバルにつながっていく」 牧師の金子道仁参院議員が講演

  • 「苦しみ」と「苦しみ」の解決(8)「建物の話」 三谷和司

  • いのちの言葉聖書学校、日本語クラス2期生7人が卒業

  • 米国の福音派牧師は半数近くが兼業している 調査で判明

  • 中国・臨汾で2つの「家の教会」の牧師や信者らに有罪判決 最大拘禁9年2カ月

  • 約3年ぶりに死刑執行、日本カトリック司教協議会社会司教委員会と矯風会が抗議

編集部のおすすめ

  • 四国の全教会の活性化と福音宣教の前進のために 「愛と希望の祭典・四国」プレ大会開催

  • イースターは「揺るぎない希望」 第62回首都圏イースターのつどい

  • 2026年に東京のスタジアムで伝道集会開催へ 「過去に見たことのないリバイバルを」

  • 「山田火砂子監督、さようなら」 教会でお別れの会、親交あった俳優らが思い出語る

  • 日本は性的人身取引が「野放し」 支援団体代表者らが院内集会で報告、法規制強化を要請

  • 教会
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
  • 宣教
  • 教育
  • 国際
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
  • 社会
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
  • 文化
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
Go to homepage

記事カテゴリ

  • 教会 (
    • 教団・教会
    • 聖書
    • 神学
    • 教会学校・CS
    )
  • 宣教
  • 教育
  • 国際 (
    • 全般
    • アジア・オセアニア
    • 北米
    • 欧州
    • 中南米
    • 中東
    • アフリカ
    )
  • 社会 (
    • 全般
    • 政治
    • NGO・NPO
    • 地震・災害
    • 福祉・医療
    )
  • 文化 (
    • 全般
    • 音楽
    • 映画
    • 美術・芸術
    )
  • 書籍
  • インタビュー
  • イベント
  • 訃報
  • 論説・コラム (
    • 論説
    • コラム
    • 執筆者一覧
    )

会社案内

  • 会社概要
  • 代表挨拶
  • 基本信条
  • 報道理念
  • 信仰告白
  • 編集部
  • お問い合わせ
  • サポーター募集
  • 広告案内
  • 採用情報
  • 利用規約
  • 特定商取引表記
  • English

SNS他

  • 公式ブログ
  • メールマガジン
  • Facebook
  • X(旧Twitter)
  • Instagram
  • YouTube
  • RSS
Copyright © 2002-2025 Christian Today Co., Ltd. All Rights Reserved.