在日コリアンと日本人が共に暮らせる老人ホーム「故郷の家・東京」が完成 竣工式には400人が参加

2016年10月20日20時55分 記者 : 坂本直子 印刷
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竣工式には、支援者や関係者など約400人が集まった=17日、「故郷の家・東京」(東京都江東区)で

社会福祉法人「こころの家族」(尹基=ユン・キ理事長)がかねてから建設を進めてきた特別養護老人ホーム「故郷の家・東京」(東京都江東区)の竣工式が17日、同施設内で行われた。支援者や関係者など約400人が集まり、関東では初となる、在日韓国・朝鮮人が日本人と共に暮らせる老人ホームの完成を祝った。

式典は、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会の峯野龍弘主管牧師の司式による記念礼拝から始まった。韓国CGNTV社長の柳在乾氏が開会の祈りをささげた後、韓国ミラル財団理事長の洪正吉牧師が、ガラテヤの信徒への手紙6章からメッセージを取り次いだ。

洪牧師は、「善を行いなさい。気落ちせずに諦めなければ、時が来て解決してくれる」と述べ、人間は善を行うためにつくられたと聖書に書いてあると説いた。その上で、「善とは何か」と問い掛け、正義だけの善、愛だけの善はなく、イエス・キリストの十字架によってしか実現しない100パーセントの正義と100パーセントの愛が一緒になってこそ成し得るものだと話した。

洪牧師は、「正義と愛は対立の関係でもあり、善を行おうとするとき、正義の側と愛の側から攻撃に遭い、誤解され、さらに無関心という冷たい仕打ちを受け、気落ちしてしまう」としつつも、「聖書では、全ての種には『恵みの時』が必要と言っている。恩寵の御手を見上げ、その方の声を聞き、諦めなければ、時が来て刈り入れることができる」と語った。

在日コリアンと日本人が共に暮らせる老人ホーム「故郷の家・東京」が完成 竣工式には400人が参加
「故郷の家・東京」竣工式の礼拝でメッセージを取り次ぐ韓国ミラル財団理事長の洪正吉牧師

「故郷の家・東京」にも、これまで外部からたくさんの誤解や反対があったことを明かし、「それでも今日私たちはこの場に集まって、神が望まれた現場を見ている。ここが神様に会えるプラットホームであり、日本と韓国が抱擁し合う美しい場所になるでしょう」と述べた。

最後に「たゆまず善を行いましょう。飽きずに励んでいれば、時が来て、実を刈り取ることになります」(ガラテヤ6:9)との聖句を引用し、「諦めなければ、その先には恩寵の御手が待っている。その道しるべが、今日東京に建てられた『故郷の家』です」と話し、ハレルヤと神様をたたえた。

礼拝後に行われた記念講演では、延世大学名誉教授の金東吉氏と神奈川県立福祉大学名誉学長の阿部志郎氏が登壇し、「次世代に伝えたい韓国と日本の親孝行文化」とのテーマで話した。

在日コリアンと日本人が共に暮らせる老人ホーム「故郷の家・東京」が完成 竣工式には400人が参加
「次世代に伝えたい韓国と日本の親孝行文化」とのテーマで話す延世大学名誉教授の金東吉氏

金氏は現在、韓民族元老会共同議長、太平洋時代委員会理事長も務め、多数の著書を執筆するほか、韓国の多数のテレビ番組に出演し、社会に対して積極的に発言する社会評論家としても知られている。金氏は、韓国と日本が1つになることを切望する一方で、今の日本の政治体制の中で両国が和解することの難しさを述べた。また、金氏の兄は、日本軍に徴兵され、終戦の2カ月前に戦死している。金氏は、「それでも日本を愛することができるのは、キリスト教の精神があるからだ」と述べた。

金氏はこの日、日本語で語ったが、この日本語は、70年前に強制的に習ったもので、戦後は日本語を話す必要は全くなかったという。今回その日本語を使って伝えたいのは、「故郷の家・東京」の関係者に「ご苦労さまでした。ありがとうございました」の一言だと胸の内を語った。金氏は、韓国人が日本で活躍することは難しいと話し、「こころの家族」の尹理事長はじめ関係者に敬意を表した。

金氏は、どの子どもの中にも親孝行の気持ちは生まれつきあるが、産業社会の中にあって、韓国でも以前のように親子が一緒に暮らすことができなくなり、介護の在り方が変わってきていると語った。金氏は、韓国でも親が子どもと住めたり、すぐに会うことができたりするアパートを作ることが必要だと述べた。

金氏は、「老人は生きることが難しい。だからこそ何か希望が必要になる」と話し、テニスンの「Crossing the Bar」を朗唱した。「この世は全てではなく、この世の後に私たちが生きていかねばならない世界がある。その世界のために生きることが、今を生きる私たちの責任であろう」と締めくくった。

続いて登壇した阿部氏は、日本と韓国の墓の在り方の違いを語り、日本においては、長男しか家の中で重んじられず、その他の子どもたちは家のために犠牲になっていたとし、この家族制度が、現在の福祉の問題をはらんでいると指摘した。一方韓国では、親、子、孫と秩序が守られ、日常の場面において敬老の文化が根付いていることを自身の体験から語った。

在日コリアンと日本人が共に暮らせる老人ホーム「故郷の家・東京」が完成 竣工式には400人が参加
金氏と共に記念講演を行った神奈川県立福祉大学名誉学長の阿部志郎氏

また、「母親は全てを子どもに分け与える愛を持つ。看護師も保育士も母親の慈しみをモデルにしなければならいない」と話し、尹氏の母である田内千鶴子の孤児たちに対する愛の深さを述べた。そして、その思いを受け継いだこの「故郷の家」は、尹氏たちの「親孝行の産物」だと話した。

続いて、日本は近代化とともに経済が発展していく中で、物を大切にして人権を軽んじる風潮が生まれたが、家族の愛情は弱まり、家族社会は崩壊したのだろうかと問い掛けた。自らの問い掛けに対して阿部氏は、「神戸の震災や、東日本大震災で明らかになったのは、崩壊した家族の姿ではなく、むしろ家族の絆の強さだった」と話した。

阿部氏は、「津波で全てを失ったときに、人々は祈ることしかできなかった」と言い、「宗教に関係なく、万策尽きたときに祈る姿こそ、人間にとって最も美しい姿だ」と力を込めた。その上で、「この『故郷の家・東京』も祈りによってできた」と話し、30年に及ぶ祈りの力を語った。さらに、この建物の設計を生み出したビジョン・夢が、差別と偏見に苦悩する在日韓国人に対する尹氏夫妻の感謝であり、親孝行だと述べた。

阿部氏は、支援者や工事関係者にお礼を述べ、最後に「年寄りにどう仕えるかは、その国の品格を決める。『速く行きたければ、1人で行け。遠くまで行きたければ、皆で行け』、この『故郷の家』がいつまでも年寄りの場所として続きますように、皆さんと遠くまで行こうではありませんか」と呼び掛けた。

在日コリアンと日本人が共に暮らせる老人ホーム「故郷の家・東京」が完成 竣工式には400人が参加
午餐会には、高齢者の健康食「韓国のお粥」がふるまわれ、施設の食堂で交わりの時を持った。

「故郷の家」は、韓国孤児に「オモニ」と慕われた日本人クリスチャン女性、田内千鶴子の思いを受け継ぎ、長男である尹氏が呼び掛けて、在日韓国・朝鮮人と日本人が一緒に暮らせる老人ホームとして、1989年に大阪府堺市で初めて開設した。その後、大阪市、神戸市、京都市にも建てられ、「故郷の家・東京」は全国で5つ目となる。開設は11月1日を予定している。

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