キリスト教主義大学の目指すべきグローバル化とは? キリスト教学校教育同盟関東地区大学部会研究集会

2016年3月1日14時35分 記者 : 坂本直子 印刷
+キリスト教大学の目指すべきグローバル化とは? キリスト教学校教育同盟関東地区大学部会研修会
(写真左から)青山学院宗教部長のシュー土戸ポール氏、明治学院大学教養教育センター長の永野茂洋氏、東京女子大学准教授の棚村惠子氏、司会の新島学園短期大学教授の小林俊哉氏=2月26日、青山学院大学(東京都港区)で

キリスト教学校教育同盟関東地区大学部会は2月26日、「キリスト教大学の目指すべきグローバル化」とのテーマで、2015年度研究集会を青山学院大学(東京都港区)で開催した。文部科学省による「大学のグローバル化政策」のもと、各大学で施策づくりが急速に進む中、グローバル化をキリスト教主義大学という文脈の中で考え、今後何を目指し、何を達成すべきなのか、その方向性を探った。

集会に先立って行われた開会礼拝では、聖学院大学副院長の山口博氏がコリントの信徒への手紙一9:19~23を本文に「福音に共にあずかるため」と題してメッセージを取り次いだ。集会はシンポジウム形式で行われ、講師として青山学院宗教部長のシュー土戸ポール氏、明治学院大学教養教育センター長の永野茂洋氏、東京女子大学准教授の棚村惠子氏が登壇し、それぞれの観点から、キリスト教主義大学の目指すべきグローバル化について語った。

シュー土戸氏は、「必然的に国際教育であるキリスト教教育」と題して、キリスト教教育と国際化がどうつながるかを理論的観点から語った。シュー土戸氏は、「キリスト教は、初代教会誕生の時から国際的であったのだから、キリスト教教育も国際的であることが自然なのではないか」と切り出した。キリスト教の観点から国際教育を考える場合、「人間は神の被造物」「神の前では皆平等」「文化は相対化されるもの」といった点が大切だと話し、文科省が進めるグローバル化教育とは必ずしも一致しないことを説明した。

シュー土戸氏は、「文科省の進めるグローバル化政策で良いものを取り入れ、その上でキリスト教学校の特色を出すことが大切」だと語った。キリスト教活動や共同研究では、意図的に国際教育を取り入れることで、より良いキリスト教活動ができ、学生間の交流を通してキリスト教理解も深まると話した。さらに、教会の国際的なつながりを通して海外の学校とも良い関わりを持てると述べた。

続いて永野氏は、「『内なるグローバル化』への対応と文化間能力の育成」とのテーマで話した。2012年に出された「グローバル人材育成戦略」(グローバル人材育成推進会議)は、グローバル化について、英語のレベルをどんどん上げることに特化していると指摘した。「グローバル社会に生きる人材は、高い言語力を持つ者だけではない」と批判した上で、グローバル人材ではなく、グローバル市民の育成が必要だと訴え、言語能力ではなく、相手とどのようにコミュニケーション、関係性を作っていけるかを教えることが必要ではないかと述べた。

さらに、外国にルーツを持つ人が、新潟県人と同数いることを伝え、差別を生み出す「垂直化」のベクトルを、平等・対等を目指す水平方向に転換させる働きが必要で、それが他者への貢献であり、奉仕であるとし、「グローバル社会におけるキリスト教大学のミッションはここにある」と語った。さらに、地域の問題にコミットしていく人材を生み出していかなければならいこともキリスト教主義大学の役割だと述べた。

棚村氏は、東京女子大学を事例として「和解の使者として―東京女子大学のグローバル教育の姿勢」をテーマに話した。創立100周年を迎える同大の歴史の遺産は、新渡戸稲造、安井てつ、A・K・ライシャワーという3人の「和解の使者」だ。棚村氏は、グローバルな視点を持った和解の使者のDNAを同大が受け継いでいることを、学生に教えていく作業が大事だと述べた。そして、グローバルな活動に実際に触れる機会を提供することが、和解の使者になっていく動機づけになるとし、「動機づけがしっかりしていないと語学教育も成果が上がらない」と語った。

その一方で「キリスト教主義大学がキリスト性を維持するのは大きな課題で、どちらかを取ればどちらかが崩れる。キリスト教主義大学の存在意義が問われている」と述べ、「何のためのグローバル教育なのか、根本的なところを突きつけられている」と話した。「全ての人が国際的に活躍して仕事をするわけではなく、それぞれが神様によって置かれた場でどのように仕えていくか、奉仕と犠牲といったことを問い続けなければならない」と述べた。

志願者の減少など、少子化していく日本の中で大学がどう生き残れるか、何を売りにするか。キリスト教人格教育の理想と今日の社会の現実とを考えると厳しいものがあるとしながらも、「キリスト教主義大学というからには、神様の期待を裏切って栄えていっても意味がないのではないか」と語った。そして、「あらためて、東京女子大学の歴史とアイデンティティーとを、今後どのように教育していかなければならないか、考える機会を頂いた」と締めくくった。

シンポジウムの後、質疑応答・討議の時間が持たれた。「東アジアの中のキリスト教学校として見る視点も必要ではないか」「日本の大学は日本語で守られすぎていて、コスモポリタン的要素に欠ける」など、英語教育の必要性を重視する意見が出る中、「英語教育を目的にしすぎているのではないか。英語そのものを目的にすると、何のために勉強するか分からなくなる」といった意見も出された。

また、「英語という言葉の背景には、文化も付いてくるはずなのに、一律化した文化が日本を襲っている。問題視すべきではないか」といった問題提起や、「地方の小さな大学においてはグローバル化よりもローカルのほうに重点が置かれてしまう。この二つのバランスを支えるベースにキリスト教を置く必要がある」といった意見もあった。

この日の司会を担当した、同部会委員長で新島学園短期大学教授の小林俊哉氏は、「結論は出なかったが、さまざまな話題が出た。現場に持ち帰って今後の課題として検討してほしい」と話し、敬和学園大学学長の山田耕太氏の閉会祈祷をもって閉会した。

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