【インタビュー】人間形成のための一貫教育体制 田園調布雙葉中学・高等学校の滝口佳津江校長

2015年12月26日21時05分 インタビュアー : 坂本直子 印刷
+人間形成のための一貫教育体制 田園調布雙葉中学・高等学校校長滝口佳津江氏にインタビュー 
田園調布雙葉中学・高等学校の滝口佳津江校長。田園調布雙葉学園は来年、創立75周年を迎える=11月26日、田園調布雙葉中学・高等学校(東京都世田谷区)で

日本のクリスチャン人口は1パーセントといわれながら、ミッションスクールと呼ばれるキリスト教系の学校は全国に380校以上あり、そのほとんどが中高一貫校だ。中には幼稚園、小学校から一貫教育体制をとっているところもある。このことを考えれば、クリスチャン人口をはるかに上回る日本人が数年間でもキリスト教教育に触れてきたということになる。今回、1941年の創立以来、幼稚園から高校までの一貫教育体制をとってきた田園調布雙葉中学・高等学校(東京都世田谷区)の滝口佳津江校長に、ミッションスクールとしての教育方針と、卒業生たちの進路について話を聞いた。

ミッションスクールが一貫教育体制を続けてきたのはなぜですか。

キリスト教系の学校もそれ以外の私立学校も、「こういう人間を育てる」という揺るぎない教育理念や建学の精神を持っています。英語や数学といった教科ならば集中的に教育できるかもしれませんが、人づくり・人格形成というものはインスタントにできるものではありません。人間性を育てるには、それなりの時間と忍耐が必要です。「ゆっくり、じっくり、だんだんと」という世界だと思います。

そのために長い時間をかけて同じ環境での教育が必要ということですか。

本校の場合は、幼稚園60名、小学校60名、合わせて約120名の集団がそのまま中学校・高校へ上がりますので、長い生徒で14年在学です。途中から姉妹校、他のカトリック学校から一家転住されるご家庭の生徒を受け入れたりしますが、それでもほとんどが12年の在学となります。その長い歩みの中、日々の関わりの中で、自然に染み込むように身に付ける価値観というものが、人をつくっていくと思います。

特に、自分が神からかけがえのない存在として愛されていることを受け入れることや、他者のために喜んで自分を使っていくことが自然なこととなる喜び・感謝・奉仕・祈りなど、これらを「言われているから」あるいは「やらされている」ような理解のレベルを抜け出し、本当の自分のものにするには、やはり、「ゆっくり、じっくり、だんだんと」の歩み・関わりが不可欠と思います。

現在、公立学校にも増えている中高一貫教育とは違いますか。

私学が独自の教育理念・建学の精神を持つことにおいて、公立学校と私学とは大いに異なります。また、長さを確保する目的が、公立学校ではその時代の国家の求めるto doを育成する意味合いを強くするかもしれませんが、私学では、それぞれが目指す人間像に向かってto beを育む色合いが強く、ここにも違いがあると思います。特に時間をかけてしっかり染み込ませる人格教育・人間教育の部分に関して言えば、例えば体験的プログラムを長きにわたって経験的に積み上げ、ゆっくり、じっくり、人間を育てていくミッションスクールには、公立学校にはない良さもあると思います。中でも宗教教育に関して、私学の一貫校はその特性を生かし、思春期の生徒たちに良き関わりを伝統的に続けていると思っております。

そんな中で田園調布雙葉の特色について教えてください。

雙葉には姉妹校が五つありますが、幼稚園から高校までの竹筒型のくびれがない一貫教育は、田園調布雙葉だけです。昨日も姉妹校の校長の集まる研修会があったのですが、そこでも、特に宗教教育については、田園調布雙葉のような竹筒型一貫校は独自のやりやすさを持っていると指摘されました。

小さい頃から自然に神の前に手を合わせる環境の中で育っていることもあって、宗教というものについて疑問を持ったり、違和感を感じたり、これまでとは違った世界だと感じたりすることがありません。お祈りなども小さいときから習慣付けられている環境づくりができているのだと思います。そして、生徒、教員、家庭も含めてつながりがとても深く、その関わりの濃さからくる人的な交わりの深さも含めて、深い意味があると思っています。

進学については、どのような方針で指導されているのでしょうか。

進学については、本人の希望を重視しています。それぞれの生徒が本当の自分になる、大切な選択です。田園調布雙葉はカトリック学校ですが、カトリック系、あるいはキリスト教系の大学に行きなさいという強制はいたしません。オープンキャンパスなどを体験し、雙葉と価値観が似ているキリスト教系の大学に行きたいという子どもたちもいますが、大学レベルになると、そういったことよりも、社会における自分のミッションということに照らし合わせて進路先を考えています。社会的に貢献できる自分の役割というものを中心に見ていったときに、自分の与えられた使命を果たす力を育てていくに最もふさわしい進路を選んでいくことになります。

一貫教育を受けてきた生徒たちは、外の世界に行くことに不安はありませんか。

中高生くらいからは、例えばボランティアに参加する生徒も多く、外からいろいろな情報が入ったり、いろいろな世界の出会いも体験します。また、大学受験において塾などにも行きますので、子どもたちはここの中だけでなく、他とのつながりも持っています。確かに女子校で10年以上育ってきて、雰囲気が変わるので不安を覚えるという生徒たちもいると思いますが、私自身の経験から考えても、共学の大学で驚いたこともたくさんある一方、むしろ新鮮な出会いを楽しみながら、自然に馴染んでいくという感じだと思います。

ミッション系の大学とミッションスクールとのつながりについて、何か特別に考えていることはありますか。

同じミッション系の大学に推薦枠をいただいておりますが、特にクリスチャンの生徒を優先して推薦するわけではありません。信者・未信者にかかわらず、ミッション系の大学でこういうことを学びたいとか、キリスト教に興味があり、同じ価値観の大学であるからこそ、この大学で学びたいという志望動機を聞き取り、その上で大学側の意向にマッチしていれば推薦します。クリスチャンであるなしにかかわらず、その生徒の生き方、価値観、希望を聴くことになります。

また、受け入れてくださるミッション系大学も、ミッションスクールで大切にしているものを自然に身に付けて入学したミッションスクール育ちの卒業生が、大学生活でもミッションスクールの良さを継続して大切にし、積極的に生かそうという姿勢を持つことが喜ばれること、これは大変うれしいことです。こういったところに、ミッション大学とミッションスクールの連携の良さも表れると思います。

田園調布雙葉ではクリスチャンの学生は1割程度ということですが、未信者の家庭の子どもを受け入れるに当たっては、どのようなお考えをお持ちですか。

田園調布雙葉で学ぶのに、子どもたちやそのご家族が信者でなければということはありません。むしろそうでない方々がキリスト教に触れるチャンスとしても、学校の存在価値が生かされていると思います。実際、私自身がクリスチャンの家庭で育てられたのではなく、むしろカトリック学校との出会いがキリスト教との出会いであったのです。

また、保護者を対象とした「四季のお話会」という宗教講話の機会を持っていますが、これは、学校でどういう価値観に基づく教育を行っているかを紹介するものです。また、季節に合わせて、例えば11月はカトリックでは死者の月でもあるのでキリスト教の死生観、冬になればクリスマスの意味、春にはご復活の意味を保護者に伝えることもあります。学校で大切にしている価値観に、生徒は授業などで触れるチャンスがありますが、保護者にはそういった機会を通じて紹介しています。

滝口校長も田園調布雙葉の出身とお聞きしましたが。

先にも申しましたように、田園調布雙葉に在学していたときは、私自身もそうですが、家族の中にもクリスチャンはいませんでした。洗礼を受けたのは大学2年の20歳の時です。そういう意味でも、私はここで宣教の働きの場をいただいたと受け止めています。その使命をこれからも大切にしていきたいと思っています。

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