元暴走族のリーダー「伝説のワル」だった野田詠氏牧師が語る子育て

2016年2月8日15時07分 記者 : 守田早生里 印刷
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講演する野田詠氏(えいじ)牧師。子育て中の母親、父親たちが熱心に講演に聞き入った=1月28日、東京キリスト宣教教会(西東京市)で

「子育てに成功者はいない!」。そう語るのは、東大阪市にあるアドラムキリスト教会の野田詠氏(えいじ)牧師。東京キリスト宣教教会(西東京市)で1月28日、「大人・親たちのためのセミナー~今、子供たちを守るためにできること~」と題した講演会が開催された。会場には、子育て真っ最中の母親、父親を中心に教会内外から野田氏の話を聞きに、多くの人が集まった。

昨年、『私を代わりに刑務所に入れてください』(いのちのことば社)を出版した野田氏。少年時代、非行に走り、暴走族のリーダーにもなった。10代で暴走族に入り、窃盗、暴力行為、暴走行為などで4度鑑別所に入る。4度目の少年院の中で聖書に出会い、教会へ。現在は、少年院から退院してきた少年を受け入れ、更生、自立へと導く活動を行っている。「『失敗』した経験から、逆説的に何か伝えられるのでは」と、子育てに関する講演会なども度々開いている。

「誰にでも、悪の誘惑に負けて、非行に走ったり、犯罪に手を染める可能性がある」と野田氏は話す。「多くの若者が携帯やスマホを所持し、ネット社会に生きる子どもたちは、以前よりもずっと困難な時代に生きている」というのだ。そこで求められるのが、両親と子どもの関係である。

非行に走った少年時代、野田氏には、2人の忘れられない「おじさん」と「おばちゃん」がいるのだという。

鋭い目つきをし、爆音を轟(とどろ)かすバイクに跨(またが)る野田少年を、皆が汚いものを見るような目つきで見た。誰もが「関わりたくない人」「あの子は非行少年」と見下した目で彼を見ていた。それを野田少年は、しっかりと感じていた。

しかし、この「おじちゃん」と「おばちゃん」だけは違っていた。いつも温かい目で見ていてくれた。あいさつ程度しか交わしたことのない2人だったが、その目に映る自分が、汚い者でもダメな者でもないことが分かった。野田少年も、精一杯にこやかにあいさつを返した。

「人間は誰しも、他人の目に映る自分を気にするもの。非行に走る少年たちも、こうした他人の目に映る自分の姿を敏感に感じ取っているのだ」という。

アドラムキリスト教会の周辺には、現在、8人の少年が住んでいる。皆、非行に走ったり、少年院に入ったりした経験のある少年たちだ。そのうち5人は、児童養護施設の出身者だという。

彼らは時々、タバコを吸っては教会の前に吸殻を捨ててしまったりと、私たちの目からすれば「問題行動」を起こすことがある。しかし、これを「問題行動」と思い、頭ごなしに叱ったとたん「彼らの心は貝のように閉ざされてしまう」という。

まずは「そんなことをしたら、私は悲しい」と彼らにしっかり伝えること。そして、「私は、お前のことが大事なんだ」と繰り返し訴えていくことが必要なのだという。彼らにとって、そうした一見すると「問題行動」と思えることも、何かを訴える「必要行動」といった場合もあるのだと話す。

薬物に手を染めたり、非行に走ったりする少年たちの特徴を大きく二つのタイプに分けられると野田氏は話す。何らかの事情や、家族構成などの事情により、愛情を感じずに育ってしまったタイプは、幼少期から寂しさを感じていることが多い。一方で、愛情過多、過干渉に代表される、愛情を間違えた形でかけ過ぎてしまった親のもとで育った子どももいるのだという。

特に後者は、非行に走った場合、更生をさせるのに、非常に手を焼くのだと話した。その象徴的な例が「携帯」や「スマホ」だという。現在は、いくらかけても料金が変わらないプランなどがあり、請求が来てから金額の膨大さに驚くということは少なくなった。

しかし、それでも携帯の料金が自分で支払えないとなると、親に相談をしてくる。毎月のようにそういったことが重なり、やがて薬物やギャンブルに手を出すようになっても、薬物を買うお金を親にせびるようになるというのだ。

「お金をくれなければ、強盗するぞ!」「お金をくれないなら、リストカットするぞ!」などの脅しをかけられると、親は「他人様に迷惑をかけるくらいなら」と、しぶしぶお金を出す。そうなると、悪のスパイラルの中にずるずると引き込まれるのだという。

「助け船を出してしまうことで、かえって更生を遠ざけてしまうことがよくある」と話す。こうした場合は、毅然(きぜん)としてお金を出さないことが必要だと野田氏は助言する。「中毒に陥った子どもたちには、『お金を出してくれない=私にはもう愛情がない』と稚拙な考えに走る子がいる。なぜお金を出さないのかを説明し、命がけでアドバイスすることが必要。親の本気を見せることで子どもが変わってくるのでは」と話す。

子どもに親ができる最大のことの一つが、「謝罪」ではないかと野田氏は話す。小学3年生の時、野田氏は、母親からのこんな言葉がトラウマになったという。

「もしお兄ちゃん(長男)が亡くなったら、私は骨をかじりながら、頭がおかしくなってしまうかもしれないが、詠氏が亡くなっても泣くくらいだ」

その時のことははっきりと覚えており、その後の彼の人生に大きな影を落としていくこととなった。「女手一つで私たち兄弟を育ててくれた母には感謝をしている。良い母だったと思うが、この一言は、相当こたえた」と話す。

しかし、19歳の時、裁判所で4度目の「少年院送致」の判決が出た途端、傍聴に来ていた母親が泣き崩れながら、「私が悪かったんです! 私の育て方が悪かったから、この子がこんな悪いことをするようになってしまいました! 私をこの子の代わりに刑務所に入れてください!」と嗚咽(おえつ)しながら泣き叫んでいる声が聞こえた。

野田氏はその時に、母親からの本当の愛を感じた。それが、母からの「公式な謝罪」を受け入れた瞬間だった。「親が謝罪をするということは、どこか親の権威がなくなるような気がするかもしれない。しかし、謝ることで、逆に親の潔さを子どもに見せることができる」とその大切さを訴えた。

講演後に行われた質疑応答では、次々に手が上がり、時間いっぱいまで質問が寄せられた。

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