N・T・ライト元ダラム大聖堂主教「教会と政治を分離すべきではない」

2015年10月26日21時38分 翻訳者 : 木下優紀 印刷
+N・T・ライト元ダラム大聖堂主教「教会と政治を分離すべきではない」
英国国教会の元ダラム大聖堂主教であるN・T・ライト氏

英国国教会の元ダラム大聖堂主教である新約聖書学者のN・T・ライト氏は20日、英ロンドンの聖パウロ大聖堂で、神学と政治が「十字架による神権政治」として再一致するよう呼び掛け、キリスト教徒に対しイエスの「御国プロジェクト」に参加するよう呼び掛けた。

「福音書は、十字架がどのように御国、つまり救い主の御国の勝利を勝ち取ったかについての物語を語っています。どのように御国が到来するかは、この世の国々のようではなく、全く違う方法によります」とライト氏は語り、「十字架による神権政治」を呼び掛け、啓蒙主義の後に起こった政教分離を否定した。

啓蒙主義が入って以来、欧米諸国は天と地に分かれた二重の観点から世界を見てきており、結果として福音書を誤った枠組みに押し込めてきたとライト氏は指摘した。ライト氏は、教会が世俗主義との妥協によって、十字架のメッセージを「権力や力に対する究極的な勝利から、単純に個人的な罪を扱うメカニズム」に変えてきてしまったと論じた。そして、イエスは「十字架によって、神の主権的な救いによる統治を天で行っているように地でも行うために」来たとし、「現代世界と現代の教会の多くは背き後退した」と語った。

ライト氏は、啓蒙主義後の枠組みによって、福音のメッセージは「それだけでは不十分で、全体像をつかみきれていない」個人的な救いの物語を意味するようになっていったと指摘。「(イエスは)新しい『宗教』や死後に天国に行くための秘密を人々に語っていたわけではありません。私たちが天国に行く方法でもなく、どのように天の統治が地に来ることができるかについて語っていたのです。新しいエネルギーと抵抗への方向付けという意味はあるものの、ただの抵抗運動ではありません。福音は実にあなたをひっくり返すもので、時に快く、時に非常に不快なものです。とはいえ、個人の精神性を再び秩序付ける方法ではありません。イエスは地に神の統治、神権政治を開始するために来たのです」と語った。

一方、個人的な救いや社会的な活動は、真実に福音の働きではあるが、個々に捉えた場合、「捻じ曲げられる」ものだと強調した。

「ポイントは、この世が異なる場所であることによって、イエスによって何かが起こったということです。私たちが願い、期待するかもしれない方法と違うものではありません。しかし新しい創造、新しい神殿、新しい人間性について語り、また語るだけではなく、それに生きるために不可欠な新しい感覚を呼び起こさせるものによって、何かが起こるのです。イエスの呼び掛けをすぐに聴くためには、御国プロジェクトの一部になることです」

ライト氏はこのことを説明するのに、もし一般人に「イエスが今日の世界に語らなければならないこと」について尋ねれば、恐らく教会と政治の大きな分離について書いたマルコによる福音書12章17節にある「イエスは言われた。『皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい』」を引用するだろうと述べた。

しかし、ライト氏は、皮肉なのは、当時イエスはほぼ反対の立場からこのことに言及したと語った。「文脈に照らし合わせるならば、これは政教分離の義務なんかではありません」。カエサルが硬貨について道理にかなった主張ができることは認めるが、全ての人間の中にある神の形は全ての権威の主張を凌駕するとライト氏。「イエスが神の御国を語るときには、その時こそ神が王となり、カエサルの王国に挑むだけでなく、カエサルが建てたようなタイプの王国に挑む方法で統治する時だということを実に意味していたのです」と語った。

ライト氏は、われわれが現在のドグマを福音書の物語に持ち込み、捻じ曲げ、「神の御国の全体的な意味は、唯一の真の神が世界の悪い王に終わりを告げ、代わりに全く異なる王国を建てることを宣言すること」というポイントを逸してきたと警告した。

「この世の統治者たちはそれぞれの方法で(国を)治めます。しかし、人の子が仕えられるためではなく仕えるために、また多くの人の贖(あがな)いとして命を渡されるために来られたため、私たちは異なる方法で治めます。御国は、その頭にある力なのです」

ライト氏は、今日への暗示は既に語られている終末論だとし、つまり、終わりの時に始まることは、イエスの働き、死と復活を通して起こり始めたことであり、また世界はそのために急速に異なったものになってきているということだと語った。

「欧米の啓蒙主義の主張は、イエスが来たことによって新しい宗教ができただけであり、本当のターニングポイントは科学と技術の発展、欧米諸国の民主主義が起こった18世紀にあるというものです。ですので、啓蒙主義は福音のメッセージを憎悪しています」

今日の政治的状況についてライト氏は、このような衝突は今日の私たちの苦しみの陰にあると語った。

「科学は神からの賜物ですが、御国そのものではありません。問題は、西欧諸国が啓蒙主義の物語にどっぷりとつかってしまっているために、この世の悲劇が文字通り私たちの足元に迫っているときに、何を間違ってしまったかを理解できないことにあります」

難民危機への応答として、ライト氏は啓蒙主義後の物語でなく、貧しい人が優先される福音の物語に戻るよう呼び掛けた。

「イエスの普遍的で賢明な統治下にある世界という福音書のビジョンについて、貧しい人、無力な人の必要を満たすことを絶対的に優先する統治という聖書的な理想を知りたいならば、まず詩編72編を読んでください。そして、イエスが現にそれを行っているのを見てください」

※この記事は英国クリスチャントゥデイの記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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