深刻化する「イスラム国」による女性への暴力 イラク現地駐在スタッフが都内で報告

2015年9月15日20時41分 記者 : 守田早生里 印刷
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トークイベントでは、JIM−NETイラク駐在スタッフの榎本彰子さん(中央左)のほか、人権問題に詳しい弁護士の伊藤和子さん(左)、女性自衛官の裁判支援を続ける七尾寿子さん(中央右)が語った=8月26日

過激派組織「イスラム国」(IS)による殺害事件、遺跡の破壊など、その残忍性が広くメディアなどを通して伝えられている。一方、あまり大きく報じられることはないが、多くの女性たちがISから性暴力を受けている。イラクやその近隣諸国で、医療支援を中心に活動しているNPO法人「日本イラク医療支援ネットワーク」(JIM-NET)が8月26日、イラク現地から一時帰国している職員の榎本彰子さんらを招き、都内でトークイベントを行った。榎本さんは、イラク北部のアルビル付近で活動。今年に入り、ISから逃れてきた女性たちに聞き取り調査を行っている。「性暴力を受けた女性は、戦争が終わっても、精神的、肉体的に生涯にわたって影響を受ける。国際社会は、彼女たちの過酷な現状を無視してはいけない」と訴える。

「国連の安保理決議などによって、女性と平和、安全保障に関する法の整備が進んでいるものの、世界中の紛争下では、性暴力によって傷つく女性がなかなか減っていかない現状がある」と榎本さんは言う。JIM-NETの活動は、主にイラク国内の小児がんの子どもたちへの支援、難民支援などが中心だ。現在では、2011年に内戦が勃発したシリアからイラクに逃れてきた難民や、イラクのISの支配地域から逃れてきたヤジディ教徒、キリスト教徒などの国内避難民の支援なども行っている。

イラク北部の難民キャンプには、広大な土地にたくさんのテントが張られている。また、建てかけのビルの中に板のようなもので仕切りを作り、身を寄せ合って暮らしている人々もいる。榎本さんがトークイベントで使用した映像の中には、プレハブのような建物でできた集落もあった。榎本さんによると、そこに住むのは、イスラム教徒もいるが、半数以上が紛争地から逃れてきたキリスト教徒たちで、その集落を世界中のキリスト教会が早くから支援してきたという。

こうした活動の中で、今年1月にISの支配地域から逃れてきたヤジディ教徒の数家族と出会い、彼らの支援を始めた。JIM-NETでは、国内避難民に対して、昨年冬には越冬支援として毛布を配布、気温が40度を超えるという5月からは給水支援を行っている。また、長期化するキャンプ生活に少しでも楽しみを見つけてもらおうと、かき氷などを子どもたちに作ってあげたり、冷蔵庫のない避難民たちに氷を配ったりもした。また、ヤジディ教徒の女性たちが少しずつ逃れてきていることを知り、調査活動も始めた。

ヤジディ教徒は同じ信仰を持つ者としか結婚が許されず、ヤジディ教徒の両親から生まれた子どもしか入信することができない。イラクでは非常に小さなコミュニティーだという。

昨年8月には、ヤジディ教徒が多く住んでいたイラク北部のシンジャールをISが襲撃。多くの男性たちがイスラム教に改宗させられ、女性たちは強制結婚をさせられた。「55万人のヤジディ教徒がイラクにいたとされているが、現在は40万人が国内避難民となっているといわれている」と榎本さんは説明する。今年1月には、ISに拘束されたヤジディ教徒のうち200人が解放されたというニュースがあったが、そのほとんどが高齢者や障がい者だった。ISは、彼らが発行する雑誌の中で、兵士がヤジディ教徒の少女を捕らえ、その少女を「戦利品」として兵士に与えることを認めている。

また、具体的な聞き取り調査の結果として、榎本さんはヤジディ教徒の少女3人の例を紹介した。

Dさんは、シンジャールで兄弟3人、両親と共に暮らしていた。昨年8月3日に、シンジャールがISの手に落ちてからも、村の人からは「ここにいて大丈夫。もし捕まっても、イスラム教徒に改宗すればよいだけのことだ」と言われ、村に留まったが、やがてISの兵士に、兄弟たちと共に捕まってしまう。幼い弟たちは、女性たちの群れとは引き離されてしまった。「5歳から15歳の小さな少年は、ISが少年兵にするために、訓練をしているという証言があるということから、恐らく彼らも訓練所のようなところに連れて行かれたのでは」と榎本さんは推察する。

深刻化する「イスラム国」による女性への暴力 イラク現地駐在スタッフが都内で報告
都内で開かれたトークイベントの様子。平日夜の開催にもかかわらず、女性の参加が目立った。

一方、女性たちは、顔などを確認された後、一人、また一人と兵士たちに連れて行かれた。Dさんも一人の兵士に連れて行かれ、改宗させられた後、強制結婚をさせられ、レイプされた。このような結婚をISの兵士8人とさせられた。Dさんは、これをイスラム教の宗教裁判所に訴えた。裁判所も「多くの男性と結婚をするのは良くないことだ」とし、一人の男性と結婚するように勧めた。最後の結婚相手となった男性が、「私はあなたと結婚するつもりはない。あなたを逃がそうと思っている」と話し、避難に協力。後にクルド自治政府に保護された。JIM−NETが検診を支援したところ、幸い、彼女は妊娠もしておらず、性感染もなかった。

15歳のJさんも改宗の末、ISの兵士と強制結婚させられた。相手の男性には妻がいた。結婚した後は、毎日家でコーランを勉強させられ、レイプもされた。この少女は、避難をするに当たってブローカーのような男性に、彼女の家族が日本円にして150万円ほど支払い、解放された。

同じく15歳のKさんは、家族全員がISに捕まった。母親は解放されているが、父親や兄弟は今もなお拘束されており、安否不明のままだ。Kさんは拘束後、35歳のIS兵士に連れて行かれ、結婚を強要された。それを拒むと、棒で殴られ、たばこで腕を焼かれるなどの暴力を受けた。やむなく結婚するが、兵士の母親や弟が彼を説得し、逃げるチャンスを作ってくれて逃れることができた。

榎本さんらは、今までに性的暴力を受けたヤジディ教徒の女性11人から聞き取り調査を行った。「これからも、こうした被害を受けた女性の支援を続けていきたいが、それだけに特化してしまうと、われわれが支援する人は全てそうした被害を受けた女性だと、現地の人々の中で憶測を呼んでしまう。そうすると、こちらが動けば、『あの女性もレイプされたのでは・・・』という周囲の目にさらされ、被害女性をさらに傷つける結果となってしまう。あくまでもJIM-NETは、医療支援、難民支援の中の一つとして性暴力被害者の女性支援というスタンスは変えずに活動したい」と榎本さんは語った。

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