「日米安保条約」ではなく「日米平和条約」を 米国友和会の青年会員が被爆地、沖縄、福島を訪問

2015年8月28日23時45分 記者 : 坂本直子 印刷
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訪日体験を報告した米国友和会(FOR USA)青年会員のトリナ・ジャクソンさん(右)とサマンサ・グプタさん=20日、日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で

国際的な非戦・非暴力平和団体「国際友和会」(International Fellowship of Reconciliation=IFOR)の日本支部、「日本友和会」(JFOR)が主催する「米国友和会(FOR USA)青年会員訪日体験報告会」が20日、日本基督教団信濃町教会(東京都新宿区)で開かれた。南米、中東、米国内外での人種差別や偏見による紛争を解決と和解に導く若き担い手3人が、36人の聴衆を前に、自国での活動を踏まえ、この夏訪問した広島、長崎、沖縄、福島各地で体験し、感じたことをそれぞれが語り、参加者と共にその思いを分かち合った。

昨夏、国際友和会創立100周年記念大会がドイツ南部の都市コンスタンツで開かれ、「日米安保条約」に代わるものとして「日米平和条約」の実現を目指す誓いが、日・米友和会青年らの間で交わされた。その時に、日米安保条約の名の下、沖縄・辺野古に基地建設が強行されつつある実態や、いまだ復興が進まない福島原発事故の現状を見てもらおうという話が出、今回のFOR USA青年会員の訪日が計画された。さらに、今年はちょうど原爆投下70年でもあり、広島、長崎も訪れ、原爆に対する誤った認識を持つ米国市民に、見聞したことを伝えてほしいという願いを込めた企画だった。

この日、報告に登壇したのは、ジョージア州出身で現在はFOR USAアトランタ支部で平和のために働いているトリナ・ジャクソンさん(38)、カリフォルニア州出身でメキシコとの国境地域で移民問題改善に取り組むチャプレン、学者、FOR USA青年会員として活動するサマンサ・グプタさん(28)、南米の紛争地域の和解・調停に2年半携わり、異なる文化間の友好関係構築に情熱を持つバージニア州出身のアイザック・ビーチーさん(30)の3人。そして、アジア学院のスタッフで、バンクーバーおよびトロントの9条の会会員であるデイビット・マッキントッシュさんが、3人の報告を通訳・解説した。

「日米安保条約」ではなく「日米平和条約」を 米国友和会の青年会員が被爆地、沖縄、福島を訪問
訪日体験を報告した米国友和会(FOR USA)青年会員のアイザック・ビーチーさん(右)と、通訳・解説をしたアジア学院スタッフのデイビッド・マッキントッシュさん

まずジャクソンさんは、広島、長崎からはじまり、伊江島、沖縄本島で行動をする人たちを見、福島で津波と原発の事故をたどる旅を通して、核兵器と核産業が日本に深刻な傷を負わせたことを知ったと語った。広島、長崎では、被爆者に話を聞くと、犠牲者でありながら、軍事政権下の日本が他の国々に犯した行為への謝罪の言葉がまず出てくることに心を揺さぶられたと明かした。そして、憲法9条を変えようとする動きに対して、被爆者が非暴力で強く抵抗する姿勢から、9条を守ることがこれからの平和な世界を形作る力になることを学んだと話した。

アトランタでの人種差別の現状も語り、過去を忘れることなく、将来を見つめて正義の国づくりをやっていくことが大切だとジャックソンさん。真実を隠ぺいして耳触りのよい話だけをしていても和解の道にはつながらないと話し、苦しみを共有し、共に支え合う気持ちが和解への大きな力になると語った。そして、暴力を共に乗り越え、戦争に突き進む勢力に勝る力をもって平和に向かって進んでいきましょうと訴えた。

心の傷の癒やしに関わる研究者でもあるグプタさんは、被爆者が復讐ではなく和解の精神に立っていることに強く感動したと話した。グプタさんは、自身が白人の米国人であることで、特権を与えられている立場だと言う。親戚には太平洋戦争で戦地に行った人もおり、戦争に無関係ではない。米国では貧困層から兵士を募集し、応募して戦場へ赴いた彼らは肉体的、精神的に深い傷を負って帰国する。ロサンゼルス市内には、戦争の傷が癒やされないまま社会復帰ができない約6300人の元軍人ホームレスがいるという。グプタさんは、「力ある者、加害者の一人として、どう和解に挑むべきなのか。犠牲者、加害者の両方の立場から自分の悔い改めについて深く考えさせられた」と語った。そして、日本の被爆者は両方の意識を持っていると述べ、日本の伝統と思える「亡くなった人から学ぶという精神」が、米国には必要だと強調した。

「日米安保条約」ではなく「日米平和条約」を 米国友和会の青年会員が被爆地、沖縄、福島を訪問
報告会の後にはディスカッションの時間も持たれ、ここで話し合いきれなかった意見については、翌日の全国大会へと持ち越された。

また、日本政府が憲法9条を変えようとしていることと、沖縄の米軍基地に住む米兵とは切り離せない関係にあると語った。基地反対の旗を掲げ道路に立つ人と、その横を走る米軍トラックを運転する人とは、生活環境における共通点が多いはずで、それは皆同じ人間であるとグプタさんは言う。今回訪日した3人は、バラバラになった社会の断面を寄せ集め、そこから対話を生み出す役割を担っていると語った。

最後に登壇したビーチーさんは、1979年にペンシルベニア州で起きたスリーマイル島原発事故により、祖母が乳がんを発症して数年後に亡くなったことを明かした。米政府は、この事故で被害者はなかったとしているが、ビーチーさんの家族の中では、祖母はスリーマイル島事故の犠牲者だとの認識がある。日本に来て福島の現状を見て、そのことをあらためて確信したという。その上で、今回の訪日で70年前に終わった戦争でいまだに苦しむ人たちに会い、バラク・オバマ大統領や安倍晋三首相が進もうとしている道がいかに危険かをあらためて感じたと述べた。

「日米安保条約」ではなく「日米平和条約」を 米国友和会の青年会員が被爆地、沖縄、福島を訪問
着物生地で作った「9条は世界の宝」の横断幕を持つ日・米友和会の会員たち

ビーチーさんは、今のままでは社会や文化はあまりにも分散していて、安倍・オバマ政権の軍事行動を阻止する大衆運動にはなり得ないと指摘。まずは一人一人が自分たちの心にある弾丸の破片を取り除き、その手から銃を取り去らねばならないと訴えた。戦争を完全にやめさせるためには、自分たちの力を築いていかななければならず、これは長期的な取り組みになるだろうとビーチーさんは言う。戦争を仕掛けようとする流れに対抗していくために、何が最も適切で効果的な手段であるかを考え、日米が互いに支援していくことが大切だと強調した。

最後にJFOR理事長である飯高京子氏の提案で、「勝利を我らに(We shall overcome)」を合唱した。飯高氏は「日本は今大変な危機に見舞われていて、近いうちに戦争をする国にされてしまうかもしれない危機感がありますが、皆で一緒に祈って努力していきましょう」と呼び掛け、「今日が始まりの一歩。この素晴らしい交わりの時を感謝します」と締めくくった。

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